アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 926

石川被告の自白によれば、腕時計を捨てた場所は道路中央の丸印(正確には◯印内に"ヘ"の文字)であった。

実際に発見された場所はこの道路横の茶垣の根元であり("ト"印の下付近)、発見した方は当時七十二歳の小川松五郎さんであった。捨てた場所と発見された場所は割と近いと思われるが、これをどう捉えるかで、意見は割れるであろう。

【公判調書2926丁〜】

                 「第五十五回公判調書(供述)」

証人=小島朝政(五十六歳・財団法人埼玉県交通安全協会事務局長)

                                           *

(腕時計の捜索調書を作ったか、との橋本弁護人の質問に対し)

証人=「これは、あの近所に小松松五郎とか・・・・・・、ちょっとあの辺に老人がおりまして、私ども捜索を二日ほどやった後、ここにあったということを通報を受けて捜索調書を・・・・・・、その場で時計を押収したように記憶しておりますね」

橋本弁護人=「小川松五郎ですか」

証人=「ええ、小川松五郎ですか。そうですね、二日ほどしてと、何でも捜索して(注:1)、まあ端的な話になりますが、当時の部下、職員も、何、嘘つきだ、ありゃしないよ、いや本当に自供しているんだから捜せよ、ということで係の者、七、八名と記憶しておりますが、その者に図面を渡してその付近を捜索したんですが、お昼に一回通報を受けてありませんと、その晩もありませんということでその翌日もやったと、二日やったという風に記憶しておりますがね」

橋本弁護人=「そうすると自供で示された地点をまず警察官が二日間に渡って捜索をしたと」

証人=「それは、そんなことを言ったって道の真ん中に捨てたんじゃ、ありはしないよということで捜査員は本当にしなかったんです。とにかくどういう風になってあるか分からないし、車がとばしているかどういう風になっているか分からないから付近を捜せよと言ったら、まあ渋々捜索をやったんですが、それで道の上に捨てたというのでは、ありゃしないんだと。それよりは近所の聞込みを、あるいは拾った人がいるかも知れないということで、その近辺を聞込み捜査をしたと。拾ったとか、あるいは拾ったということを聞いたとか見たとかいう者があるかどうかというようなことを捜査したということの報告を受けました。それでその後二日くらい経ちましたか、の、昼頃私が捜査本部におりましたらば、先ほど出ました小松松五郎老人が拾ったということで知らせがあったので、私が行ってそこを実況見分し、時計を押収したというようなわけでございますが」

橋本弁護人=「もうちょっと聞きますと将田警部からあなたに時計を捜しなさいという下命が来たわけですね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「その時メモをもらったと言いましたね。それは誰が作ったものですか」

証人=「それは多分、被疑者、被告が作ったものだということを聞いたように記憶しております」

橋本弁護人=「あなたそのメモを受け取ったんですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そしてそのメモをどうしたんですか」

証人=「そのメモを見て、それで、その現場を推定して、その辺に捜査員をやったわけですが」

橋本弁護人=「現場はどの辺に推定したんですか」

証人=「その現場は入間の第二駐在所で、火の見がございますが、その一つ向こうのところを入った突き当たりのT字路のところでありました」

橋本弁護人=「地名は」

証人=「地名は今記憶がございませんが」

橋本弁護人=「あなた自身が推定した現場に赴いたんですか」

証人=「発見された時ですか」

橋本弁護人=「捜索に、まず発見される前に」

証人=「地図を見て私行きました。メモによる簡単な一本で書いたT字路の、本当の大雑把なものですが、それを見て現場に行ってああこの辺だなあということを確認して、周りの人家の状況や地理の状況を見まして、それで捜査員にじゃこの辺を捜して見てくれよということを下命して私は捜査本部に引き揚げたように記憶しておりますが」 

橋本弁護人=「あなたが下命した捜査員は何名くらいですか。捜査に当らせた人員は」

証人=「七、八名、十人足らずじゃなかったかと思います。十人は欠けていたんです」

(続く)

                                            *

(注:1 )「何でも捜索して」の "何でも" という言葉だが、これは《連語》としての、つまり〈何でもかんでも〉や、〈いかなることも〉あるいは、〈すべて〉という意味での使用ではなく、副助詞としての"何でも"が使われていると思われる。そうでなければこの証言は文脈的に疑問符が付く内容となろう。

では副助詞としての"何でも"とはどういう意味合いか、それは例えば〈聞くところでは〉や、〈どうやら〉あるいは、〈よくは分からないが〉などが挙げられる。

以上のような推察を踏まえ、証言を改変し、ちょっとだけ載せてみるが、これはあくまで私自身に向けた改変文である。

「・・・小川松五郎ですか。そうですね二日ほどしてと、どうやら聞くところによると捜索して・・・・・・まあ、端的な話になりますが・・・・・・当時の部下や職員らは『な〜に嘘つきだ、ありゃしないよ』『いや本当に自供しているんだから捜せよ』ということで係の者、七、八名と記憶しておりますが、その者に図面を渡してその付近を捜索したんです・・・」 

・・・という私の解釈であるが、う〜む微妙である。

では、もし《連語》としての "何でも" を使用し改文するとどうなるか。

「・・・二日ほどして、どこでもかんでも、いかなる場所も、もはや全て捜索して・・・まあ端的な話になりますが・・・当時の部下や職員らは伝々」

そしてこの後、図面をもとに捜索に着手したとなる。これでは徹底した捜索後に、重ねて捜索をするという、やはり文脈が破綻してしまう内容となるのだ。

これでこの考察は終了とする。