アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 740

(被害者の鞄が発見された現場。この写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2321丁〜】

                 「第四十五回公判調書(供述)」

証人=梅沢  茂(五十歳・埼玉県警察本部捜査三課)

                                         * 

宮沢弁護人=「先ほどちょっと仰ったのですが、この鞄発見場所に行く時は、被疑者が書いたとかいう図面を持って行かれたわけですか」

証人=「はい、それも私が持って行ったんじゃなくて、多分、清水警部が持って行ったんじゃないでしょうか」

宮沢弁護人=「その図面は、あなたご覧になりましたか」

証人=「私は別に見ません」

宮沢弁護人=「その図面は、清水警部が持って行ったんですね」

証人=「それも誰が持っていたかは正確には覚えていないですが、とにかく被疑者が書いた図面を持って行ったことは覚えています」

宮沢弁護人=「そのとき清水警部は行ったんですね」

証人=「行ったと思います」

宮沢弁護人=「清水警部とあなた以外に、どんな人がおられたか覚えておられますか」

証人=「それは覚えておりません」

宮沢弁護人=「何人くらい行ったか覚えておりますか」

証人=「四、五人行ったんじゃないかと思いますが」

宮沢弁護人=「どういう人たちですか」

                                          *

裁判長=「先ほどから、そこのところが堂々巡りしてますね、最初に四、五人行ったんでじゃないかと言ってるんですね、最初は、清水は行ったかどうか断言できないという証言があって、それをあなた繰返しお聞きになってるんだが、確認するためにお聞きになることはいいが、あまり同じ質問はですね」

                                          *

宮沢弁護人=「それじゃ次進みます。あなたはそこのところで巻尺で計ったと仰られますね、その時期はどういう時間だったですか」

証人=「それは全く記憶にありません」

宮沢弁護人=「朝か夕方か」

証人=「記憶ありません」

宮沢弁護人=「あなたは先ほど時計のことを仰っておられましたね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「時計の捜索に従事されたことがあるのですか」

証人=「あります」

宮沢弁護人=「それはいつ頃のことでしょうか」

証人=「それも日にちの点はわかりません」

宮沢弁護人=「わかりませんか」

証人=「六月であることは間違いないと思いますが」

宮沢弁護人=「六月のいつ頃か」

証人=「それはわかりません」

宮沢弁護人=「どなたの指示で行かれたのですか」

証人=「それもはっきりしませんが大谷木警部か清水警部のどちらかと思いますが」

宮沢弁護人=「どこへ行かれたんですか」

証人=「狭山市の何というか、地名は忘れましたが、何か、狭い道路ばたです」

宮沢弁護人=「そこで何か特徴的な記憶に残っていることはないですか」

証人=「そうですね、何か、入間川の市街地の方から行って、右側に木のある家がありますね、左側がちょっと低くなっていて、茶畑があります。その付近です。入間川の市街地の方から行って川越の方向へ向かって行きまして、裏通りでしたね」

宮沢弁護人=「入間市田中という場所ではございませんか」

証人=「ああ、そうかもしれません、田中という部落です」

宮沢弁護人=「それは六月の初めか、終わりか」

証人=「その点はわかりません」

宮沢弁護人=「日時の点はわかりませんか、全く」

証人=「全くわかりません」

宮沢弁護人=「裁判所へは提出されておりませんが、検察庁のほうから開示された記録の中に、三十八年の六月三十日前後ぐらいに、捜査報告書と書かれてあるのがあるようですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「何か、そういう書類を書いたことは記憶ありませんか」

証人=「全く記憶ありません。行った記憶はありますから書いてあるはずです」

宮沢弁護人=「その捜索は、あなた一人でされたわけですか」

証人=「一人で行ったことはないですから、必ず複数です」

宮沢弁護人=「それは、どなたと行かれたか記憶ありますか」

証人=「それも記憶ありません」

宮沢弁護人=「捜査報告書によると飯野源治さんという方、これはご存じですか」

証人=「知っております」

宮沢弁護人=「どういう方ですか」

証人=「現在、狭山でやはり捜査係をやっております」

宮沢弁護人=「当時は」

証人=「当時も捜査係です」

宮沢弁護人=「官職は」

証人=「巡査です」

宮沢弁護人=「巡査部長じゃないですか」

証人=「巡査です」

宮沢弁護人=「あなたの方が当時は地位から言えば上だったわけですか」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「それは、飯野源治さんと一緒に組を組んで聞込みとかそういうことをされたんではないですか」

証人=「そういうこともありましたでしょう」

宮沢弁護人=「するとその他に何か時計についてされたことは覚えておりませんか」

証人=「時計については、私、庶務をやっている頃に品触れという書類を作ったんです。私が作ったものです」

宮沢弁護人=「それは後でお聞きしますが、入間市田中のところですね、あなたが言われたところの付近では、具体的に聞込みの他に何かされたことはないでしょうか」

証人=「それも被疑者が書いた図面に基づいて捜索に行ったんだと思います」

宮沢弁護人=「その図面は、いつ頃書かれたものかは聞きましたか」

証人=「それは、わかりません」

宮沢弁護人=「何人くらい行ったか記憶ありませんか。あなたと飯野さんが行ったことは間違いないですが、その他にですね」

                                          *

佐藤検事=「ちょっと飯野という人とこの時に行ったという証言はまだなかったように思いますけれども」

宮沢弁護人=「飯野源治さんの証言にも、そういうあれがありますが」

佐藤検事=「証人はまだそこまで言ってないです。弁護人の質問で、飯野という人を知っておる、飯野という人と一緒に捜査に従事したという話はありましたが、本件の時計のことについて、一緒に行ったかどうかということはまだその証人は言ってないです」

                                          *

宮沢弁護人=「それじゃ変えましょう。あなたは、そこへ捜査に行かれたというのは、いく日ぐらい行かれたか、それは記憶ありませんか」

証人=「一回だと思います」

宮沢弁護人=「一回だけですか」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「すると、その時は、聞込みだけなされたのですか」

証人=「聞込みというか、図面に基づいて時計を捜してこいという命令を受けて行ったんです」 

宮沢弁護人=「具体的にどういうことをされたのですか」

証人=「あの付近を捜したんです」

宮沢弁護人=「具体的に、捜したというのはどういう風に捜したのですか」 

証人=「夏でしたから草が茂っていたから棒を待って行ってこう、やったんです」

宮沢弁護人=「どういう図面か知りませんけれども、図面に基づいてその付近を棒を持って捜したんですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「すると、そこにあるというその図面の周辺は大体あたられたわけですか」

証人=「図面のことですから正確ではないわけですね、図面の通りにやったわけです」

宮沢弁護人=「どのくらいの時間をそこで費やされたのですか」

証人=「それも正確なことは覚えておりませんが、相当念入りにやったつもりです」

(続く)

写真三点は被害者の腕時計が発見された場所。この写真は元来、上、中、下が左、中、右の順でパノラマ写真となっている。