アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 981

【公判調書3068丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

                                           *

橋本弁護人=「この善枝さんの事件を公表したのはいつですか」

証人=「佐野屋の事件が逃走されて二、三日後ではないかと思います」

橋本弁護人=「捜査本部が設置されたのは三日でしょう、逃走されたその翌日」

証人=「はい、三日です」

橋本弁護人=「そして山狩りを始めましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「この山狩りをやってる段階では、まだ世間には公表していなかったですか」

証人=「公表しておりません」

橋本弁護人=「山狩りは何回やってますか」

証人=「その当時、特捜本部の連絡等をやっておりましたので、山狩りをしているということは分かりましたが、何回やったかというのはちょっと記憶ありません」

橋本弁護人=「五月三日に捜査本部が設置されて、五月四日に死体が発見されておりますが、まあ、捜査本部が出来て死体が発見されるまでの間、山狩りをやったんだろうと思いますが」

証人=「はい」

橋本弁護人=「死体発見後も山狩りをやってますか」

証人=「死体発見後は特に山狩りという風な名の付いた捜査はやっていないと記憶しております」

橋本弁護人=「山狩りというのは警察の正式な捜査方法の一つとして入っておりますか」

証人=「山狩りというのは入っておりません。捜索というので入っています」

橋本弁護人=「そうすると山狩りというのは俗称なんですか」

証人=「俗称です」

橋本弁護人=「私たちが理解しているところでは警察官以外にも民間の人も頼んで捜してもらうと、こういう場合は山狩りと言っているように見受けるんですが、どうですか」

証人=「それぞれの土地で若干それは違いがあると思います」

橋本弁護人=「善枝さん事件の際の山狩りは消防団の人なども頼んであるわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「山狩りというのは一日何回か同じ地域を何列かの横隊を作ってやるんですか、それとも一回こっきりですか」

証人=「その山狩りの具体的指揮については私共どういう風にやったか記憶はありません」

橋本弁護人=「あなた自身は全然参加していないんですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「被告の石川を逮捕した時にあなたは現場にいましたか」

証人=「いました」

橋本弁護人=「それから、その自宅を直後から家宅捜索をしておりますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「この捜索にも加わったわけですか」

証人=「・・・二度捜索に加わったでしょうか」

橋本弁護人=「そうすると、記録によると五月二十三日逮捕の時と、六月十八日の再逮捕の翌日と、それから六月二十六日ですか、三回あるようですが、どれとどれに加わりましたか」

証人=「第一回と二回・・・・・・一回目はまあ途中から行ったことはありますけどね」

橋本弁護人=「逮捕の時ですね」

証人=「はい。それから・・・・・・二回目に行った記憶がありますね」

橋本弁護人=「あなたが加わった捜索はちゃんと正式の捜索令状を持った捜索ですね」

証人=「はい、その通りです

橋本弁護人=「それじゃ二十三日と六月十八日に間違いないでしょう。この二回が捜索令状を持った捜索ですから」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あなた自身も具体的に手を下して捜索をしたんですか」

証人=「これはたまたま第一回の場合、小島警部が担当したわけですが、第一回の石川一雄の逮捕をし、それから狭山署まで私は行きまして、その後に捜索に行ったという記憶がありますが」

橋本弁護人=「で、自分でもどこか捜したんですか」

証人=「天井などを見た記憶はあります」

橋本弁護人=「天井を見たというのはどういう風にやるんですか。下から上を見るんですか、それとも天井裏という意味ですか」

証人=「ええ、天井裏ですね」

橋本弁護人=「と、上へあがるわけですね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「天井裏全部を見たわけですか」

証人=「全部というわけにはいかなかったですね」

橋本弁護人=「あなたと誰ですか、天井裏にあがったのは」

証人=「・・・・・・私ともう一人誰かいましたですが、私の方が長く見てました」

橋本弁護人=「懐中電燈か何か使うんでしょうね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あなたともう一人誰かと二人ですか、天井裏にあがったのは」

証人=「いや、まあ、私が中心だったですね。あがったもう一人の記憶はちょっとのぞいただけだったですね」

橋本弁護人=「天井裏以外にあなたが捜した場所はありますか」

証人=「あとはどうですか、玄関口から地下足袋を押収したのはいつになっていますか」

橋本弁護人=「二十三日のようですね」

証人=「その時は見ております」

橋本弁護人=「玄関口以外からも押収されているようですけれども」

証人=「風呂場に何かあったように覚えてますが」

橋本弁護人=「風呂場から何か押収したのも目撃しているわけですか」

証人=「いや、それは何か風呂場へ入ったことは。一番正確に覚えているのは地下足袋を押収したことは記憶があります」

橋本弁護人=「六月十八日の捜索の時はあなたも直接手を下して捜索をしたわけですか」

証人=「直接手を下すということではなく、第一回がまあ、相当中へ入って見たという風なことだけで、あとの記憶はちょっとありません」

橋本弁護人=「第二回はむしろ部下の指揮全般をしていたと、そういうことですか」

証人=「これは指揮はあくまでも小島警部が担当しまして、そのあと特にこれという風なことではなく、あとから行ったという記憶はありますが」

橋本弁護人=「六月十八日もあとから行ったんですか」

証人=「いや、それは恐らく行ってないと思います」

橋本弁護人=「最初から」

証人=「最初からだと思います」

橋本弁護人=「あとから行ったのは五月二十三日の」

証人=「ええ、そうです」

橋本弁護人=「それからあなた自身被疑者の取調べにあたったわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「で、あなたの作成名義の供述調書は四通提出されておりますけれども」

証人=「はあ」

橋本弁護人=「数はそんなものですか」

証人=「ええ、そのくらいだと思います」

橋本弁護人=「もう少し作っているということはないですか」

証人=「ないと思います」

橋本弁護人=「正確に覚えていらっしゃらないかも知れないけれども」

証人=「もう忘れましたね」

橋本弁護人=「大体の感じで四より少なかったか、多かったか」

証人=「それが一番正しいでしょうね、あと多いということはちょっと考えられないと思います」

(続く)

○五月二十三日、第一回目の家宅捜索の模様。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。