アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 795

【公判調書2463丁〜】

                    「第四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                           *

裁判長=「現在警部補だと言いましたが、現在はどこの警部補ですか」

証人=「埼玉県警本部捜査第一課です」

裁判長=「それではあなたの警察官になった時からの今日までの経歴を聞きますから初めから順を追って言って下さい」

証人=「昭和十三年七月十一日、埼玉県巡査拝命、同年の十月三十日に大宮警察署、その後十六年の八月、召集で三(ヶ)月ばかり行きました。更に十九年の八月にやはり召集で行きまして、で、二十年の九月二日に復員しました」

裁判長=「どこへ」

証人=「大宮署です」

裁判長=「大宮署ではどういうことをやっていたんですか」

証人=「大宮署では外勤です。それから更にその年の十二月から捜査になりまして二十二年の十一月十七日松山警察署勤務を命ぜられました」

裁判長=「それはどういう」

証人=「松山では外勤です。従ってその翌年の二十三年の二月五日浦和地区警察署刑事係です」

裁判長=「身分は変わりましたか」

証人=「いいえ、変わらないです。それで二十四年二月二十三日巡査部長です。それで二十六年三月三十一日に県警本部の当時の捜査課勤務を命ぜられまして、それで三十八年八月十七日、警部補に昇任しまして熊谷警察署勤務を命ぜられました。翌三十九年三月二十五日付をもって浦和警察署勤務を命ぜられました。四十年の三月、やはり二十五、六日だったと思いますけれども、捜査第一課勤務を命ぜられまして」

裁判長=「また県警本部へ」

証人=「そうです。それで引き続き現在に至っております」

裁判長=「で、警部補になったのは三十八年」

証人=「八月十七日です」

裁判長=「本件はさっきも言った通り三十八年五月一日に起こった事件とされているんですけれども、その頃は県警本部の捜査一課ですか」

証人=「捜査一課です」

裁判長=「に、巡査部長としていたわけですね」

証人=「はい、そうです」

裁判長=「で、その身分において本件の捜査に携わったということになりますね」

証人=「そうです」

裁判長=「で、現在は県警本部に戻って警部補として捜査一課にやはりついておる」

証人=「そうです」

裁判長=「大体捜査関係が多いようですね」

証人=「はい」

裁判長=「二十六年三月以降は、熊谷へ行った時も浦和へ行った時もみんな捜査関係ですか」

証人=「そうです」

                                             *

石田弁護人=「狭山事件の捜査は初めから関与されたようですが、五月何日から関与されておるんでしょうか」

証人=「これは五月の二日です」

石田弁護人=「五月二日どういう機会に関与するようになったんでしょうか」

証人=「当時、浦和警察署のシート包みの捜査本部の捜査中でありまして、それで浦和で調べていた夜暗くなって時間の点ははっきりしませんが、まあ七時前後じゃないかと思います。すぐ本部に戻れということで戻りまして、飯を食って、で、まあ車でだいたい夜の九時過ぎだと思いますけれども、狭山警察署に行きました。それから七月三日まで狭山事件に携わりました」

石田弁護人=「そうしますと五月二日から三日にかけての真夜中ですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「脅迫状の指定場所である佐野屋の脇という所あたりのその付近の張込みには参加されたわけですか」

証人=「ええ、参加しました」

石田弁護人=「それでその張込みには総勢何名くらいの本部からの警察官が参加しているんでしょうか」

証人=「よくその人員は私記憶がないんですけれども、七、八名は行ったんじゃないかと思います」

石田弁護人=「まあその晩の張込みは結局失敗したようですが、あなたはどの付近にいて見張りを進めていたわけですか」

証人=「私は佐野屋の二十メートルくらい西になりますか、あそこに地蔵様か何かあります。北側にですね。山の方へ入って行く道の脇にですね。その角に家がありまして、その家の脇が物置になっていまして、そこで当時狭山警察署の関口部長と二人で張込みしていました」

石田弁護人=「当夜の張込みが終わって引き揚げたというのは、まあ三日の何時頃になるんでしょうか」

証人=「引き揚げたというのは狭山は私の記憶ではずっと夜、夜中あっちこっち検索をしまして一応終わったのが朝の八時頃じゃないかと思います」

石田弁護人=「そうしますと、犯人を取り逃がしたということは何時頃知ったんですか」

証人=「私の記憶ではやはり指定時間の夜中の十二時頃だったと思います。というのはあの日は雨が降りまして、その後天気になって私の記憶ですが月が出ていたのを見まして、それで寒い晩であってその時に来た犯人の声を私聞いてます」

石田弁護人=「そうするとそのお地蔵様の付近で声を聞いたということですか」

証人=「そういうことです」

石田弁護人=「十二時頃に犯人が逃げたということを知ったわけですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「それであとの捜索に移るわけでしょう」

証人=「はい、そうです」

(続く)

○印=佐野屋。

X印=犯人が現れた地点。

「写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用」