アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 603

【公判調書1888丁〜】

                  「第三十九回公判調書(供述)」⑬

証人=小堀二郎(三十八歳・埼玉県警察本部刑事部鑑識課勤務)

                                         *

植木弁護人=「そこに添付されている写真は全部あなたが撮った写真」

証人=「はい。字が違いますが」

植木弁護人=「小沼と書いてあるが」

証人=「私です」

植木弁護人=「あなたの、要するに名前を間違えて記載してあるというわけですね」

証人=「そうです」

植木弁護人=「この時は実際には何人で行かれましたか」

証人=「ちょっと、何回も捜索しているので人員は分かりませんですね、記憶にないです」

植木弁護人=「この写真の第二号を見ますと、石川六造さんという人が万年筆を持ったところを写してるんですね、これはどういうわけでこの写真を撮ったか覚えてますか」

証人=「これは立会人か何かになったと思うんですが」

植木弁護人=「立会人になったことはなったかも知れないが、それだけではこういう写真を撮る理由になりませんでしょう」

証人=「これも検証官の指示じゃないでしょうか」

植木弁護人=「あなた傍におられたんだから、どういうわけでそういう指示をしたか、どういうわけでこういう写真を撮るようになったか」

証人=「それはわかりません」

植木弁護人=「あなた自身それを判断できる状態ではなかったんでしょうか」

証人=「やはり指示ですから、判断はこれはあとの問題だと思います」

植木弁護人=「指示した人の判断がどうであったかということじゃなくて、あなた自身の理解としてどういうわけでそういう撮影を命ぜられたかは、あなた自身でも理解出来るわけですね、状況を。一緒にいるんですから、あなた自身の判断としてどういうわけでこういう写真を撮る必要があったかは理解出来るでしょう」

証人=「六造さんが立会人だったからじゃないですか」

植木弁護人=「立会人だったということは普通の捜索にはみんな立会人になるんですから、この万年筆は発見したという万年筆でしょう」

証人=「そうですね、そこに書いてある・・・・・・」

植木弁護人=「発見した万年筆を別に立会人に持たせて写真を撮る必要は特に普通の場合はないわけでしょう。机の上に置いて撮るとか、あるいは発見した場所に置いて撮るとか、そういうことだって考えられるんだけれども、そういう写真を特に立会人に持たせたというのはどういうわけかと」

証人=「当時の状況はちょっと思い出せません」

植木弁護人=「この写真をずっと見ますと万年筆が発見された場所、つまり捜索に行って発見する前にあった場所ですね、その場所に万年筆が置いてある状況、これ自体のは写真がないんですけれども、これはどうしてでしょうね」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

植木弁護人=「一回目だとか二回目の差押調書の写真を見ますと、例えば地下足袋が発見したということになっておりまして、そういう記事があってその収集した後の写真もありますけれども、もともと最初からあった場所の写真も撮ってあるわけですよ、置いてあるそのままの状況のも。そもそも万年筆にはそれがないんで、どうも不思議なんですがね」

証人=「・・・・・・。私もどうもあんまり細かいことについては思い出せないですね」

植木弁護人=「私が質問したようなことはちょっと、確かに変だというような気がしますでしょう」

証人=「そうですねえ」

植木弁護人=「思い出せませんか」

証人=「はい」                                      (以上  沢田伶子)

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昭和四十五年十二月十日       東京高等裁判所第四刑事部

裁判所速記官  佐藤房未

裁判所速記官  沢田怜子

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○この問答は昭和45年、西暦にして1970年に行なわれ、それから53年経った今日、私はそれを目にしているのだが、全く植木弁護人の言う通りであることに納得する。それはつまり、鴨居上に置かれた万年筆を発見したならば、まずその状態を写真撮影し、その後に 家族ではなく、捜査員が手袋を着用の上、速やかに万年筆をビニール袋等に収めるというような、およそ教科書通り手順を踏めば、このような疑義、疑惑を生むことも無かったであろう。写真係は証拠物の押収前、押収中、押収後を撮影しておけばよく、何よりも不可解なことは、万年筆を被告人の兄である六造氏に素手で取り出させた捜査員・小島朝政の意図である。

万年筆を押収し被告人宅からひきあげる捜査員。

(写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)