アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 700

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2203丁〜】

                「第四十四回公判調書(供述)」⑦

証人=清水利一(五十六歳・会社員)

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石田弁護人=「ところで狭山警察署で、河本検察官と一緒に取調べをしたことはありませんか」

証人=「河本さんというのは若い検事さんですか」

石田弁護人=「そうです」

証人=「食事を一緒にしたことがありますが、調べを一緒にしたことはありません」

石田弁護人=「河本検事が石川君を取調べるのを同席というか、同室というか、或いは目撃したことはないですか」

証人=「・・・・・・・・・」

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裁判長=「今の弁護人の問の趣旨は分かりますか」

証人=「分かります。同席したことはございませんし、同室もございません」

裁判長=「あなたは、一緒に調べたことはない、食事をしたことはあると」

証人=「ええ」

裁判長=「それから、あなたの調べている部屋へ河本検事が立ち入って、そのために同席したような形になったことはなかったですか」

証人=「河本さんは確か狭山の刑事課長を通じて調べるからということで、私が出たのがいいんじゃないかと思っているんです。そして河本さんがお入りになって調べたと」

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石田弁護人=「河本検事が被告を調べた場所と、あなたが被告を調べたとは同じ取調室ですか」

証人=「同じでございます。窓の際ですから、同じです」

石田弁護人=「あそこは、調べ室は二つですね」

証人=「二つありますが、刑事室の隣の部屋ですから」 

石田弁護人=「あなたの六月十二日付の被告人の供述調書、これも二審で検察官が提出した、捜査経過を立証するというものの一連の中の一通の供述調書ですが、石川君に署名指印を求めたがしてもらえなかった調書がありますね」

証人=「あります」

石田弁護人=「記憶がありますね」

証人=「それは確かに一通ぐらいあったと思います」

石田弁護人=「その調書、まあ調書としては成立してないわけですが、その記載によると弁護士立会いで決着をつけるとか、そういうことが書いてあるわけなんだけれども、その頃河本検察官が被告から録取し損なった、と言いますか、署名しながら指印がないとというか、やはり、被告の署名指印のない、検察官の録取書面というのがあるんですけど、そういうのを思い出しますね、その頃のこと」

証人=「お尋ねしますけれども、河本検事さんの調書に署名のないものですか」

石田弁護人=「というのもあるし、あなたのお作りになろうとしたものの中にも署名指印のないものがありますね」

証人=「私のは調書のうちに一つぐらいあると私も覚えていますが河本さんのはちょっと・・・」

石田弁護人=「あなたは河本検事を被告人に対してはお坊ちゃんというか、そういう呼び方をしていませんでしたか。非常に若かったですからね。そう言って不自然ではないんですよ」

証人=「私は河本検事さんは若いんで記憶があるんで捜査本部にあまりおいでになった方ではないからあの方、まあ知っておったわけですが、おぼっちゃん・・・ちょっと記憶にございませんが」

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裁判長=「あなたは、何かの調べのはずみに被告人に対して河本検事をあのお坊ちゃんというような、これははっきり具体的に弁護人はそこまで聞かれていない、要するに何かのはずみに坊ちゃん呼ばわりをしたことはないか、あるんじゃないかという問です」

証人=「あったかも知れませんが分かりません」

裁判長=「あったかも知れないけれども、はっきりした記憶はないと聞けばいいんですね」

証人=「はい」

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石田弁護人=「あなたは被告人に対して、河本検事坊ちゃんのように尻を台の上に乗せて取調べることは、自分達は出来ないんだというようなことを話されたことはありませんか」

証人=「古いことなので、そういう言葉ちょっと私思い出せませんけれども」

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裁判長=「河本検事が尻を机の上に乗せて被告に対したことがあったかも知れないという記憶はあるんですか。被告に言ったことじゃなくて、たまたま河本検事がそういう動作をしたことをあなたが誰かから見聞した記憶があるかどうか、そういうことがなければ前提が成り立たないね」

証人=「その当時はきっと裁判長から言われたように誰かから聞くか、捜査員から聞くか何かできっとそういうことが出たんじゃないかと思うんですが記憶には自分としてはないんです」

裁判長=「第一、あなたはそういうことを見た記憶があるか、河本検事が机に腰掛けて被告に対したのを見たことがあるというのか、そんなことは見たことがないのか、忘れたのか」

証人=「私が思いますのは、河本さんが机の上に腰掛けて取調べたことを聞いたように記憶してるんですがね」

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石田弁護人=「聞いたような記憶があるとすればさっき私が質問したように自分達は河本さんのように出来ないと、台の上に尻を乗せるような調べは私には出来ない、というようなことを言ったかどうか覚えていますか。被告に」

証人=「はっきり言ったとは分かりませんけれども」

石田弁護人=「言ったような気もするんですか」

証人=「かも分かりませんけれども、はっきり私もそこまで言われると困ってしまう」

石田弁護人=「言ったような気はするでしょう。他の捜査員から聞いた話を何らかの石川君とのやり取りの会話の中で言葉として出たというのはごく自然なことのように思うんですがね」

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裁判長=「言ったような気がするのか、言ったかも知れないというのか」

証人=「言ったかも知れませんけれども記憶にはっきりないわけです」

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石田弁護人=「ところであなたは一日に一通だけではなくて、何通かの調書を作った日がありますね。たとえば六月二日付では二通あり、六月七日付では三通あり、六月九日付では二通という具合に、一日にあなた自身が被告の調書を一通ではなくて、二通以上作られているのが何日かあるわけですが」

証人=「それは、たとえば朝から調べまして昼になりますと、自分達の食事もしなくちゃならないし、昼で大概打切ります。続けざまにやって飯を食ってからまたやるということはないんです。午前中終わる場合はそれで切るんです」

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                                            以上  昭和四十六年三月十日