アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 787

【公判調書2446丁〜】 

                   「第四十八回公判調書(供述)」

証人=梅沢  茂

                                            *

宮沢弁護人=「ダレス鞄牛革製と書いてありますね。これはあなたが書かれたんですね」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「これもやはり上司から言われてそのままお書きにになったということですね」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「当時牛革製だということについて何か、この書き方については別に疑いを持っておられたということはないんですか」

証人=「私は上司から言われたまま書いたんで内容については何とも分かりませんです」

宮沢弁護人=「あなたはこの前からいろいろお聞きして来たんですが、そのほかの捜査としてやったことについて記憶ありますか」

証人=「そのほかと申しますと例えば」

宮沢弁護人=「例えば本の中の漢字を拾うというような作業をやったことはありませんか。なかよしというような本の中から漢字を捜し出したようなことは」

証人=「そういうこともあったように思います」

宮沢弁護人=「これはいつ頃のことでしょう」

証人=「さあ、その日にちについては全く記憶ないわけですが」

宮沢弁護人=「そうすると、なかよしという、字を拾ったのはどういう関係で捜査を命ぜられたんでしょうか」

証人=「そのいきさつはよく記憶してないんですが」

宮沢弁護人=「そうすると、どういう関係でこれを調べられたということも記憶ないし、日にちも記憶ないということですか」

証人=「字の関係は何か脅迫文に関連したことで拾ったように思いますが」

宮沢弁護人=「それはあなただけがやられたんですか」

証人=「大勢だったはずです」

宮沢弁護人=「これについては報告書とか何とか書いておりますか」

証人=「その点も今になっては曖昧ですが」

宮沢弁護人=「脅迫文に関係したというんですが、そのどういうことに関係したんでしょうか」

証人=「どういうことでしたかね、その点は思い出せません」

宮沢弁護人=「どういう字を拾ったかも」

証人=「ええ、記憶ありません」

宮沢弁護人=「ちょっとこの前お尋ねしたところに関連しますが、あなたは今言った時計の捜査に従事されたその際この前、いろいろ聞込みされておりますね。時計の捜査について付近の民家にいろいろ聞込みをされたということはなかったでしょうか」

証人=「ええ、あの付近の民家に対してはやったかも知れません。当然やっているはずです」

宮沢弁護人=「そういうご証言でしたが」

証人=「ええ」

宮沢弁護人=「(原審一三二丁昭和三十八年七月二日付小島朝政作成の実況見分調書添付の現場見取図第二図を示す) これは時計発見場所の現場見取図のようですが」

証人=「発見した場所は私は知らないわけです。私が捜索した時は発見出来なかったわけですから」

宮沢弁護人=「あなたはこの前、茶垣の辺りを、茶畑の辺りを捜索されたと。それはここに赤印のあるこの付近ではありませんか」

証人=「その付近ですね」

宮沢弁護人=「そうするとこの赤印、この付近にたくさん民家がございますね、その辺のところはあなたお調べになったんですか」

証人=「やはり三、四人で行った記憶がありますが、大勢で聞きましたんですね」

宮沢弁護人=「そうすると大体この辺は軒並みというくらいに皆さんで聞込みをされているんですね」

証人=「それほど、軒並みというほどじゃないと思います。と言いますのは私は捜しに行ったのは」

宮沢弁護人=「あなたが行ったのと、皆さんが行ったのと二いろあるんですか。あなたとしては軒並みじゃないんですね」

証人=「私は捨てた場所の略図によって捜したんです」

宮沢弁護人=「あなたとしては何軒くらい行かれたんですか、付近の聞込みというのは」

証人=「私は二、三軒だと思います」

宮沢弁護人=「それから他の人たちもやはりやられているわけでしょう」

証人=「聞込みはあまり重点じゃないんです。捜すことが重点だったんです」

宮沢弁護人=「その前にいろいろ聞込みされていたということをあなたは知りませんか。あなたが行ったという日より前にいろいろ聞込みをされていたというのは」

証人=「その記憶は判然としておりません」

宮沢弁護人=「あなた方が捜査されたのは全部報告書とかそういうことに報告されているわけでしょう」

証人=「そのはずです」

宮沢弁護人=「あなたがやられたのも、あなた以外の人がやられたのも」

証人=「しているはずです」

宮沢弁護人=「それを総合すれば時計の現場の捜査ははっきりしてくるわけでしょう」

証人=「そういうことになります」

宮沢弁護人=「そういう風に捜査報告書が何通か出たということはあなたは知っておられるんでしょうか。あなたは庶務の関係もずいぶんやっておられているからちょっと聞くんですけれども」

証人=「庶務の仕事は外へ出る前ですから、私は記憶ありません」

宮沢弁護人=「それでは小川松五郎さんというお宅がその付近にあったことはご記憶ありませんか」

証人=「記憶ありません」

(続く)

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証人=梅沢 茂は時計の捜索に関し、「私は捨てた場所の略図によって」捜したと述べる。

(昭和三十八年六月二十九日付、石川被告供述調書添付図面より) 

梅沢証人は、まさかこの大雑把すぎる図面をもとに捜索したのではないだろうと私は願いたい。が、のちにこの付近に住む老人が散歩中に問題の時計を発見するという展開を見せる。

(腕時計の発見場所を指し示す老人。七十二歳)

狭山事件の捜査過程で発見されてゆく被害者の鞄、腕時計、万年筆は、その発見のされ方に一定のパターンが見られ、それとは警察官らの徹底した捜索後に突如、証拠品が出没するということである。これを一言で言えば「不審」であり、誰もが不思議と思う事象だろう。