アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 801

【公判調書2477丁〜】

                    「第四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                           *

宇津弁護人=「先ほどの証言では時計の捜索、聞込みを含めて六月末頃二日間あるいは三日間かも知れないが、従事したということですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そのT字路付近で時計をいわゆる捜したという作業はやはり二日ないし三日にわたって行なったんですか」

証人=「捜したというのはですね、私の記憶ですがその日だけで、私がどうも本当に申し訳なかったというのは私は拾われたという見方を余計あの時にどういうんだか思っちゃったんですね」

宇津弁護人=「そうすると初日だけであるという記憶ですね、時計を捜したというのは」

証人=「はい、そうです。そういう記憶です」

宇津弁護人=「時計の捜索に従事した別の証人などは聞込みは重点的でなかったという証言もあるんですが、その点はどうなんでしょう」

証人=「私は拾われたということをどうもあの時にもったんで、あの近くで誰か拾って持ってるんじゃないかというようなことで聞込みを」

宇津弁護人=「それは捜された末、そのように考えたということですか」

証人=「そういうことです」

宇津弁護人=「捜す作業はどれくらいの時間をかけてやりましたか」

証人=「忘れました」

宇津弁護人=「およそどのくらいですか」

証人=「記憶ないです。およそと言ってもどうもその点ははっきりしません」

宇津弁護人=「あそこの地形としてはあの茶畑に向かいまして少し低く下がって行くわけですね」

証人=「そうですね」

宇津弁護人=「したがってT字路というのは細い道を出て来て茶畑に向かって左右になるわけですね」

証人=「そういうことです」

宇津弁護人=「茶畑に向かってT字路を出て来て左も右の方も捜されたわけですね」

証人=「私、どっちやったかということは記憶ないんですけどね、とにかく三組で切ってあの時捜したわけです」

宇津弁護人=「まず一つ一つ聞いていきましょう。いわゆるT字路から茶畑の方へ出て来まして、出て来た所から左にも右にもわたって捜したかどうかです」

証人=「その点はっきりしません。記憶ないです」

宇津弁護人=「それではあなたが切って捜したというその状況をもう少し具体的に説明して欲しいんですがね」

証人=「これはあそこに捨てられたんじゃないかというので、これはどうしても見つけなくちゃしょうがないというようなことでやって見つからなかったんで、これはもうその時に誰がどっちの方、誰がどっちの方どの程度何時間かかって捜したんだというような」

宇津弁護人=「そういうことを今聞いてるんじゃなくて、あなたが右左前と先ほど言いましたけれども、三つだかに切ったとね。どのように区分して捜したのか、それだけを聞いてる」

証人=「記憶がありません」

宇津弁護人=「(原審一三三一丁の現場見取図第二図を示す)この図面をご覧になっていわゆるT字路というのはどこを指すか、分かりますか」

証人=「これです」

宇津弁護人=「入間川五六七粕谷光平という表示のある先のT字路ですね」

証人=「そうです」

宇津弁護人=「そこでね、あなたが三つに切って捜したというのはどのような区分けをして捜したことを示すのですか」

証人=「だから三つに切ったというのはT字路を基準としてそれで左と右と前側ですね」

宇津弁護人=「そうすると茶畑に沿った、つまり東西に走る道路の左右とそれから茶畑の中の方になりますか」

証人=「ええ、ええ、こっちと」

宇津弁護人=「そういう風に分けたと」

証人=「ええ、そう記憶しています」

宇津弁護人=「それでは東西に走っている道路の右左どれくらいの範囲を調べたんですか」

証人=「私はこっち側をやったような気がするんですがね」

宇津弁護人=「あなたは東西に走る道路の西側の部分を捜したように思う」

証人=「ええ、そんなように記憶していますが」

宇津弁護人=「そしてTの交わる交わり点から西側の方をあなたはどの辺まで捜されたんですか。大体の目測で」

証人=「記憶ないけどそんなに五十メートルも百メートル先も捜さないです」

宇津弁護人=「およそ何メートルくらい」

証人=「せいぜい私は十メーターか二十メーターくらいじゃないかと思います。大体捨てた場所というのがこの辺だというようなことを指示されていましたからT字路の交わり点辺りにはですね、そんなようなあれだったから」

