アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 810 第四十九回公判

事件当時の狭山市上赤坂付近。写真は狭山事件資料より。

【公判調書2505丁〜】

                    「第四十九回公判調書(供述)」

証人=福島英次(五十三歳・警察官=埼玉県警察本部刑事部捜査第一課勤務、巡査部長)

                                            *

裁判長=「証人の警察官としての経歴を尋ねますが、警察官になったのはいつですか」

証人=「まず、昭和十六年に埼玉県警察官教習所に入所しました。そして同年十二月、巡査として大宮警察署に勤務しました」

裁判長=「それからはどうですか」

証人=「昭和二十四年十二月と思いますが、埼玉県警察本部捜査課勤務となり、捜査係をやりました」

裁判長=「どういう犯罪を扱ったのですか」

証人=「凶悪犯罪から窃盗事件までに及びました」

裁判長=「それからは」

証人=「昭和二十六年十二月に巡査部長を拝命、同時に蕨警察署勤務、昭和二十七年七月与野警察署勤務、昭和三十年一月岩槻警察署勤務、昭和三十三年八月所沢警察署勤務となりましたが、仕事内容は蕨警察署勤務以降ずっと捜査主任でした。昭和三十九年四月と思いますが、所沢警察署から現在の勤務に変わりました」

裁判長=「所沢警察署にいる間も捜査主任だったのですか」

証人=「そうです。一般犯罪を扱っていました」

                                            *                              

橋本弁護人=「善枝さん殺し、狭山事件といわれているこの事件が起きたのは昭和三十八年五月一日ですが、あなたは、その時は所沢警察署に勤務していたのですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「あなたはこの狭山事件の捜査に関与したことがありますね」

証人=「あります」

橋本弁護人=「何日から関与しましたか」

証人=「多分五月三日からと思います。各警察署から狭山署に集合しろということで五月三日の朝八時半頃までに集合したと思います」

橋本弁護人=「善枝さんの死体が発見される前から捜査に加わったわけですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「あなたが従事した仕事は、当初どういう仕事だったのですか」

証人=「各戸を巡回することでした」

橋本弁護人=「戸別訪問ですか」

証人=「そうです。各方面別に分かれまして」

橋本弁護人=「目的は何でしたか」

証人=「犯人を捜査するということです」

橋本弁護人=「五月三日現在では、まだ被害者が発見されていませんでしたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「被害者の足取りなどはどうでしたか」

証人=「万般のことが含まれていたと思いますが、私の方は犯人を捜すということが主でした」

橋本弁護人=「犯人はどういう者と想定して捜したのですか」

証人=「まず素行関係の悪い者ということだったと思います」

橋本弁護人=「そうすると、犯人を捜すというよりも一般的ないわゆる聞込みということですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そして素行の悪い者を割り出すということですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それは何日頃までしましたか」

証人=「記憶では三、四日続いたのではないかと思います」

橋本弁護人=「あなたが担当した地域はどの地域ですか」

証人=「初めての土地でしたし、地域は覚えてません」

橋本弁護人=「町うちですか」

証人=「いいえ、農村地帯です」

橋本弁護人=「そういうことはあなたが一人でなく誰かと組んでやったのですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「誰と組みましたか」

証人=「中村さんという人が一緒でした」

橋本弁護人=「名は」

証人=「キチロウ・・・・・・、現在浦和にいます」

橋本弁護人=「当時は」

証人=「川口警察署にいました」

橋本弁護人=「川口警察署の中村巡査とあなたとが組んで聞込みをした、ということですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それは上司の指示を受けてやったわけですね」

証人=「そうです。組み合わせも全部上司の指示です」

橋本弁護人=「上司がどういう地域あるいはどういう所を聞込みしろと具体的に指示しましたか」

証人=「具体的なところはありません。今言ったような区域を与えられただけです」

橋本弁護人=「それは、何々部落というところですか、それとも何々町というところですか」

証人=「地図によってですから、町名は今覚えていません」

橋本弁護人=「そういう聞込みを担当した警察官は何組何人くらいだったのですか」

証人=「応援に召集された者ほとんどがあの付近一帯を聞込みに歩きました」

橋本弁護人=「聞込みは戸別訪問してするわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「どんな質問をしたのですか」

証人=「捜査に参考になることについては何でもです」

橋本弁護人=「訪問する家はあらかじめ決めておくのですか」

証人=「決めてないです。その地域全部に当たります」

橋本弁護人=「軒並み聞いて歩くのですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「あなたの担当地域は軒並み聞いて回ったのですか」

証人=「はい。回りました」

橋本弁護人=「その結果何かめぼしいことが得られましたか」

証人=「特に参考になるようなことはありませんでした。誰がパチンコ屋に行って遊んでいるとか、そういう程度のことで特に直接関係のあるようなことは聞けませんでした」

橋本弁護人=「その聞込みの経過あるいは結果を書面にしたためて上司に提出してありますか」

証人=「はい。回った家の氏名、聞いた人を報告書にして提出してあります」

橋本弁護人=「報告書の日付はどうですか」

証人=「その日にしたことはその日に報告しました」

橋本弁護人=「そうすると、報告書は何通かあるわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「報告書の宛名は誰ですか」

証人=「捜査本部長宛ですから、あの時は狭山署長だったかどうか・・・・・・」

橋本弁護人=「捜査本部長かあるいは狭山署長宛に報告書を出したのですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「合計は何通くらい出しましたか」

証人=「歩いた日数によってですが、そう長い間ではないと思います。四、五日で四、五通のように思います」

橋本弁護人=「その聞込みの次にはどんな仕事をしましたか」

証人=「特命ということをやったと思います」

橋本弁護人=「特命というのは」

証人=「今言ったような聞込みから出てくる不審者とか、これについて更に聞いて来いというようにいわれる特別命令です」

橋本弁護人=「特命というのは特別命令の略ですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「特別命令によって何かの項目を捜査したわけですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「どういう命令を受けましたか」

証人=「特にこれということは現在細かく覚えておりません」

橋本弁護人=「人についてですか、それとも物についてですか」

証人=「物もあり人もあります」

橋本弁護人=「人については何という人か、名前を覚えていませんか」

証人=「忘れました」

橋本弁護人=「特命の対象になった人は何名ですか」

証人=「一、二の人しか覚えていません」

橋本弁護人=「一、二名はいたことはいたのですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それはどういう関係の人ですか。たとえば職業は」

証人=「農業の方です」

橋本弁護人=「あなたが特命で捜査したのは全員農家の人ですか」

証人=「全員がそうではありません。最初は農家の人でした」

橋本弁護人=「何人くらいですか」

証人=「一人だけちょっと記憶があります」

橋本弁護人=「その一人の名前はどうですか」

証人=「覚えていません」

橋本弁護人=「どの地域の人ですか」

証人=「被害者の家の近くの人です」

橋本弁護人=「堀兼というところですか」

証人=「赤坂地区の人と思います」

橋本弁護人=「その人はどういう問題があって調べたのですか」

証人=「多分その人の自宅の前を車が通ったというような聞込みからだと思います。被害者の家と並んでいる家の人だと思います」

橋本弁護人=「その人は参考人ですか」

証人=「参考人です。車の通った時刻は何時頃だろうか、と確かめたと思います」

橋本弁護人=「その人から供述調書を取りましたか」

証人=「供述調書は取らないです」

橋本弁護人=「報告書はどうですか」

証人=「作って出しました」

橋本弁護人=「そのほかの人についてはどうですか」

証人=「これも名前は忘れましたが、雨の降る晩と思ったけども、このような人が尋ねて来て道を聞いた、ということでした」

(続く)