アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 930

【公判調書2934丁〜】                  

                     「第五十五回公判調書(供述)」

証人=小島朝政(五十六歳・財団法人埼玉県交通安全協会事務局長)

                                            * 

橋本弁護人=「それではボールペンというのはどうですか」

証人=「これはありましたですね。最初と、その次も二、三回ありましたでしょうかね」

橋本弁護人=「記録によりますと、一回、二回、三回目の家宅捜索でボールペンを押収してますね、被告人方からね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「総数は四本ですか、全部で」

証人=「ああ、そうですか」

橋本弁護人=「記憶ありますか」

証人=「数は記憶はございませんが、ボールペンを押収したことは記憶はあります」

橋本弁護人=「第一回目の五月二十三日に、二本押収してますね」

証人=「ああ、そうですか、数量は一、二、三回やった捜索についても、何本、いつの時にあったかということは今はちょっと記憶がもう、薄れちゃってわかりませんが、押収したことは間違いありませんね」

橋本弁護人=「その第一回目に押収したボールペンがどういうものであったか、記録には書いてないようなんですが、どういうものだったでしょうか」

証人=「今、形がどういうものであったかと質問されても、ちょっと記憶が薄れててわかりませんですが。申し訳ありません、どうも」

橋本弁護人=「そのボールペン押収する際にどういうところに着目するわけですか。目的はボールペンということになってますね、どういうところを捜せばボールペンというものが見つかるんでしょうか」

証人=「どういうところを捜せば見つかるという場所ですか、場所をどういうところを」

橋本弁護人=「はい、はい。あなた方は捜査の専門家ですからね」

証人=「いやいや、私はそんな専門家と言われるほどの者じゃないですが」

橋本弁護人=「つまり、押収目的物によってですね、やはり、捜査の勘どころというのはあるんでしょう。こういうところに大体あるものだという」

証人=「まあ、一般的に考えて、読み書きするところが一番多いんじゃないでしょうかね。まあ、そのほか、特殊な場合には特別な場所に隠されるということもありましょうが、まあ通常ならば机だとか本箱だとかいうところに一番あり易いというのが普通でしょうね」

橋本弁護人=「正常なものと贓品ですね、の場合には差があるでしょうね」

証人=「それはあるでしょうね、犯行に使用されたもの、あるいは日常使用されるものというのは、当然あろうと思いますね」

橋本弁護人=「つまり、犯行に使用したものとか、あるいは、被害者のところから持ってきたものと、自分が正当に所持しているものとは、置き場所が違うということでしょうね」

証人=「そういうことだと思いますね。しかし、たまたま他人のものを借りて使用する場合などは、必ず、一般的に置くような場所に置かないというようなことも無きにしもあらずですね。と申しますのは、もっと端的に言いますと、簡単に、机の上にあったボールペンなりを犯行に使用してまた、他人の使用したものであるがゆえに、元に返しておくという場合もあり得るわけですね」

橋本弁護人=「いろいろ、場合によって、一般論を言ってもしょうがないでしょうけれども、被害者の万年筆ですね、これが捜索目的になったことがありますね」

証人=「はい、ございます」

橋本弁護人=「これはいつと、いつの捜索ですか。これはですね、一回目の捜索にはなかったんでしょうね、二回目というのは、六月十八日、再逮捕翌日ですね」

証人=「二回目の時に捜索をしてなかったと、三回目に被告が自供したことによって捜索した時に発見されたということで、二回あると思うんですが」

橋本弁護人=「その三回目の時に発見されたということは記録上明確ですがね、私が聞いているのは、二回目の時も万年筆を捜索の目的にしておったんじゃありませんかと聞いておるんです。発見できなかったけれども」

証人=「二回目の時も捜索物の対象になったと思いますね」

橋本弁護人=「つまり、あなた方捜査員の頭の中には万年筆も見つけてやろうという頭で捜したわけでしょう」

証人=「そうですね」

橋本弁護人=「そして、その万年筆は被害者のところから持ってきた、いわゆる贓品であるということの認識もあったわけでしょう」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「したがって、家のどこかに隠されているかも知れないという認識もあったわけでしょう」

証人=「そうですね、はい」

橋本弁護人=「そういう頭で家の中を捜したわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「被害者の財布を捜索の目的にして家宅捜索をやっておりませんか」

