アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 802

【公判調書2481丁〜】

                       「第四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                           *

宇津弁護人=「しかしあなたは東西に走る道路の南側だけを道路をほじってやったけれども、北側、すなわち茶畑に沿った側はやらなかったというのはちょっと理解し難いんだけれども」

証人=「私共のあれは道路を基準としてやりますからいいんです。これが一にしてこれを二にしてこれを三にするから(注:1)」

宇津弁護人=「道路のどこを切るんですか、真ん中ですか」

証人=「もちろんこれは真ん中です。だからちっとも不思議はないんです。だからこれが要するに二組なら道路のこっち側と向こう側ということになる」

宇津弁護人=「東西に走る道路の中心線で分けたからあなたの受け持ちはT字の交差点から西側の方向ね、十メートルないし二十メートルの、いわば道路の南側に限られちゃうと」

証人=「ええ、そういうことです」

宇津弁護人=「同僚の他の人がいわゆる道路の北側ですか、茶畑に沿った方を」

証人=「誰かやった人がいるわけです。どの辺までやったかというのは分かりませんが、誰かとにかく一応やったと思います」

宇津弁護人=「先ほど、当日六人の中であなたが親方のように考えているとちょっと言われましたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「六人の中ではあなたが一番上席だったわけですか」

証人=「そうですね」

宇津弁護人=「そうすると、この三つに分けてやろうじゃないかというのは現場に行ってあなたが考え出し、指示したやり方なんですか」

証人=「そうです」

宇津弁護人=「で、あなたが分担した区域はやはりあなたともう一人の、二人でおやりになったわけですか」

証人=「ええ。もちろん二人です」

宇津弁護人=「そうすると先ほど来から聞いてるのはこのT字の交差点から西の方のことを今盛んに聞いたわけですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「今度はT字の交差点から東の方に向けても大体十メートルとか二十メートルとかいうことで捜してやったわけですか」

証人=「聞いてませんね、それは」

宇津弁護人=「それではそういう現場で指示をした場所ね、どういう所で皆さんにこういう風にやろうじゃないかという指示をしたんですか」

証人=「ここへ行きまして」

宇津弁護人=「現場に行って具体的にどこで皆さんに指示をされた」

証人=「だからここへ行きまして、現場へ行って見なければわかりませんから、現場へ行って六人だからどうだ、三組に分かれると、お前どっちに行く、誰どっち、誰がどっちと言うんじゃなしに、三つに分けるから、じゃ俺の方がこっちをやる、俺の方はこっちをやると言ったんで、残ったのを私がやったんで」

宇津弁護人=「それでその時あなたが私は西側のこの交差点からその辺までやると、お宅の方は左右に走る道路の東側をその辺までやろうというような話合いもなしにやったわけですか」

証人=「やらないです」

宇津弁護人=「このT字路の交差点から東西だいたい同じような範囲内をやっておったようですか」

証人=「忘れましたね」

宇津弁護人=「それからこの茶畑の中を捜した人もいたわけですね」

証人=「いたはずです」

宇津弁護人=「茶畑の中も農具を使って引っ掻いて見たんですか」

証人=「これは使わないような状態だったね」

宇津弁護人=「農具を使ったのはあなただけですか」

証人=「さあ、忘れましたね、記憶ないです」

宇津弁護人=「農具は、茶畑に向かって低くなっている先に一番近い所に農家ではあるけれども、機織りをしている家があったんじゃないですか」

証人=「私はこっちの家から借りたような気がします」

宇津弁護人=「農具は内田春夫方から借りたと思う」

証人=「ええ、こっちから行ったんだから農具を借りたのはこっちの家から借りたような気がしますね。いずれにしても道路の手前の家から借りたような気がしますね、向こうへは行っておりません」

宇津弁護人=「何丁借りたか覚えてないですか」

証人=「忘れました」

宇津弁護人=「あなたは自分の手でやった記憶がするわけですね、農具を使った記憶は先ほどのご証言だと」

証人=「ありますね」

宇津弁護人=「一丁だけだったともちょっとね」

証人=「どこの家から何丁借りたということは記憶にありませんね」

宇津弁護人=「ところで先ほどの区分をして捜した時のあなたと一緒にやった方のお名前は何というんですか」

証人=「・・・・・・・・・忘れました」

                                            *

裁判長=「さっきあなたは自分以外の人の名前全部言ったんだから、梅沢、鈴木、飯野、鹿野」

証人=「これが二日三日にまたがってやって」

裁判長=「だから最初の実際に現地を捜した時のことで、その時誰と組んでやったのかという問だと思うんだが」

                                            * 

宇津弁護人=「あなたは初日に捜したと言うが、その初日にあなたが区間を区切ってやったというあなたのパートナーというか同僚はどなたかと」

証人=「鹿野君じゃなかったかと思うんですね」

宇津弁護人=「大体この時計の実際に捜す作業は申し合わして一斉に始まったわけですね」

証人=「そうです」

宇津弁護人=「終わる時はどうなんですか、やはり一斉に終わったわけですか」

証人=「そうですね」

宇津弁護人=「その間大体どのくらいの時間を費やしたか記憶思い出して下さい」

証人=「・・・・・・十分か二十分じゃなかったかと思います」

宇津弁護人=「あなた方は本当に二日目あるいは三日目に入った時にはもう現場の時計捜しはやっていないんですか。もう一度念入りにやるということはしなかったんですか」

証人=「やりませんでした」

(続く)

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○裁判長による補足的な尋問がなければ、証人は一緒に組んだ警察官の名前が鹿野だったと証言することはたとえ分かっていても控えたと思われる。「忘れました」との証言後、間をおかず「鹿野」だと証言するところなど見ると、まさか弁護側の腹を探りながらの答弁ではあるまいなと勘ぐってしまうのである。

(注:1、三組に分かれ捜索した状況を、原審1331丁現場見取図第二図を指しながら証言していると思われる=筆者)