アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 628

【公判調書1958丁〜】

                     「第四十回公判調書(供述)」⑪

証人=河本仁之(三十七歳・弁護士。事件当時、浦和地検検察官)

                                         *

橋本弁護人=「全面自供、それは被告人が単独犯行を自供したことで、それから数日後あなたが被告人を調べたということですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「日にちでいうと何日ごろになりますか」

証人=「日は記憶ありませんが、全面自供の三、四日ないし数日後だったと思います」

橋本弁護人=「取調べに当たった最初の日に調書を作りましたか」

証人=「はっきりした記憶はありませんが作ったのではないかと思います」

橋本弁護人=「七月二日もしくは三日付の被告人の供述調書は存在するようですが、そのころ供述調書を作った記憶はありますか」

証人=「そのころ作っていると思います」

橋本弁護人=「六月の段階ではどうですか」

証人=「はっきりした記憶はありません」

橋本弁護人=「あなたが再度被告人を調べるようになって、最初に被告人を調べたときの調書にはどういうことを書きましたか」

証人=「調書の内容については、はっきりした記憶はありません」

橋本弁護人=「あなたの再度の取調べの段階では合計何通ぐらいあなた名義の調書を作りましたか」

証人=「二、三通か三、四通かそのくらいだったと思います」

橋本弁護人=「多くても三、四通ですか」

証人=「そうだろうと思います」

橋本弁護人=「あなたが調べるとき原検事はいなかったのですか」

証人=「原検事はもちろん同席していないと思います」

橋本弁護人=「あなたと事務官と二人で調べたのですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「川越警察署の分室であることはわかりましたが、具体的な取調室はどういう場所でしたか」

証人=「分室内の畳敷きの部屋だったと思います」

橋本弁護人=「広さはどうですか」

証人=「四畳半か六畳ぐらいだったと思います」

橋本弁護人=「畳敷きで机はありましたか」

証人=「畳敷きの上に洋式の机、椅子が入っていたような記憶があります」

橋本弁護人=「被告人はどういう風に置きましたか」

証人=「テーブルや椅子を使わないで畳にあぐらをかいて向かい合ったような記憶があります」

橋本弁護人=「その際立ち会ったのは事務官ということですが、警察官は周辺にいましたか」

証人=「同席はしていないと思います」

橋本弁護人=「被告人の看守の任務を遂行する人はその辺にいましたか」

証人=「おそらく部屋の外には警察官がいたのではないかと思います」

橋本弁護人=「その日本間というのは被告人の留置されている留置場とどのくらい離れていましたか」

証人=「分室内の留置場がどこにあるかはっきり知りませんのでわかりません」

橋本弁護人=「その日本間は外部の騒音は入らないところですか」

証人=「騒音はほとんど無い非常に静かな部屋だったと記憶します」

橋本弁護人=「新聞記者などがあなたが取調べをしている周辺に立ち入るということはありませんでしたか」

証人=「そのような事態はなかったと思います」

橋本弁護人=「被告人は新聞記者から写真を撮影されるのを嫌っているということを本人から聞いたことがありますか」

証人=「どういう機会か忘れましたが聞いた記憶があります」

橋本弁護人=「どういう風に言っていましたか」

証人=「報道関係者に写真など撮られたくないと。従って、確か捜査当時においても公判段階においても被告人は現場検証には立ち会っていないと思います」

橋本弁護人=「報道関係者に写真を撮影されたくないということを本人からあなたに直接言ったことがあるのですか」

証人=「被告人本人から聞いたような記憶があります」

橋本弁護人=「それは狭山にいるときですか、それとも川越に移ってからですか」

証人=「おそらく全面的に自供をした川越に移ってからだと思います」

橋本弁護人=「あなたが狭山で取調べていた段階と川越で取調べていた段階で被告人の外形的な状況、態度に変化が認められましたか」

証人=「狭山当時はかなり挑発的、挑戦的といいますか、そういう感じがありましたけれども、川越においては非常に素直に接してくれ、また供述もしてくれたと記憶しております」

橋本弁護人=「挑発的と言いましたが、例えて言えばどういう態度ですか」

証人=「具体的な言動はちょっと記憶ありませんが、全体としてそういう感じを受けております」

橋本弁護人=「例えば質問したことに答えない、黙秘するとか、あるいは反論するとか否認するとか、そういうことですか」

証人=「そうです」(続く)

写真は事件当時の川越警察署分室である。夜間の撮影と思われ不鮮明を極めるが、一応説明を加えると手前の横長状の物体は塀であり、奥に分室の建屋(縦に並ぶ白色・四角状のものは窓)が写る。その窓に示された矢印が石川被告人が取調べを受けていた部屋である。