事件当時の被害者宅。写真は狭山事件裁判資料より引用。
【公判調書2515丁〜】
「第四十九回公判調書(供述)」
証人=福島英次(五十三歳・警察官=埼玉県警察本部刑事部捜査第一課勤務、巡査部長))
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橋本弁護人=「被害者の兄弟に会って事情を聞いたと言いましたが、それは誰ですか」
証人=「中田さんですが、名前は記憶していません」
橋本弁護人=「男ですか女ですか」
証人=「兄さんと姉さんです」
橋本弁護人=「時期はいつ頃ですか」
証人=「被害者が当時持っていた教科書とかその他の物について、どういう物を所持していたかというようなことを聞きに行ったのであって、時期は早かったです」
橋本弁護人=「所持品全部について聞いたのですか」
証人=「全部ではありません。当時持っていた教科書を主に聞きました」
橋本弁護人=「教科書について聞いたのはどうしてですか」
証人=「無くなっておりますから。本部のほうで、時計はどういう物だとか万年筆はどういう物だとか本部員の方が大体聞いているわけですが、まだあの点が分からない、この点が分からないというのを確かめて来いということで、全般に渡ってではなく、特にはっきりしない物を補助的に聞いたのです」
橋本弁護人=「主として教科書についてですか」
証人=「教科書の点は覚えています」
橋本弁護人=「そのほかは」
証人=「それ以外のことはちょっと覚えていません」
橋本弁護人=「主として教科書について尋ね、その結果供述調書を作成しましたか」
証人=「報告書を作りました。持って行った物はこういう物、家に残っている物はこういう物だと」
橋本弁護人=「教科書が発見される前ですね」
証人=「前だと思います。何を持って行ったかという点が不明なので家に残っている物と照らし合わせて再調べをして来い、ということでした」
橋本弁護人=「教科書以外について説明を聞いた覚えはありませんか」
証人=「いろいろ質問もし、聞いたことはあると思います」
橋本弁護人=「たとえば筆入について聞いたことがありますか」
証人=「その点は特に記憶ありません」
橋本弁護人=「財布についてはどうですか」
証人=「聞いたような記憶があります。どういう色の物か、どの程度の大きさの物か、それは覚えています」
橋本弁護人=「どんな返答かありましたか」
証人=「ピースの箱か何かを出して来て、こんな様な色だということであり、大きさもこのくらいの物だというようなことを言ったと思います。それを図面に書いて報告書に付けたと思います」
橋本弁護人=「財布の口の止め方はどうでしたか」
証人=「チャックだったと思います」
橋本弁護人=「そのとき一緒に行った人は誰ですか」
証人=「当時も現在も熊谷警察の高嶋巡査です」
橋本弁護人=「物についてのそれ以外の聞込みはどうですか」
証人=「特にないように思います」
橋本弁護人=「あなたはスコップについて実況見分調書を作っていますね」
証人=「はい」
橋本弁護人=「スコップ以外に捜査したものはありませんか」
証人=「記憶にありません」
橋本弁護人=「たとえば地下足袋、棍棒などについてはどうですか」
証人=「私は捜査しませんでした」
橋本弁護人=「スコップについて実況見分したことは一審で証言していますね」
証人=「はい」
橋本弁護人=「発見者は須田ギンという農家の奥さんですね」
証人=「はい」
橋本弁護人=「スコップの実況見分をしたのはどういうきっかけからですか」
証人=「発見されたのでお前実況見分をやれというような命令を上司から受けて行きました」
橋本弁護人=「現場に行ったのはあなたと誰ですか」
証人=「狭山署員数名が行きました」
橋本弁護人=「あなたが責任者ですね」
証人=「責任者ということではありませんが、実況見分調書を作るについての責任者です」
橋本弁護人=「実況見分の責任者は誰ですか」
証人=「調書を作る者が責任者になっています」
橋本弁護人=「するとあなたがやはり責任者ですね」
証人=「はい」
(・・・・・・問答はこの後も続くが、その焦点はスコップへと移ってゆく)