アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 811

裁判記録によると石川被告は夕刻頃、写真左側の内田幸吉方に立寄り被害者宅の場所を尋ねたとされている。

写真中央の道路を数百メートル進んだ右側に被害者宅があるのだが、その家屋敷の造りは両隣と酷似しており、たとえ日中にこの付近を訪ねたとしても即座に特定することは困難であろう。 

通常、類似した物件が立ち並ぶ中、目的の家の所在地を付近の住民に尋ねるという行動は何ら不思議ではないが、本件の場合、その尋ねた人物が寸前に強姦殺人を行ない、その遺体を芋穴に逆さ吊りに隠し、まして脅迫状を被害者宅へ届けようとの、犯行過程のさなかでの行為であることが理解に苦しむところである。

脅迫状を所持している犯罪者が、もっとも避けなければならないその素顔をさらし、届け先の所在地を尋ねたとの捜査当局による主張は、犯行者のみならず一般人から見ても甚だ疑問を感ずるところである。

【公判調書2509丁〜】

                「第四十九回公判調書(供述)」

証人=福島英次(五十三歳・警察官=埼玉県警察本部刑事部捜査第一課勤務、巡査部長))

                                            *

橋本弁護人=「雨の降る日に道を尋ねた」

証人=「雨の降る晩と思いましたが、被害者の名前を聞かれたという人です」

橋本弁護人=「その人の職業はどうですか」

証人=「農家です」

橋本弁護人=「どの地域の人ですか」

証人=「やはり赤坂地区です」

橋本弁護人=「あなたはその人に面会して事情を聞いたのですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それは何日頃ですか」

証人=「それはよほどあとで、五月の二十日を過ぎていたと思います」

橋本弁護人=「五月下旬頃ですか」

証人=「五月下旬頃ではないかと思います。あるいは六月上旬かも知れません」

橋本弁護人=「その人から供述調書を取りましたか」

証人=「いや、私は直接でなく上司と一緒に行ったものですから」

橋本弁護人=「その上司は」

証人=「飯塚警視です。現在は退職しています」

橋本弁護人=「その人の勤務先は」

証人=「本部の交通一課か何かではなかったかと思います」

橋本弁護人=「飯塚警視は供述調書を作成したのですか」

証人=「作成しました」

橋本弁護人=「その人の自宅で聞いたのですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その人の自宅のことで覚えていることはありませんか」

証人=「どの付近でどうだというような図面を私が作成しました。道を聞いた人はどの辺に立っていたと・・・・・・」

橋本弁護人=「道を聞かれた人から説明を受けて図面を作ったのですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その図面はどこにありますか」

証人=「それも提出してあります」

橋本弁護人=「供述調書に添付してあるのですか」

証人=「添付してあります」

橋本弁護人=「被害者の家を聞かれたその人は何歳ぐらいの人でしたか」

証人=「六十歳前後の老人とその奥さんです」

橋本弁護人=「聞かれた人はどういう場所で聞かれたのですか」

証人=「家の土間に降りて、外から聞かれたというようなことでした」

橋本弁護人=「尋ねた人は家の外ですか」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「聞かれた人は土間ですか」

証人=「土間に降りてきて、軒下から聞かれたということでした。その距離などを測り図面を作った記憶があります」

橋本弁護人=「それ以外にあなたが尋ねた人はどうですか」

証人=「もう古いことで忘れましたが、石川被告がもと勤めた家というところに尋ねたことがあります」

橋本弁護人=「何という家ですか」

証人=「東京都内で靴屋さんでした」

橋本弁護人=「そして供述調書を作りましたか」

証人=「はい」 

橋本弁護人=「そのほかはどうですか」

証人=「今思い出せません」

橋本弁護人=「靴屋さんを尋ねた時期はどうですか」

証人=「よほど後のことで、六月に入ってからではないかと思います」

橋本弁護人=「六月の上旬、中旬、下旬のいつですか」

証人=「中旬以前という感じです」

橋本弁護人=「そうすると、あなたの今の証言を整理すると、農家の人を二人、靴屋を一人、三人について特命を受けて尋ねたということはあるわけですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「三人だけということはないでしょう」

証人=「そんなことはないと思います。そのほかにも地域的な聞込み以外に同じような聞込みを被害者近辺からしていると思います。被害者の兄弟にはたびたび会いました」

橋本弁護人=「その前に被害者の住居の近隣の聞込みをしたのですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「時期はいつ頃ですか」

証人=「最初の聞込みが終わってそののちと思います」

橋本弁護人=「最初の聞込みは五月三日頃から四、五日間で、その後ですか」

証人=「はい。それに引き続いてやったと思います」

橋本弁護人=「地域で言うと赤坂付近ですか」

証人=「はい。道が真ん中にあり、その両側を歩いたと思います」

橋本弁護人=「それで、聞込みの結果得たことがありますか」

証人=「特にこれというのは無かったように思います」

橋本弁護人=「被害者の家の付近の聞込みをする目的は何でしたか」

証人=「誰かがやった後、再聞込みをするということで、同じような目的で特にあの付近をもう一度やれということだったと思います」

橋本弁護人=「被害者の家の付近の聞込みをやれということの目的は何だったのですか」

証人=「その辺で見かけた者はないかとか犯人の足取りということが重点ではないかと思います」

橋本弁護人=「被害者の家の事情あるいは被害者の怨恨関係などもありましたか」

証人=「それらも当然含まれると思います」

橋本弁護人=「何か聞き出したことはありますか」

証人=「それをやっている時かその後です、先ほど言ったこんな人が尋ねて来たというような話を聞いたのは。それは私が聞込みに歩いていて聞いたのではなく、捜査幹部の方からの話で、あの付近を回っていたんだから行けということで行ったのです」

橋本弁護人=「あなたの聞込みで特に関連のあることを聞き出したことはありませんか」

証人=「特に記憶ありません」

橋本弁護人=「その後、中田栄作の家が狙われる事情についての聞込みはありませんでしたか」

証人=「特に記憶ありません。無かったように思います」

橋本弁護人=「たとえば中田さん方の金回りというような事などはどうですか」

証人=「一応何かの役をやったような家で、見ても裕福そうに見える家だというような感じは持ちました」

橋本弁護人=「感じでなく、聞込みはどうですか」

証人=「財産がどのくらいあるという具体的なことは聞き出していません」

橋本弁護人=「その聞込みも誰かと一緒にしたのですね」

証人=「そうです。斉藤部長と一緒でした」

橋本弁護人=「斉藤だれですか」

証人=「留吉ですか・・・・・・」

橋本弁護人=「留五郎では」

証人=「そうです。当時飯能から応援に来ていました」

橋本弁護人=「その人と二人で再聞込みをしたわけですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「やはり報告書を作成しましたか」

証人=「はい。やはり提出してあります」

(続く)