アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 982

【公判調書3071丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

                                           *

橋本弁護人=「五月二十三日に逮捕されて、再逮捕される六月十七日までの間の被疑者の供述調書の作成者を見ますと、あなたと山下という人と、それから清水という人と、三人おりますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「これも記録で見ますと一番最初は山下という人が調書を作りまして、逮捕当日とその翌日作りまして、それから五月の二十四日から二十八日くらいはずっと清水という人が作って、それからあなたが作っているんですよ」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それからまた清水という人がずっと作っている。まあ大雑把に言うとそういう順序で作っているようですが、それは何かわけがあるんですか」

証人=「特にわけはありません」

橋本弁護人=「被疑者を誰が取調べをするかということはどこで決めるんですか」

証人=「これはまあ捜査本部長ですか、あるいは私共のまあ上級者ということになります」

橋本弁護人=「つまり取調べに一番ふさわしい人を選んで適宜取調べをやらせると、そういうことになるんですか」

証人=「はい、それが適正な言葉だと思います」

橋本弁護人=「先ほど私が言いましたように、取調官が交代するようなんですよね。最初山下さんがやって、清水さんがやって、諏訪部さんがやってまた清水さんがやるという風に見受けるんですが、そういう取調官の交代について何か上級者なり本部長なりから言われておりましたか」

証人=「特に言われませんが、山下警部が取らなくなったというのはこれは病気で、眼底出血か何かの病気がありまして代わったということですが」

橋本弁護人=「山下さんは体の具合ということですね」

証人=「はあ」

橋本弁護人=「あなたがその取調べにあたったのはどういうわけですか、地元の刑事課長だからということですか」

証人=「として、もうずっと石川一雄被疑者のそばに一番いたほうですから」

橋本弁護人=「つまり取調べ調書の上であなたの名前は出てないけれども、取調べの現場にはあなたもずっといたわけですか」

証人=「現場にはおりませんが、連絡指示を受けることが多かったです」

橋本弁護人=「そのあなたに取調官が代わって、あなた自身が調書を作るということについて、先ほど私があなたは地元の刑事課長だからかと問いましたけれども、それ以外に理由があるんじゃないでしょうか」

証人=「特に記憶ありませんですね」

橋本弁護人=「つまりこれは推測になりますけれども、石川を喋らせるのにどうも清水では具合が悪いと、諏訪部がやれと、お前の方が上手だろうということで代わったんじゃないんですか」

証人=「そのようなことはないです」

橋本弁護人=「清水という人も後で青木という人に代わってしまいますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「これは他の証人もどこかでちょっと証言をしたことがありますが、あなた自身はどういう風に聞いておりますか、この取調官の交替について」

証人=「・・・・・・まあ、そこまで考えているような余裕がなかった時代です。ですからまあ、分からないと言ったほうがいいと思いますね」

橋本弁護人=「いや、あなた自身は考えなくても、上級者なり本部長から取調官の交替について何か聞かされたことはなかったですか」

証人=「ありませんですね」

橋本弁護人=「何か清水さんという人は熊谷の二重逮捕に関係した人でしょう」

証人=「ええ、そのようなことは聞いてます」

橋本弁護人=「被疑者以外の参考人から供述調書を取っておりますか、あなたは」

証人=「ちょっと記憶ないですね」

橋本弁護人=「当時の雰囲気としては取ったかも知れないですか」

証人=「取らないというほうが正しいような気がしますね」

(続く)

                                            * 

弁護人の発問の中に「交代」と「交替」という言葉があるが、これは速記録者が弁護人の発問を速記符号で書き取り、のちにこの符号を日本語(国字)へ反訳、その反訳時に「交代」と「交替」という風に書き分けたと考えられる。

公判調書がすべて平仮名で書かれてあれば問題はないのだが、ここで漢字へと変換する場合、使用する漢字が正解(正しい反訳)かどうかという能力が求められ、さらに句読点を打つ場所や、符号活字である「・・・」(中黒・中点)という表現、これなどは点の数に違いが見られ、なぜ数が違うのか、その根拠は、などと疑問が増え出し収拾がつかなくなるが、つまり速記官とは思いのほか高い能力が求められると思われる。

○交代と交替の言葉の違い

「交代」とは、「誰かと誰かが入れかわって役目を引き継ぐ」という意味の言葉である。一方、「交替」とは、「役目をかわるがわる行なう」という意味の言葉である。両者は、役目や位置を入れかえるという同じ意味を持つ言葉だが、一回限りでかわるか、何度も繰り返しかわるかという違いがある。