(特別重要品触。これは腕時計のみの品触)
【公判調書2461丁〜】
「第四十八回公判調書(供述)」
証人=梅沢 茂
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山梨検事=「あなたは重要品触の原稿を書かれた時に、同一品という風に写真に出ているこれらの品物、これはあなたの手元にあったんですか」
証人=「次席などが持ち歩いているのは見たことありますが、自分が手に持ったことはなかったと思います」
山梨検事=「その時計の番号を自分で確かめたということもなかった」
証人=「記憶にありません」
山梨検事=「この写真を見ますと三つ写ってるんですよね」
証人=「はい」
山梨検事=「真ん中のは時計は無いんでバンドだけが写ってるんですが、これはどうなんでしょう。今までのあなたの経験からでも話してもらいたいんだが、一番上と一番下が、表裏と書いてあるね」
証人=「はあ。写真を撮影した人はまた違う人ですから」
山梨検事=「一番上と一番下が表と裏で、別に皮バンドだけもう一つどこかから持って来てあったのか、皮バンドの先を見ると片方は丸くて片方は四角くて違うようですが」
証人=「写真は先に出来ておりまして、この写真をこういう風に入れて作れという風に私は言われて作ったので・・・・・・」
山梨検事=「物(ぶつ)の方はどうですか」
証人=「はっきりしません」
山梨検事=「カバンはどうですか。カバンもあなた手に取って見ることはなかったのか、この写真に出ているカバン」
証人=「手に取って見た記憶はありません」
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裁判長=「さっき時計の側番号というのは必ずしも同じ番号はないわけではないという証言をしましたね、捜査上の、経験上から」
証人=「これは、はい」
裁判長=「例えばシチズンということでさっきは質問がなされたんですが、シチズンがそうだという意味ではないんですか。シチズンもそうである可能性はあるんですか」
証人=「シチズンでもセイコーでも安い時計は同じ番号があるんだという風に聞いております」
裁判長=「外国のはそういうことはない、外国のでも安いのはそういうことがあるんですか」
証人=「外国のはないそうです」
裁判長=「同じ型の同じ値段の同一品種の物についてあり得るということなのか、型が多少違う場合はあっても間違わないと思うが、あるいは同じ型の同じ値段で売り出されているような規格品でも同じ番号はあり得るんですか」
証人=「いや型が違うと同じ番号というのはないです」
裁判長=「同じ型だと・・・・・・」
証人=「会社によりますと、最初が六〇なら六〇年の製品という意味で、その次が会社によっては違っていますけれども、月が入っているのもございます。その次が一連番号という風に、普通はそうですが、会社によってもいろいろ違うらしいんです。安物の時計には同じ番号があるんだということを言ってます」
裁判長=「同じ型でも」
証人=「はい。しかしそう沢山あるものじゃないんだと、五個や六個は同じ物があるかも知れないと」
裁判長=「それは本当はそんなことあるはずないんだが会社で何かごまかすつもりか何かで、そういうことをやる、そういう何個か作る、という意味でしょうか」
証人=「それは会社に聞かないと分かりませんですが、おそらくまあ、刻印を全然別個に作るよりも、同じ物を二個、三個作った方が製造能率が上がるんじゃないかと思いますが」
裁判長=「例えば同じ番号は一つしかないんだということを決めておいたら税金などごまかせますね」
証人=「そういうことは会社に聞かないと分からないんですがね、ただ、時計は機械番号というのがございますから、機械と側番号が合えばこれは特定出来るわけですね、それは一つしかないと」
裁判長=「本件の場合は開けて見たわけじゃないから、そこまでは分からない」
証人=「はい」
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裁判所速記官 沢田怜子
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○茶畑から発見された腕時計であるが、証人=梅沢 茂の言う、時計の機械番号と側番号の照合が可能であれば、この発見された時計が被害者着用のものであったかどうかという点に迫ることができるのではなかろうか。これには検察庁保管の腕時計、その保証書及び時計メーカー"シチズン"の全面的協力が必要であるが。