アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 784

【公判調書2436丁〜】 

                 「第四十七回公判調書(供述)」

証人=斉藤留五郎

                                            *

中田弁護人=「(埼玉県警察本部から取り寄せの番号十、昭和三十八年六月二十六日付青木一夫作成名義の調書の六月二十七日付斉藤留五郎作成による謄本及び狭山警察署取り寄せの番号三十一、昭和三十八年六月二十六日付青木一夫作成名義の調書の六月二十七日付斉藤留五郎作成による謄本を示します) 番号十二の謄本と番号三十一の謄本を見比べて下さい、これは一緒に同時に複写で取ったものでしょうか」

証人=「一緒だと思います」

中田弁護人=「その場合に番号三十一の謄本の方が色がちょっと青いから、ボールペンか何かで書かれたものだろうと思いますが」

証人=「はい」

中田弁護人=「番号三十一の方が上で、番号十二の方がカーボンを挟んで下と」

証人=「はい」

中田弁護人=「(同じく番号三十一の添付図面及び番号十二の添付図面を示します) これはかなり痛んでいるんでリコピー取ったと思われる図面がそれぞれついているんですが、全部は開きにくいんで一部だけ見せますが、かなり大きな図面なんですが、あなたはこういう図面をリコピーで取ったことありますか」

証人=「ありません」

中田弁護人=「川越署の分室にはこういう機械がありましたか、取れるような」

証人=「狭山で作ったかどうか知りませんが、私には覚えはありません」

中田弁護人=「そうするとこれは誰かから貰って謄本として一緒にくっつけたものでしょうね」

証人=「私が作らなくても一緒にいた者が作ったかも知れませんけれども思い出せません」

中田弁護人=「この両方の謄本ともリコピーとの間に契印は押してないんですよ、してませんね、確かに。そうするとあなたは供述調書の中身だけ謄本を作った、そのあと誰かがリコピーで取ってこれを作ったという風にむしろ考えられるわけですね」

証人=「どのようであったか思い出せません」

中田弁護人=「とにかくこのリコピーの図面にはほとんど記憶がない」

証人=「はい」

中田弁護人=「それでは前の番号十と番号二十九の謄本に戻りますが、これには図面と供述調書の間にあなたも契印してる、佐久間さんも契印されてるようなんですよ。ちょっと薄いが、かすかにあるようなんですよ」

証人=「はい」

中田弁護人=「しかし番号十のほうの添付の図面は、あなたの先ほどからの話によると少なくとも佐久間さんが作ったものとは思えないということになりますね」

証人=「はい」

中田弁護人=「あなたが同じ機会に作ったと思うと言われるんだから」

証人=「そういう風に思ってます」

中田弁護人=「とするとあなたは事実上、供述調書の謄本を作る、それに添付されている図面の写しを作る、そして自分で謄本を一つのまとまったものとして作成した以外に、何通か別に図面の写しを作って誰かに出したというようなこともあることになりますね」

証人=「あるかも知れませんが」

中田弁護人=「あなたは、特に図面を作る時のことを伺いたいんですが、どれくらいの枚数の写しを作ったと思いますか」

証人=「三、四枚ではないかと思います」

中田弁護人=「川越で作った場合と狭山の場合とでは今から思い起こしてみて違いがありませんでしたか」

証人=「ちょっと今のところ思い出せません」

中田弁護人=「あなた自身、川越署分室で作ったと思われる供述調書の謄本は大体先ほどから示したもの、ごく二、三通に限られているんですが、先ほどの話ではそういう作業をする者は何人かいたと言ってますね」

証人=「はい」

中田弁護人=「先ほど示したリコピーのもののように、あなた方が謄本を作成するにあたって、謄本を作成している以外の人が図面を何部か持って来て、これをくっつけておくようにと言われたことはありませんか」

証人=「覚えがございません」

中田弁護人=「そうすると先ほどのリコピーの大きな図面が載っている謄本のように、むしろあなた方が作った謄本を上司に出すか何かするんだろうけれども、そのあとに他の人が作った図面がある、しかしその辺はどうして出来たか自分には分からないということになりますね」

証人=「はい、私には分かりません」

                                            *

石田弁護人=「留置場のすぐ近くに差入れ屋がありませんでしたか。川越署の」

証人=「それは知りません」

                                            *

山梨検事=「今、弁護人から詳細に調書の謄本の点を質問されたんだが、その原本はあなた見せられたんですか。謄本だけを見せられて説明を求められたんですね」

証人=「はい」

山梨検事=「先ほどの例えば三十八年五月三十一日付諏訪部さんの作った調書をあなたは謄本を取ったと言うんだけれども、これなんかもこれは原本を下にしてなぞって取ったものじゃないかという証言をされましたね」

証人=「はい」

山梨検事=「しかし、それは原本がそこにないと、これは対比しないと分からないんじゃないですか」

証人=「原本の上に・・・・・・」

山梨検事=「原本がないと、見比べなければね、一番初めの五月二十四日の分は、これは原本を傍に置いて見比べながら自分で書いたと言われたが、それと違うということはどうして言えるんです。これは原本がなければ言えないんじゃないですか」

証人=「意味が分かりませんが」

山梨検事=「それをなぞったのか、原本を傍に置いて自分が書いたのか、原本がなければ言えないんじゃないかと」

証人=「これは確かに原本をなぞっていたのを書いたものと自分では思ってます」

山梨検事=「原本を下にしてなぞったという風に聞いたんだが」

証人=「薄い紙を上に置いてなぞったという意味です」

山梨検事=「それは原本がなければなぞったのやら、原本を横に置いて書いたのやら、なぞったとすれば大体合いますね。傍に置いて見て書いたんじゃだいぶ違うと思うが、合わしてみれば」

証人=「それは原本がないですから、それ以上のことは今私には分かりません」

山梨検事=「先ほど五月三十一日付のに原本をなぞったような証言をしたんで、それでいいかなと思って聞いているんです」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

中田弁護人=「検察官、原本を示してお聞きになったらどうですか」

山梨検事=「まあ特にあなた五月三十一日の分は、なぞったと言われるので、そういうことがどうして言えるのかということを聞いているんです」

証人=「そのように今思えるという以上何とも申上げられません」

(続く)

                                             *

ええっと、なになに、「番号十二の謄本と番号三十一の謄本を見比べて下さい」と。

埼玉県警から取寄せたもの・・・。

番号十二。

こちらは番号三十一。この番号を裁判資料から探すが見当たらない。六月二十七日付とあるので、その日付を見てみると・・・。

六月二十七日付の図面は他にもあるが、これらの甲と乙を見比べよ、ということなのか。いや、違うか。

晩酌しながらでは裁判資料を理解出来るわけがないことに、今さら気付く。