アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 783

事件当時の狭山市近郊。写真は狭山事件裁判資料より。

【公判調書2433丁〜】

                   「第四十七回公判調書(供述)」

証人=斉藤留五郎

                                            *

中田弁護人=「(同じく番号一及び番号二十の各謄本に添付されている図面を示します) ではこの二通の図面もやはり比較して見て下さい、これも一緒に作ったものでしょうか」

証人=「と、思います」

中田弁護人=「この図面は二つとも複写用のかなり薄い紙を使ってますね」

証人=「はい」

中田弁護人=「こういう紙を使って取ったこともある」

証人=「はい」

中田弁護人=「この図面は両方とも同じ字のように見えますが、右上に"とりごや""みはりしていたところ"というように書いてありますね、左下には"ばんごや"石川一夫指印と書いてありますね、この字もあなたの字だと思いますか」

証人=「思います」

中田弁護人=「(狭山警察署から取り寄せの番号二十九、昭和三十八年六月二十四日付青木一夫作成名義の謄本を示します) 今まであなたに見せたものは大体狭山警察署で作られた供述調書と思われるんですが、これからお見せするものは少なくとも石川君が川越署の分室に移ってから後のものですが、そのことを頭に置いて見て下さい。

この謄本の終わりにはあなたが作ったという署名押印があるんですが」

証人=「ええ」

中田弁護人=「この謄本全部あなたの字ですか」

証人=「この一枚は違いますね」

中田弁護人=「この謄本のうち最初の一枚はあなたの字ではないと思うんですか」

証人=「・・・・・・・・・。私のですね」

中田弁護人=「そうするとその謄本は大体全部あなたが作ったものですね」

証人=「はい」

中田弁護人=「(同じく番号二十九の謄本添付の図面を示します) これを見て下さい、表も裏も見て下さい。これには今まで示した謄本添付の図面のようにあなたが作成したという添書きがありませんね」

証人=「はい」

中田弁護人=「これはどうして作られたものでしょうか、分かりませんか。今見て」

証人=「これはだからさっき申し上げたようにカーボンが間に入っているからカーボンで何通か取ったものと思います」

中田弁護人=「先ほどからあなたが説明したカーボンで何通か取ったものの図面に書かれている字を見るとあなたが自分自身で書いたものだろうと思われると言われましたね。先ほど見たのは」

証人=「はい」

中田弁護人=「ここに書いてある字は、あなたが写したにせよ何にせよ自分で書いた字だと思えますか、よくこの字を、特徴などを見て下さい」

証人=「そのように思います」

                                            *

裁判長=「証人はどういう風に思うの。そのように思うというのは、自分のであるのか自分の字じゃないのか」

証人=「自分で書いたものと思います」

                                             *

中田弁護人=「それをそのまま開いてて下さい。(埼玉県警から取り寄せた番号十、昭和三十八年七月一日付青木一夫作成名義の佐久間武男謄本作成名義のものを示す) ちょっとこれ見て下さい。これは謄本作成名義人が違うんですが、あなたが今作ったと言われた謄本と中に書いてあることは同じなんです。これを見ると確かにあなたの字じゃないですね」

証人=「はい」

中田弁護人=「謄本作成者は佐久間武男と書いてあるんです。佐久間さんご存じですね」

証人=「存じません」

中田弁護人=「この番号十の謄本は七月一日に作られたことになっているんです。あなたが作ったのは六月二十四日ですからこれは違う機会に作ったものだということが明瞭なんだけれども、先ほどあなたが自分で書いたものだと思うと言われた添付図面と同じものなんですが。

(同番号十の謄本添付の図面を示します)

この図面と先ほどあなたが作った謄本に添付されている図面を比較してよく見て下さい」

証人=「同一のものだというんでしょう、字が」

中田弁護人=「結局、見ると番号十の添付の薄い紙、番号二十九のあなたが作ったほうの添付図面と、完全に同じ風には見えないんだけれども、しかし書かれている字だとか書かれている図面を見ると、これは同じ機会に複写で取られたものという風に見えるでしょう」

証人=「はい」

中田弁護人=「あなたも今、そういう趣旨のことを仰ったが」

証人=「はい」

中田弁護人=「どうも同時に作られたように思えますね」

証人=「後から作ったとすれば、これを写せば出来ないことはないと思いますが」

中田弁護人=「そこであなたは先ほどこの番号二十九の添付図面はあなた自分が書いたものだと思うと仰ったけれども、番号十の添付図面を見てもやっぱりこれも自分が書いたものと思いますか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

中田弁護人=「目で見た限りでは同時に複写で作ったように思われるんですが、あるいは違うかも分からんですけれども・・・」

証人=「どうも複写で取ったものですね」

中田弁護人=「あなたが書いたものだと思いますか。番号十のほうも」

証人=「ええ」

中田弁護人=「あなたはこういう図面を謄本として作成した時には図面自体に自分が作成したということを通常は書くんでしょう」

証人=「そうです」

中田弁護人=「佐久間さんが作った謄本の方にも佐久間さんが作ったという署名もなければあなたが作ったという署名もないわけだから、あなたが作った謄本添付の図面にも、あなたが作ったという署名押印はないんですよ、その辺のことを考えると、この二つの図面はあなた以外の者が作ったんだという風には考えられませんか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

中田弁護人=「分かりませんか」

証人=「分からないです」

中田弁護人=「そこでこの番号二十九のほうの図面を見ますとこれは裏にも写ってますね、そういうところを見ると、この紙の上にも下にもカーボンがあったんじゃないかと思われるんですけれども」

証人=「はい」

中田弁護人=「番号十の謄本添付の図面を見て下さい。目で見た限りでは正確なことは言えませんが、この二つを合わして実際上どういう風に作ったんだと思いますか、どっちが上でどっちが下だと。あなたが自分で作ったと言われるから、どっちという風にした場合にこういうものが出来るだろうかと。その辺が知りたいんですが」

証人=「これが上のような気がします」

中田弁護人=「番号十に添付の図面、薄い紙の方を上にして番号二十九の方のを下にして更にその下にもあったと思われますね」

証人=「そうです」

中田弁護人=「いろいろと見比べてみて、この図面はあなたが作ったもののように思う」

証人=「そのように思います」

(続く)