アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 931

時計を発見した小川松五郎さん。

【公判調書2936丁〜】

                   「第五十五回公判調書(供述)」

証人=小島朝政(五十六歳・財団法人埼玉県交通安全協会事務局長)

                                            *

石田弁護人=「あなたは小川松五郎さんという方が時計の発見された現場付近に住んでいるということはご存じでしたね」

証人=「はい。それは先ほども申し上げましたように、小川松五郎という人が時計を発見された時に、かつて、手拭いの捜査の時にあった記録か、この部落の名簿ですね、あの辺の一連の名簿を見たときの思い出で、小松松五郎(原文ママ)という者がおったということを覚えておりました」

石田弁護人=「手拭いの捜索の際に、あの付近の住民の名簿をご覧になったということですね」

証人=「そうですね。名簿というと大袈裟になりますが、何か、捜査員のメモか、あそこの町の者の名前が、一連の名簿と言えば名簿でしょうね。それで記憶があるように思いますが」

石田弁護人=「そのいわば名簿というようなものですね、あなたがご覧になったものは図面のようになっていて、その図面にそれぞれの住んでいる人の名前が、いわば、地図のように、そういうような形で作られていたものでしょうか」

証人=「ではないんです。番地と氏名がある程度のものだったと思いますね」

石田弁護人=「それは交番でご覧になったんですか」

証人=「何ですか」

石田弁護人=「火の見櫓のある交番、派出所でご覧になったんですか」

証人=「ではないんです。これは横道に逸れますが、手拭いの捜査の時に五十子米屋の手拭いが頒布されているので、地理的にずっとあの辺、一つの町内の者の住居が書いてありましたですがね、そんなことで覚えているんですがね」

石田弁護人=「それ、ご覧になったのはどこですか、場所は」

証人=「これは捜査本部で、捜査員が手拭いの捜査で、ここで発見されたと、ここではわからないというようなことで書面報告されたもので見たんです」

石田弁護人=「何か、地図のようなものではなかったかと思われるんですが、そういうようなものはご覧になっていないんですか」

証人=「仮にあったとすれば、その場の報告の説明に使用したその程度のものであって、はっきりしたものはないと思いますね」

石田弁護人=「時計が小川松五郎さんという人によって発見されたという連絡を受けて、ああ、これは五十子米屋の手拭い関係を調査したときに名前が載っていた人だなということは分かりましたね」

証人=「発見された時ですね」

石田弁護人=「うん」

証人=「はい」

石田弁護人=「その小川さんが年寄りであるということも分かりましたね」

証人=「いや、年寄りであるということはですね、私が現場へ行ったときはもう、そこへ来ておったのです。それで、ずいぶん年寄りの方が見つけたんだなということで、その小川老人をそのとき初めて見たんですがね」

石田弁護人=「小川老人によって時計が発見される以前に近所の聞込みを石原安儀さん以下、いわば、あなたの部下にあたる人達が聞込みに従事しましたね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その聞込みに従事した中に、小川松五郎さん宅も含まれていましたね」

証人=「さあ、それはちょっと記憶がないんですがね。繰り返しになりますが、捜査員がですね、当時の一回目の自供で、道の真ん中に時計が捨ててあるかという、今ごろ捜索に行ったって、無いに決まっているじゃないかという常識的な判断で、捜査員が見つけなかった。したがって捜査員もその付近を簡単に見て、そのほかに、その後、付近の聞込み捜査をやったにしても、当時、一回目と思うんですが、初めて私に入った石川被告の自供ですから、何、今まであれだけ嘘を言った被告が今もって何で、このような自供をして、で、そんな道の真ん中に捨てたというのは、これは嘘だということは私自身ですね、今、本当にこう考えてみてですね、道の真ん中に捨てたなんて言うの、今、捜索したって、すでにもう事件後数ヶ月経っており、ありっこないということは私自身そう思ったです。仮に聞込みをしても、その辺に、仮に時計を拾った人があったとしても、これは私が拾いましたと言って、今名乗り出る人はないだろうと私は考えてみました。これは考えですが、今も当時と同じく、そう思っております」

石田弁護人=「そういうことを聞いているんではなくてね、私の聞いているのは、あなたの部下の警察官が捜したんだけれども、見つからなかったので、近所の聞込みをしたと言われましたね」

証人=「ええ」

石田弁護人=「その近所の聞込みをした中に小川松五郎さんのお宅も入っていたんでしょうと聞いているんです」

証人=「これは確認はしておりませんが、付近を聞込みしたけれども、ないということだけで、小川方を聞込みしたかどうかということは私は分かりませんです」

石田弁護人=「その部下の聞込みの報告は書類でなされたんですか、口頭でなされたんですか、あなたに対して」

証人=「これはですね、口頭で、私達はこの辺を捜索しました、私達はこの辺を聞込みしましたということを口頭で報告を受けて、そしてその報告を受けた後で報告書がなされたと思います。もちろんその日ですがね」

石田弁護人=「聞込みをした家は特定されて報告されたわけでしょう」

証人=「いや」

石田弁護人=「ここの家とここの家とここの家は聞込みしたと」

証人=「いや、ないんです」

石田弁護人=「そういう報告をされなかったんですか」

証人=「はい。私自身ですね、繰り返し申し上げますが、当時はあそこに時計はもうないものだという風に考えておったですからね、まあ、今考えてみれば杜撰な捜査かも知れませんけれども、どこの家、何某方を誰に会って、誰々に会ってというようなことで聞いたけれども見つからなかったという、そういう細かい報告を聞いておらないように今、思いますが」

石田弁護人=「まあ、細かさがどこまで細かいかは別として、警察の捜査としてはね、どこで聞いたかも分からないようなことを聞込まれたんではね、あなたとしては困るんじゃないですか。こういう家の、たとえば、おばあさんから聞いたとか、お嫁さんから聞いたとか、おじいさんから聞いたとかね、それくらいのあれは当然報告を受けるんじゃないですか」

証人=「もちろん大雑把には当時聞いたと思いますが、私自身ですね、もう、あんなところに時計はないんだと、これはもちろん上司にも言えないし、他にも、部下にも口には言わなかったけれども、道の真ん中に捨てた時計はないんだという先入観があったために私は捜査が杜撰だったということを今、思ってます。したがって、何某方の誰々妻女に聞いたけれども、見たことも聞いたこともないというような、そういう報告は今、ちょっと記憶に残っておりませんですが」

(続く)