アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 773

【公判調書2409丁〜】

                    「第四十七回公判調書(供述)」

裁判長は証人に対し、昭和四十六年三月二日の公判においてした宣誓の効力を維持する旨を告げた。尋問及び供述は以下のとおり。

                                             *

証人=斉藤留五郎                      昭和四十六年五月十一日

                                             *

福地弁護人=「警察官におなりになったのは昭和二十二年でしたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「警察官になる前は何をやっておられました」

証人=「農業の次に軍隊におりました」

福地弁護人=「軍隊に入ったのはいつ頃ですか」

証人=「まる六年ちょっといたんですから、いつになりますか」

福地弁護人=「それはどこか外地へ行かれたんですか」

証人=「ええ。満洲から沖縄のほうの小さい島なんです。沖縄の向こうの宮古島です」

福地弁護人=「軍隊の階級でいうと、どこまでいったんですか」

証人=「兵長です」

福地弁護人=「陸軍ですか」

証人=「そうです」

福地弁護人=「前回の証言によると、あなたは取調べの小使いみたいなと言いますかね、そういう手伝いみたいなことをやっておったと、本件についてね、そういう風に供述したんですが、その通りですね」

証人=「はい」

福地弁護人=「取調べで調書が出来ますね、その調書の整理みたいなことを手伝ったこともありますか」

証人=「整理というと、その整理というほどの長い調書を私がやっている時には取ったことはありません。私が整理したんでは」

福地弁護人=「調書に図面が添付されることがよくありますけれども、そういう図面の整理ですね、また、図面の作成なんかを手伝ったことはありませんか」

証人=「調書の謄本を取ったのと、それを書いたことはあります」

福地弁護人=「それは狭山署時代と川越分室時代と分けまして、狭山署時代にもそういうことがあったんでしょうか」

証人=「狭山署時代には調書を取っても一枚ぐらいで二枚に及んだのはないと覚えております」

福地弁護人=「川越分室時代はそういうことがあったわけですね」

証人=「はい」

福地弁護人=「謄本を作るというのは具体的にはどういうことですか」

証人=「写して書くことです」

福地弁護人=「それは調書の本体と言いますかね、文字で書いてある調書ですね、その謄本を作る仕事と、それから図面を写す仕事もあったんですか」

証人=「ありました」

福地弁護人=「それから、あなたは石川君を取調べる際に、取調室の中に、入口に置いてある机のところに坐っておったことが多かったと前回供述しましたね」

証人=「それは狭山にいた時で、川越へ来てはそういうことはほとんどなかったです」

福地弁護人=「川越へ来てからはほとんどなかった」

証人=「はい」

福地弁護人=「前回はそういう風には言ってませんでしたね。この前の供述の時には狭山署時代にはそういうことはあったけれども、川越時代にはそういうことはなかったというような供述はしてなかったんですか」

証人=「なかったと言うんではなくて、狭山にいた時の部屋と、川越の部屋は狭かったんです。今、思い出しますに、机が一つ入ってまして」

福地弁護人=「それはどちらですか、川越ですか」

証人=「川越です。畳の上に机が一つ置いてありまして、狭かったことを覚えております」

福地弁護人=「だから、川越へ行ったときには部屋の中には入っていないんですか、そういうことですか」

証人=「多少入ってます。お茶を入れたり連れて行ったり、いろいろしましたから入っております。だけれども仕事のために私がそこに入っていたということはないんです」

福地弁護人=「前回、狭山署での取調室の状況を図面に書いてもらいましたけれども、川越署の取調室は狭くて、机が一個しかないわけですね、今、そう言いましたね」

証人=「いや、狭山署は畳なんです」

福地弁護人=「いや、川越分室の話をしているんですがね」

証人=「今の間違えでした。畳は川越です。川越の部屋です、畳の部屋というのは」

福地弁護人=「川越分室の取調室の説明を簡単にやってくれませんか。畳が一面にひいてあるわけですか」

証人=「はい。で、まず、入ってすぐ左方に立机が一つ入っていたと思います」

福地弁護人=「裁判長、簡単に川越分室の取調室の状況を図面に書いてもらいたいと思いますが」

                                             *

裁判長=「前回のは狭山のでしたね」

福地弁護人=「前回のは狭山のです」

裁判長=「証人、記憶によって概略の川越分室の取調室並びに取調室の状況を書けますか」

証人=「はい」

福地弁護人=「取調室の中だけじゃなくて、できれば取調室のまわりから書いてくれませんか。被告人が入っていた留置場を含めて図面に書いてくれませんか」

(証人は本速記録末尾添付の図面を一応書いた)

(速記録末尾添付図面)

証人=「この程度しか思い出せません」

裁判長=「ちょっと見せて」

証人=「裁判長、その小使室の間に今一つ部屋があったかどうか、ちょっと度忘れしておるんです」

裁判長=「これは完成する前に、ちょっと尋問のあれで出てくるかも分かりませんから弁護人と検察官に見てもらって、こういうところがあればというところを思い出してもらって記入できたら記入した上で完成して下さい」

中田弁護人=「弁護士などが接見に行ったときに使っていた部屋がわかったら、どの部屋か書いてくれませんか、それと留置場の恰好ね」

証人=「ちょっと思い出せないんですがね。これは何か渡り廊下があって、建物が別のような気もするんですが、ちょっと思い出せないんですが」

中田弁護人=「それともう一つ、あなた方が通常出入りしていた出入口がどっち側にあるのか、警察署のですよ」

裁判長=「だから、方角が分かれば一番いいんだが、方角は分からないでしょうね、東西南北の」

(続く)