【公判調書2407丁〜】
「第四十七回公判調書(供述)」
証人=清水利一
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裁判長=「ほがらかな場合もあるが、ほがらかでない場合もあると言ったね」
証人=「話題によって・・・・・・」
裁判長=「ほがらかでない場合は、ほがらかの反対のことを意味するんですか」
証人=「そういうことです」
裁判長=「すると、不穏な気配を示す時もあると。ほがらかじゃないという意味は、ほがらかというのは普通とちょっと変わった状態で、ほがらかじゃないというと普通の状態ということにもなる、ほがらかな状態じゃないというのは、ほがらかと反対の意味でほがらかじゃないと言ったのか」
証人=「反対の意味です」
裁判長=「不穏で、凶暴になるとか、逃亡を企てるんじゃないかという恐れのある状態をほがらかじゃないという意味に含めてるんですか」
証人=「私が取調べている段階では、そう凶暴だとかいうことは感じなかったです」
裁判長=「ほがらかじゃないというのは」
証人=「口を聞かなくなって、陰鬱になるということです」
裁判長=「普通の状態なら口を聞くが、口を聞かないで陰鬱になるという程度のことをあなたは、ほがらかじゃないということで表したんですか」
証人=「そうです」
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石川被告人(以下、被告人と表記)=「狭山警察にいる時のことをお尋ねしますが、六月五日か六日頃証人に調べられている時、河本検事さんというのはご存じですか」
証人=「知ってます」
被告人=「あの河本検事さんがテーブルの上に腰を乗せて調べていたところを覚えているでしょう」
証人=「河本検事が調べてる時は、私は席を外してるような気がするんですが」
被告人=「見たことがあるんですか、河本検事が調べてる時」
証人=「河本検事が調べてる時は立会ったのは私じゃなくほかの刑事じゃないですか」
被告人=「斉藤留五郎っていう、自分を出し入れする人ですが、証人が調べる時に、私は河本坊ちゃんのように偉くないからテーブルの上に腰を乗せて調べることはできないんだと言ったことあったでしょう」
証人=「それは見たわけじゃなく、話を斉藤留五郎さんに聞いてそんな話があったような気がします」
被告人=「それから、再逮捕される二、三日前に記念写真を撮ったことがありますね、ご存じでしょう」
証人=「誰が撮ったでしょうか」
被告人=「撮った人はちょっとわからないですが、五人ぐらい、証人と長谷部さん、それから遠藤さんも多分いたと思ったです。山下さん」
証人=「ああ」
被告人=「斉藤留五郎さんはいたかいないかちょっとわからないですけど記念写真を撮ったことはご存じでしょう」
証人=「覚えてます」
被告人=「それから、善枝ちゃん殺しについて自分を調べる時、証人は、自分の息子も高校生か大学生だかいると言ってましたね」
証人=「はい」
被告人=「だから善枝ちゃん殺しを自白したら、嘆願書を出してやると証人から言われたことを記憶しているんですが」
証人=「息子が学校へ行っている話をあなたにしたことはございますでしょうが、それ以外のことは・・・」
被告人=「多分大学だと自分は記憶しているんですが」
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裁判長=「息子が大学へ行ってるから、自分にも息子がある、だから、あなたにこの証人が嘆願書を出してやると言ったことがあると言うんですね」
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被告人=「そうです」
証人=「子供の話はしたことあると思いますが、嘆願書をどうこうということはちょっと記憶にございません」
被告人=「それからもう一点。今、お茶飲むとき両手錠を外すと言われたですが、そういうことされたことありません。片一方の手錠を左側だけをはめられていたことはありますが、両手錠を外したことはないんです。めしを調べ室でこの時食ったんですか」
証人=「めしを食べたこともあるでしょう、あなた、一回ぐらい」
被告人=「それじゃ昼も休みなしで調べるってわけですね。その場合はめし食ったらすぐまた」
証人=「いや、休みなしで調べることはなかったですね」
被告人=「留置場へ帰さないで、調べ室でめしを食うわけですか」
証人=「そうでなくて、何かあった時、一緒にめしを食おうじゃないかと言ったような気がするんですがね」
被告人=「調べ室でですか」
証人=「ええ」
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以上 昭和四十六年五月二十日
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『紅林麻雄(くればやし あさお)=明治41年〜昭和38年。職業=警察官』
この方及びその弟子どもが関わった事件は次の通り。
幸浦事件=昭和二十三年発生。
仁保事件=昭和二十五年発生。
島田事件=昭和二十九年発生。
袴田事件=昭和四十一年発生。
全て冤罪となっている。
証人=清水利一はここまで酷くはないが、紅林と同じカテゴリーに属していることは疑う余地はないだろう。