証人=「財布は記憶がございませんですね」

橋本弁護人=「全く記憶がないですか」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「それじゃ、被害者の財布が奪われているということは知っておりましたか」

証人=「ちょっと、その辺のところ、今はっきり覚えておりませんですね」

橋本弁護人=「先ほど、捜査にあとから加わって、同僚、先輩から話を聞いたり、記録を検討したりして事件を知ったと、こういう話でしたね」

証人=「はい。が、しかしですね、捜索の時に財布があったかと尋問されても、ちょっと今、記憶がありませんと、こう申し上げたいと思います」

橋本弁護人=「いや、捜索の時には財布を目的にしたかどうかは記憶がないとしても、あなたの頭の中には、この被害者の財布を奪われていると、つまり、金品を強奪されておるんだという事件なんだという認識はあったんですか」

証人=「財布のことは私はあまり今、記憶がないんですがね」

橋本弁護人=「財布の捜索について、特に下命を受けなかったですか」

証人=「今、考えます記憶に残っていることをそのまま申し上げますと、このボールペン、ノート、時計、万年筆というようなものが捜索の目的物であって、財布というものはちょっと記憶がないんですがね」

橋本弁護人=「家宅捜索の目的になったかどうかを問わずですね、財布自体の捜索ね、聞込みとか、あるいは道路周辺の捜索とか、犯行現場付近の捜索とか、そういう捜索をしたことはないんですか」

証人=「それが本当にどうもお尋ねされても全く記憶がなくて、申し訳ないんですがね」

橋本弁護人=「あなたは先ほど述べた、三回の家宅捜索全部についての責任者ですね」

証人=「全部についての責任者だと」

橋本弁護人=「ええ、全部についての責任者ですね」

証人=「そうですね。私が前後三回に亘る、というのは被告方の捜索という意味ですね」

橋本弁護人=「ええ、そうです」

証人=「被告方の三回に亘る捜索については私が責任者でございました」

(続く)

                                            *

弁護人が指摘し証人が認めた『家のどこかに隠された贓品である万年筆を捜し出してやろう』という意思が本当に捜査員らにあったかどうか。

六月十八日に行なわれた第二回目の家宅捜索での、捜査員が被告宅の神棚を調べている模様が写真で記録されているが、どうやら台を使用し捜索しているように見える。これは言うまでもなく徹底し尽くした捜査員の家宅捜索と言えよう。

この捜索に携わった元刑事の一人は弁護団の調査の中でこう証言している。

『鴨居などの捜索は見落とさないよう気をつけます』

『こりゃもう、警察学校から厳しく教育受けますよ』

ではなぜ、その徹底捜索をかいくぐり万年筆が現れたのか、ここがいわゆる狭山の黒い闇である。

                                            *

                        『狭山現地・いまむかし』

さて今回は西武鉄道入間川駅の変貌を見てみよう。

【昭和38年】

【昭和63年】よく見ると駅名が「入間川駅」から「狭山市駅」へと変わっている。

これは現在の狭山市駅である。無個性、無機質、無駄尽くめな、風情も何もない、言われなければこの駅が狭山市駅だとは誰もわからない悲しい建屋と成り下がっている。狭山市当局はどういった意図でこのような仕様の駅に仕立てたか私には分からぬが、もし私がこの狭山市駅の建替企画課長であったならば、当ブログで扱う狭山事件も考慮に入れ、駅舎は木造一階建て(ほぼ昭和38年仕様)、トイレは水洗式と汲取り式を準備し各世代対応型とし、ホームには立食いそば屋を設置、毎年五月一日には駅前をドラム缶を積んだトラックを走らせたりし、本件の裁判に関し注意喚起を行ない、皆でこの狭山事件を語れる場にするであろう。

全く関係ないが、現在、所沢駅ホームで営業する「狭山そば」は、旧所沢駅時代はその味が絶賛されていたが、当時の常連客が言うにはネギの質が落ちた、味もの変わった、とのことで、その方は以後食べには行かぬということである。

昭和を離れてゆくに及び、なんだかいろいろな良き事象が廃(すた)れ、この世はこの先どのようなところへ辿り着くのか、私には全く想像かつかない。