アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 640

【公判調書1993丁〜】

                  「第四十回公判調書(供述)」㉓

証人=河本仁之(三十七歳・弁護士。事件当時、浦和地検検察官)

                                         * 

山梨検事=「出会地点に関する参考人調書というのはどういう内容だったのですか」

証人=「記憶ありません」

山梨検事=「そういう畑の所有者あるいは耕作者の参考人調書というのは死体発見現場付近の人のではないのですか」

証人=「今の質問でちょっと記憶がはっきりしたのですけれども、私の先程から言っているその関係の参考人調書というのは犯行現場付近のお百姓さんが当時その付近で耕作をしていたという事実があって、その関係を述べた調書だという記憶です」

                                           *

裁判長=「犯行現場というのは何の犯行現場ですか」

証人=「殺害現場です」

裁判長=「最初、被告人と被害者とが出会った地点付近の畑の所有者あるいは耕作者の参考人調書という風に述べたけれども、それはそうではないと今思い出したというわけですか」

証人=「そうです」

裁判長=「先程からの、その点に関する証人の供述はそのように訂正するわけですね」

証人=「はい。記憶が混交しておりました」

                                           *

石田弁護人=「私は先程、出会地点ということを明瞭に前提にして尋ねたはずなのですが、出会地点付近の畑の耕作者などの参考人調書もあったのではないですか」

証人=「今、検察官の質問によってよみがえった記憶によれば、出会地点付近で耕作していた農家の人の調書というのはなかったと思います」

石田弁護人=「検察官に取られたか警察官に取られたかは別として、出会地点と程遠くない畑の耕作者が調書を取られたということを言っているので、あなたの最初の記憶は間違っていないと思うのですがね」

証人=「出会地点、殺害現場、死体を吊るしたり埋めたりした地点、こういう一連の犯行現場付近の田か畑かはっきりしませんが耕していたお百姓さんがいて、そういう人の調書を警察が作っていた、という記憶は大体あります」

石田弁護人=「山学校というのは記憶あるでしょう」

証人=「そういう名前は記憶あります」

石田弁護人=「一審判決で出会地点とされている山学校近くのX型十字路を検察官も出会地点として指示したわけですが、その付近の畑の耕作者の調書などがあった筈ですがね」

証人=「出会地点に関しては畑の耕作者でなくて、その辺に住んでいる人たちの調書ではなかったかと思います」

石田弁護人=「出会地点から自白によるいわゆる四本杉の山、殺害現場付近までの通路の両側には畑が沢山ありますね」

証人=「畑だったと思います」

石田弁護人=「その畑の耕作者から録取した供述調書類、それは警察官が録取したか検察官が録取したかは別として、捜査本部にあったのではありませんか」

証人=「私の現在の記憶では、殺害現場付近の田んぼあるいは畑で耕作していた百姓の方の調書があったと思います」

石田弁護人=「出会地点付近のことで自白と現場とで柿の木と桑の木とが違っているということを原検事あるいはあなたが一審検証の際に説明したことがありますが、思い出しませんか」

証人=「私の記憶にはありません」

石田弁護人=「そのことが一審の検証調書に記載されているのですが、それも思い出しませんか」

証人=「思い出しません」

石田弁護人=「一審の検証のときにあなたは出会地点がここだと特定できると考えていましたか、あるいはそれほど特定はできないと判断していましたか」

証人=「ある程度の幅があるのではないかというような感じは残っております」

石田弁護人=「どの程度の幅ですか」

証人=「そのへんははっきりしません」

石田弁護人=「X型十字路から山学校に通じている畑と畑の間の道までぐらいですか」

証人=「はっきりしません」

石田弁護人=「その当時もはっきりしないという認識を持っていたわけですね」

証人=「ある程度の幅があるのではないかという感じが現在残っている、ということです」

石田弁護人=「どうしてそういう感じが残っているかその根拠については記憶ははっきりしていますか、あまり定かではありませんか」

証人=「あまり定かではありません」

石田弁護人=「出会地点がはっきりしないので困ったというような感じを起訴の時点なり一審検証の際なりに感じたようなことはありませんか」

証人=「はっきりしなくて困ったというまでの感じを抱いたという記憶はありません」

石田弁護人=「畑あるいは田んぼ、要するに農地の所有者なり耕作者なりの調書というのは自白による殺害現場付近に限られないですね」

証人=「そうかも知れませんが、記憶にあるのは殺害現場付近の農家の方の調書ということです」

石田弁護人=「それ以外にもあるのではないですか」

証人=「それ以外にあったかどうか記憶ありません」

                                           *

(続く)