アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 737

(写真は昭和三十八年当時の狭山近郊)

原本番号  昭和四十年(刑)第二六号の三五

速記録  昭和四十六年三月九日 

事件番号 昭和三十九年(う)第八六一号

【公判調書2314丁〜】

                   「第四十五回公判調書(供述)」

証人=梅沢 茂(五十歳・埼玉県警察本部捜査三課)

                                          *

裁判長=「警察官としての経歴を簡単に述べて下さい」

証人=「昭和二十三年拝命して、浦和警察署の巡査です。それから二十八年に巡査部長に昇任しました。同じところです。それから二十九年に与野署に配置換です、やはり巡査部長です。それから三十年に同じ身分で朝霞署です。それから三十一年に狭山署で、巡査部長です。三十三年から県警の捜査一課です、三月でした。それから四十年三月警部補で川口署です。四十二年の三月に現在と同じ捜査三課です」

裁判長=「捜査三課は何をやるんですか」

証人=「盗犯の捜査です」

裁判長=「捜査一課はどうですか」

証人=「当時は、強盗も強姦も、窃盗もやっておりましたが、現在では窃盗は除かれております。あと知能犯関係は除かれます」

裁判長=「強力班と言うのですか」

証人=「そうです」

                                          *

宮沢弁護人=「あなたは、善枝さん殺し事件、いわゆる狭山事件と言っておりますが、この捜査に関与したことがありますか」

証人=「ございます」

宮沢弁護人=「それはいつ頃のことですか」

証人=「当時捜査本部が設置されましたので、捜査本部の方へ行って仕事をしたのが事件が発生してから十日目ぐらいだったと思います」

宮沢弁護人=「事件の発生したのはいつ頃ですか」

証人=「三十八年の五月一日頃と記憶しております」

宮沢弁護人=「すると、あなたが行かれたのは五月の十日ですか」

証人=「十日前後だと思います」

宮沢弁護人=「たとえば犯人を取り逃したというような時にはまだ行っていなかったですか」

証人=「行っておりません」

宮沢弁護人=「十日ぐらい経って行かれて、どういう任務に就かれたのですか」

証人=「私は捜査本部へ行った当初は庶務係、書類整理という仕事をしてました」

宮沢弁護人=「具体的にどういうことでしょうか」

証人=「上司の命によって勤務員の勤務割の代書をしたり、あるいは、いろいろの書類の謄本を作成したりといったことです」

宮沢弁護人=「謄本作成は、具体的にはどういう謄本を作成されましたか」

証人=「捜査本部から県本部、それから科学警察署の方へ報告する文書の作成とか、あるいは雑多な、雑務と言いますか」

宮沢弁護人=「調書の謄本を取るような仕事はされたんですか」

証人=「そういうこともありました」

宮沢弁護人=「これは、被告人の調書とか、参考人の調書、そういうものをとり混ぜてですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「その仕事はどこでされていたわけですか」

証人=「当時、堀兼の市役所の支所でしたか、現場にそういうところがありまして、そこでやっておったんです」

宮沢弁護人=「捜査本部のあった場所で勤務されたわけですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「そこの上司といわれるのは、どなたでしょうか」

証人=「上司は当時、清水警部、大谷木警部、飯塚警視、当時の刑事部長の中さんですね」

宮沢弁護人=「そういう方がおられたんですか」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「あなたは庶務のどういう地位にあったのですか」

証人=「巡査部長ですから、その上に警部補がおりました」

宮沢弁護人=「一番の庶務の責任者ということではないんですか」

証人=「責任者ではありません」

宮沢弁護人=「その直接上におられた人はどなたですか」

証人=「それは現捜査一課におりますが、樫信麿(かたぎのぶまろ)さんという人です」

宮沢弁護人=「その方は、やはり県警本部から来られた方ですか」

証人=「当時、捜査一課におりました」

宮沢弁護人=「警部補の方ですね」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「あなたはその樫さんという方の指示によって仕事をされたわけですね」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「庶務におられたのは、ずっと庶務におられたのですか」

証人=「いいえ、期間はちょっと正確ではありませんが、二週間ぐらいおりましたでしょうか」

宮沢弁護人=「すると、五月の十日頃から二週間、五月の下旬、二十四、五日頃までおられたということですか」

証人=「その頃までいたと思います。その間かなり捜査に出たこともありますが、大部分の仕事は、私の一番の仕事は庶務の仕事です」

宮沢弁護人=「庶務には、あなたの他にまだ何人かおられたわけですか」

証人=「当時の記憶ははっきりしておりませんが、狭山の署員が二、三人おりました」

宮沢弁護人=「すると、樫さんとあなたと狭山の署員が二、三人、それが捜査本部の庶務を担当されたのですね」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「そこは大体、記録の謄写とか整理とか、そういうことをされたんですね」

証人=「記録の謄写、管理、そういったことですね」

宮沢弁護人=「それが主たる任務ですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「それから二週間して、どういう仕事にお就きになったですか」

証人=「聞込みの捜査がありましたし」

宮沢弁護人=「すると、もう一度お伺いしますが、二週間ぐらいして、就いた職務というのは、どういう職務ですか、庶務を外れたわけですか」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「どういう職務に就かれましたか」

証人=「いろいろですね。連絡がありましたし、捜査もありましたし、謄本のような仕事もありました」

宮沢弁護人=「その当時も謄本の仕事があったんですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「すると具体的には、何人がかりというか、どういう」

証人=「そういうことは、決められておりません」

(続く)