宇津弁護人=「交わり点から十メーター二十メーター西茶畑に向かって左の方に行った範囲内を捜したと、一応そうなりますね」

証人=「ええ、そうです、こっち側をね」

宇津弁護人=「あなたは十メーターないし二十メーターの範囲内で道路のどういう状態、あるいは道路の」

証人=「要するに草をかき分けたり日が経っているからというので埋まっちゃいないかという点も考慮したわけです」

宇津弁護人=「茶畑ですから茶株の方も捜されたわけですか」

証人=「私は茶株の方はやらなかったような気がするんですけど」

宇津弁護人=「茶畑の中には入らなかったんですか」

証人=「私は入らないような気がするんですけど」

宇津弁護人=「あなたと同じ組の同僚の人は捜したんですか」

証人=「記憶しません」

宇津弁護人=「見れば分かるんだから、道路だったら見れば分かるんだね、無いと、だから多少道路脇も捜すわけでしょう」

証人=「だから私はもうあそこへ行って見て失敗したんですよ、まあ拾われたんじゃないかというような気持ちを持ったんですよ」

宇津弁護人=「まず道路の面の捜査は見ればいいでしょう」

証人=「ええ」

宇津弁護人=「埋まってないかと道路面をほじくることもあるでしょうが、それはやらなかったんですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それから」

証人=「道路の脇ですね」

宇津弁護人=「脇もやったね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「道路脇というのは道路に沿った茶株の所も含むわけだ」

証人=「だから私は茶株の方はやらないんです。私はこっちですから」

宇津弁護人=「まあT字路の交差する点から十メートル二十メートルの範囲はこの図面でも明らかだが北側はずっと茶畑なんだから道路の南端も見たんでしょうけれども北側も見たでしょうと」

証人=「いや、私は見ないです。これがこう分けたから、一、二、三と、こう分けたから」

宇津弁護人=「そうすると、あなた道路の南端は見たが、北端の方は見ないということになるの」

証人=「ですから三組でやったから、これが一に仮定してこれが一、これが二、これを三と仮定するから」

宇津弁護人=「図面で書くとそうなるかも知れないけれども、あなたの体は道路の上でいろいろ捜したわけですか」

証人=「だからこの脇の所を見たわけです。こっちはだからこれを私は見たんです、鍬借りて来て、それでがりがりやったんです」

宇津弁護人=「そうするとあなたは東西に走る道路のT字路の交差点から西側に向けて十メートルもしくは二十メートル捜したんだと、で、今あなたが仰るのは道路の南側のことを仰っているわけですね」

証人=「そういうことです」

宇津弁護人=「道路の北側に沿った面もやったんじゃないかと聞いてるだ(原文ママ)、今」

証人=「私はやりません」

宇津弁護人=「別の人がやったんだね」

証人=「別の人がやったんだろうと思います」

宇津弁護人=「そこだけ特にやらなかったというようなことはないね」

証人=「そうですね」

宇津弁護人=「あなたはやらなくても同僚の誰かがつまり茶畑の方もやったと思われますね」

証人=「まあ、とにかくこれははっきりしませんがね」

宇津弁護人=「そう理解するのが自然ですね」

証人=「はい、はっきりしません」

(続く)

                                             *

○東西に走る道路の南側と北側。証人はその南側のみを捜索したと述べる。やや睡魔に襲われるこの尋問は次回へと続き、そこでこの問いの趣旨が一部明確になる。

問題のT字路の位置関係を把握すべく、手持ちの資料を漁るが、見つかったのはこの一枚だけである。

昭和四十五年五月八、九日付第七回検証調書添付図面

図面を拡大し凝視するが、全く位置関係は掴めない。