アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 800

時計発見現場等位置図(第七回検証調書より)

【公判調書2475丁〜】

                     「第四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                            *

石田弁護人=「まあ道に沿って順々に聞込みをやられると。これはよく分かるんですがね、小川松五郎さんが住んでいたという所はご存じでしょう、あなた」

証人=「いや、記憶がないですよ、もう。この間も川越の捜査本部の事件がありまして、川越の捜査本部へ行きまして入間川へ行ったんですよ。それであそこを通ってみたんですけれども全然これはもう当時と今はすっかり変わっちゃって分からなかったですよ」

石田弁護人=「それは通路が変わっておったんですか」

証人=「いや、家の関係やら、いろんなのが変わってはてなと言って首をかしげたくらいですから、とてもじゃないけど記憶ないですね」

石田弁護人=「ところが小川松五郎さんの家というのはあなた方が捜索に従事されたそのいわば最も近い一軒のうちなんですけどね、それ行ってないんですかね」

証人=「行かなかったですね。私はどうもそんな様な記憶があります。どうもはっきりしません」

石田弁護人=「何か聞込みに行かないでもいいような理由があったんですか」

証人=「そんな馬鹿なことあるはずないです。聞込みというのは、そこの家はよせ、ここの家はどうだというそんな馬鹿げた指示はありません。そんな馬鹿げたことはないです」 

石田弁護人=「あなた方が鍬など農家から借りて捜されたというわけですが、その捜し方はもちろん熱心に捜したわけでしょうね」

証人=「もちろんそれはそうです」

石田弁護人=「もう脱漏がないというように努力したわけでしょう」

証人=「そうです。だから私はT字路のすぐ脇だというようなことがまあ実際これが失敗したんじゃないかと思っているんですがね」

石田弁護人=「失敗かどうかは別として、あなた方が捜された範囲内から時計が発見されたということになったわけでしょう。そういうことを知ったわけないでしょう」

証人=「ええ、後ではね、そうです」

石田弁護人=「自分達一生懸命捜したのにおかしいなとは思われたわけですね」

証人=「いやいや、そんなこと思わないですよ。これはやはり捜索してもその時は分からなくて、二回三回やって発見される場合がありますから、これはだけども自分としてはまあ私の記憶ですからはっきりしないんですが、恐らく飯能の殺人から帰って来てから時計伝々ということを聞いたような気がするんだけど、あの頃は私はもう身のひけるような思いだったですよ、実際問題として」

石田弁護人=「あの頃というのは」

証人=「その当時ですね、自分が捜索を下命されて行って見つからないでこれは本当に参ったなと、自分では思いましたね。それはそうですよ、刑事という名がついて、そんなミスのことをやったんじゃ申し訳ありませんからという、これは今でも思っております」

石田弁護人=「その発見されたという時計がビニールの袋みたいなものと一緒に発見されたというようなこともご存じですね」

証人=「いや、私は全然その時計は見ておりませんし、状況を立ち会っておりませんから時計については全然分かりません」

石田弁護人=「時計については全然分からんというわけなんですけどね、いろんな捜索に従事されたりして苦労はあるわけだね、発見された時点では知らないけれどもね、直接あなたはね」

証人=「はい」

石田弁護人=「小川松五郎さんという人がその付近に住んでおるということは知っていたんですか、全然知らなかったんですか」

証人=「全然知らないです」

石田弁護人=「そうすると小川松五郎さんはそのすぐ近くに住んでいて、それで大家さんというのが小さい道を隔てた反対側にいるんですがね、その大家さんにも聞込みに行かなかったのかな」

証人=「記憶ないですね」

石田弁護人=「その付近の人達の中で茶畑の所有者があったでしょう」

証人=「もちろん所有者があるわけですから」

石田弁護人=「茶畑の所有者から新茶の茶摘みの作業との関係などでいろいろ話を聞いたり、あるいは供述調書を取ったりしたことはないんですか」

証人=「記憶にありませんね」

石田弁護人=「あなたとしてはやってないですか」

証人=「ええ、だから記憶にありません、その点は」

石田弁護人=「全然記憶がない」

証人=「ええ」

石田弁護人=「熱心な聞込みをやっても」

証人=「ありませんね、それは」

石田弁護人=「全然記憶がないですか、本当に」

証人=「本当ですよ、それはだけども何たって八年経ってるでしょう、ちょうど今頃です、八年前の」

石田弁護人=「八年経っておってもあなたの記憶は他の面ではいろいろと正確なようだものですからね、非常に記憶力がいいようですから」

証人=「いや、記憶力は良くないんですよ。良ければ今頃署長なんですがね、良くないんですけれども長いこと捜査に携わっていますから、だから例えば三十年にはどういう強殺事件があったといってもやっぱりそういうでっかい事件は何年何月にどこで発生してどうなったというのは、これだけは馬鹿の一つ覚えなんですよ、頭に入っておりますから」

石田弁護人=「じゃこう聞きましょう、なるべく記憶を思い出して貰いたいんだけれども、鍬などを借りた農家というのは三叉路を中心にして言いますとどちら側の農家になりますでしょうか」

証人=「・・・・・・忘れましたですね」

石田弁護人=「考えて思い出せたら思い出して貰いたいんですがね」

証人=「記憶にありません」

(続く)