アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 796

(写真は事件当時の佐野屋)

【公判調書2466丁〜】

                「第四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                           *

石田弁護人=「あなたとしてはどんな捜索に従事されたでしょうか」

証人=「これはですね、最初まあ"オーイ、オーイ"とか"警察に話したんべ""警察が後ろにいる、おれは帰る"それと被害者善枝さんのねえさんが"男ならいらっしゃいよ"と何回か繰り返したような記憶があります。それでやや少し経ってから佐野屋に張込んでいた方が飛び出たのでこれは私も当然追跡しなくちゃなりませんからすぐ行動を起こしまして、最初まあその声を聞いたというのは佐野屋の東の方です。場所は分かりませんが、それでその反対の北側の茶畑から更に今度は南側、佐野屋の要するに東側の茶畑からあの辺をずっとくまなく捜索はやったわけです」

石田弁護人=「誰かが飛び出したので、あなたも飛び出したと、こういうことですね」

証人=「そういうことです」

石田弁護人=「その飛び出した警察官は何という警察官でしょうか」

証人=「多分当時の山下警部さんだと思います」

石田弁護人=「その山下警部さんというのは山下了一さんですか」

証人=「そうです。これは断定というわけにはいきませんが記憶ですから、私も長いこといまして捜査本部の事件をやってますからそんなにぴたりというわけにはいきませんが」

石田弁護人=「笛か何か鳴らなかったんですか」

証人=「さて、その点は忘れました」

石田弁護人=「それであなたとしては、くまなく捜したということなんですが、どういう場所をどんな風に」

証人=「いや、これはですね、私としてはいずれにしてもあそこの所は茶畑が多いんで、まあ茶畑、それからその辺の空き家だとか何か捜して今度は道路の南側へ移りまして、ずっと先の方へ堀がある、その方まで行ったわけですがね、ずっと先の南側の方に堀があったと思います」

石田弁護人=「その堀というのは不老川とは違うわけですね」

証人=「さて、何というのか」

石田弁護人=「川ではないんですね、堀ですね」

証人=「ええ、堀です。勤務したことがないのであまり詳しいことは分かりません」

石田弁護人=「翌朝までということですから、かなりの長時間ということでそれ以外にもどこか移動されて捜されたりしたのは」

証人=「この晩は移動していません。あの周辺です」

石田弁護人=「そのあなたの場合、直接あなた方の行動をその五月二日から三日にかけての夜、指揮した上司は誰でしょうか」

証人=「これはとにかく山下さんか大谷木だと思います。その時、指揮も何もないんです。その時はすでに取り逃がしていますから指揮も何もないですから」

石田弁護人=「そうすると各捜査員が自分の判断に従ってそれぞれ行動したということですか」

証人=「そうです。夜中のことだし、追跡捜査になりますからそれはいちいち指揮を仰ぐ必要はありませんから」

石田弁護人=「それで警察官は大勢いたようなんですけれども、いろんな方面に動かれたわけですね、追跡のため」

証人=「さて、その点は私個人のことは記憶にありますが、誰がどういう風な方を追跡捜査したかということは分かりません、自分のとった行動は分かりますが」

石田弁護人=「あなた方がそういう捜査をされている五月二日から三日にかけて深夜ですね、通行人などはなかったですか」

証人=「張込みしている時に何か四つ車か何か一台通ったような気がしました」

石田弁護人=「それは佐野屋を中心にして説明するとどっちからどっちへ動いて行ったんでしょうか」

証人=「多分これは記憶ですよ、西から東に来たんじゃないかと思ったんですが、ことによると逆かも知れませんが、いずれにしても記憶ですから」

石田弁護人=「西から東ということだとしますと狭山精密ですか」

証人=「いえ、入曾の方ですね」

石田弁護人=「入曾の方から川越の方へ」

証人=「ええ、そうです」

石田弁護人=「その翌日からはどんな捜査に従事されたでしょうか、あなたは三日あたりから」

証人=「三日あたりから、これは私の記憶ですが三日間くらいは地元の、要するに容疑者の洗い出しというのをやったような記憶があります」

石田弁護人=「その地元の容疑者という」

証人=「いや、その現場周辺ですね、の、容疑者の洗い出しというのを多分二、三日やったような記憶があります」

石田弁護人=「その洗い出しというのはどんな方法でやられたんでしょうか」

証人=「というのはまあ各戸別に隣の家にはどういう人がいるとか、どこへ勤めたかどうかというような点で、まあ探りを入れたわけですがね。多分二、三日やりました」

石田弁護人=「それは堀兼という風に」

証人=「大体あの頃は堀兼から入間川にかけてやりましたね」

石田弁護人=「入間川と言いますと、入間川の駅の方までですか」

証人=「そういうことです」 

石田弁護人=「あなたは、そのあなたが直接堀兼から入間川辺りにかけて三日間あたられたという風に聞いておりますが」

証人=「三日間、ことによると二日かも知れません。いずれにしてもそんな様な仕事が、私の記憶ですが三日間くらいやりまして、その翌日の六日頃から私は例の犯行に使われたタオルの捜査を、これをおそらく六日頃から長いことかけてやったように記憶しています」

石田弁護人=「タオルの捜査の時期は六日頃から長いことと言われますと、いつくらいまでの間でしょうか」

証人=「そうですねぇ、おそらくその月の二十二、三日頃までやったんじゃないかと思います」

石田弁護人=「そうするとまあ石川一雄君を最初に別件逮捕したその頃までずっとタオル関係をあなたは捜査されておったと、こういうことですか」

証人=「やりました」

(続く)

(写真は佐野屋近くの身代金受渡し現場)