アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 739

【公判調書2318丁〜】

                   「第四十五回公判調書(供述)」

証人=梅沢  茂(五十歳・埼玉県警察本部捜査三課)

                                         *

宮沢弁護人=「あなたは、その鞄の発見場所に行かれたことはあるのですか」

証人=「あります」

宮沢弁護人=「それはどういうことで行かれたんですか」

証人=「正確なことは思い出せませんが、当時、被疑者がその鞄のある場所を書いた略図か何かあったんじゃないかと思いますが、それに基づいて行ったんじゃないかと思いますが、その他に時計を捜しに行ったこともありますね」

宮沢弁護人=「まず鞄からお聞きしましょう。その鞄の所はあなたが単独で行かれたんですか」

証人=「単独ではありません」

宮沢弁護人=「誰と行かれたんですか」

証人=「その点思い出せませんが、単独行動ということは、あり得なかったわけです」

宮沢弁護人=「先ほどあなたは、清水警部の指揮を受けたことがあると仰っておられたですが、何か清水警部の指揮でもって行かれたんじゃございませんか」

証人=「思い出せません、それは」

宮沢弁護人=「その発見した現場はどういう場所だったか覚えておりませんか」

証人=「畑じゃなかったでしょうか、山の近くの畑じゃなかったでしょうか」

宮沢弁護人=「あなたは鞄が発見された場所へ行ったことは間違いないですね」

証人=「行ったことはありますね」

宮沢弁護人=「すると、そこは畑だったわけですか」

証人=「畑だと記憶しております。山ぎわの畑のような記憶があります」

宮沢弁護人=「すると、その時、その発見現場にいた人はどういう人達がいたか、あなたはご存じだったですか」

証人=「さあ、それはわかりません」

宮沢弁護人=「清水警部がいたことは覚えておりますか」

証人=「いたか、いなかったかということは断言出来ませんが」

宮沢弁護人=「あなたの、今残っているかすかな記憶の中には、発見現場は畑の中ということですか

証人=「山ぎわの畑と記憶しております」

宮沢弁護人=「するとその畑のところにあったわけですね」

証人=「そうですね」

宮沢弁護人=「山の中にあったわけじゃないですね」

証人=「畑だったと記憶しております」

宮沢弁護人=「どんな具合にあったのですか。鞄があったその、あなたがご覧になった時ですね」

証人=「はっきりしておりません」

宮沢弁護人=「何人か人がいたことは覚えておりますか」

証人=「行った記憶ありますから、おそらく四、五人いたんじゃなかったか、・・・・・・主任警部以下」

宮沢弁護人=「それは、警察官の方が大部分なんですか」

証人=「その頃、報道人がたくさん来ましたので確かなことは申し上げられませんが、あるいは報道の方が来たかもしれません」

宮沢弁護人=「すると、あなたは今、畑の中に鞄があったと言うんですが、その掘り出すところですか、それは見たわけですか。掘り出すというか何か、あった場所ですね」

証人=「記憶がありません」

宮沢弁護人=「すると、あなたのある記憶というのは、山ぎわの畑の中にあったという記憶ですね」

証人=「そうですね、あったかどうか捜しに行ったことの記憶があるんです、山ぎわの畑へ」

宮沢弁護人=「山ぎわの畑へ捜しに行ったことがあると」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「その、日は覚えておりませんね」 

証人=「覚えておりません」

宮沢弁護人=「すると、鞄が出てきた所は知らないですか、鞄がどこにあったかということは。まあ、畑の中だというんですがね、あなたは鞄が発見された時その場所にいたのですか」

証人=「あの頃は、報道の方がたくさん来るんで、その人は来ないでくれと、そういう作業をした記憶もありますが、現実にどこから鞄を誰が持ち出したという記憶はありません。ただ、その時見つかったという記憶はありますが」

宮沢弁護人=「見つかったのは山ぎわの畑の中ですか」

証人=「私が行ったのがそういう所だからそこだと思います」

宮沢弁護人=「最初のあれと、少しぼやかしてくるんですがね」

証人=「ぼやかすって、現実に鞄をどこから誰が手に持って取り出したか分からないんで、捜しに行ったことは間違いないです。そして何か巻尺で計ったような記憶がありますが」

宮沢弁護人=「巻尺で計った個処はどこですか。さっきあなたが仰られた山ぎわの畑のところですか」

証人=「でしたね」

宮沢弁護人=「あなたと一緒に行かれた人で特に一緒に行かれたというか、その現場にいた人に宮岡さんという方はご存じありませんでしたか」

証人=「警察官ですか」

宮沢弁護人=「いや、普通の人」

証人=「記憶ありません」

宮沢弁護人=「もう一度お伺いしますがね、確認の意味で。あなたが記憶あるのは一体どういうことが記憶あるんですか、鞄について」

証人=「捜しに行って発見した記憶あります」

宮沢弁護人=「発見したというのは、どういうことですか。あなたが直接」

証人=「他の人が見つけたんです」

宮沢弁護人=「その場所は、畑の中ということですね、山ぎわの」

証人=「山ぎわの畑の中だったと思います」

宮沢弁護人=「あなたは、その鞄をその時もご覧になったのですか」

証人=「いえ、私は見ません」

宮沢弁護人=「どうして見なかったのですか」

証人=「他の人が見ているのは見ましたけれども」

宮沢弁護人=「どんな鞄だったですか」

証人=「普通の革の鞄だったです」

宮沢弁護人=「普通といってもちょっとはっきりしませんが、とにかく持って行くのはご覧になったんですね、鞄を」

証人=「なんか、そんなような気がしますね」

宮沢弁護人=「それから、鞄を発見した個処のところに鞄以外に何かあったか、その点はどうでしょう」

証人=「記憶にありません」

宮沢弁護人=「鞄しか覚えてないんですか」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「たとえば牛乳瓶だとか、ハンカチだとか、あるいは三角巾といわれますか、そういう布。そういったものはあなたは記憶ないですか」

証人=「記憶ありません」

(続く)

(写真二点は"狭山差別裁判"第七集=部落解放同盟中央本部・編、部落解放同盟中央出版局より引用)

(写真二点は発見された鞄)

(鞄の下からはハンカチと・・・)

(三角巾が見つかり、さらに・・・)

(牛乳瓶までもが鞄の下から見つかっている。その牛乳瓶、ハンカチ、三角巾に関してだが、不思議なことに石川一雄被告人の自白には一言も出ていないのである。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)