アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 703

(被害者の遺体を発掘する埼玉県警機動隊員ら。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2213丁〜】

                   「第四十四回公判調書(供述)」

証人=大野喜平(六十歳・会社員)

                                         *

橋本弁護人=「それでは実況見分調書について聞きますが、あなたの作成された実況見分調書の記載の順に従ってお聞きしていきたいと思いますが、五月四日付証人作成の実況見分調書の第三項は『死体発掘の状況』ということが書いてあるんですが、でこの中に、こんな風に書いてあるんですよ。

『(1)現場の土質は黒色の柔らかい土で機動隊員が発見し、引続いて発掘し始めた穴を更に掘り下げるに古い茶の木の葉やビニールの汚れた紙片等が土にまじって掘り出されたが伝々』

こういう風に書いてあるんですが、古い茶の木の葉という風に書いてあるんですが、このことについて聞きますが、どんな茶のどんな葉がどれくらいあったんでしょうか」

証人=「それはですね、掘った穴の脇が茶の木のさくになっておりました。で人間が入るくらいの穴ですから、相当な土を一旦そこに上げなければ土は掘れません。そこで、それを上げたんですね、ですからそれを埋めた時に茶の葉は厚いですから、それの枯れたものやなんかが掘ったものだけをそのままきれいに入れたものじゃなくて、その馬道と俗に言うその道路程じゃないが、そのすぐ傍に茶のさくになっててその根元のほうから掻き込んだものの中に厚葉のものが多少古いものでもそれが入ったというような、私のこれは感じです」

橋本弁護人=「その次にビニールの汚れた紙片と書いてあるんですが、これはどういうものでしょう」

証人=「これは出たから現実のまま書いたんですが、やはり、袋と書いてありますか」

橋本弁護人=「紙片です」

証人=「紙片ですね。それは私の感じで、農家が冬、苗なんかを作ったときビニールの、こう竹かなんかに被した、よく温室というか暖かく栽培するそういうものの破けたものが、千切れたものが風が吹いて茶のさくの方に引っかかっていたもののように思うんです」

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裁判長=「もういっぺん言って下さい。今のビニールの汚れた紙片があったという説明を」

証人=「まあこれ想像じゃいけませんが、ビニールが少し固くなって千切れたものが掘り出したものの中に茶の葉と一緒に出たんですが、それは野菜などを栽培する時に、農家が篠か何かを山形にして保温をするために使ったものが散乱したものが茶株につっかかっていた、それを埋めた時にそれを一緒に埋めたから、私が掘り出した時に一緒に出たんだと、こういう感じであります。出たことは事実なんですから」

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橋本弁護人=「そういうビニールが出たことは間違いないんですね」

証人=「ええ、出たんです。茶の葉と一緒に」

橋本弁護人=「それは写真で見ますと死体の近くから出ておりますようですね」

証人=「・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「このビニールを写真に撮りましたね」

証人=「・・・・・・・・・一枚ぐらいあるんじゃないでしょうか」

橋本弁護人=「撮ったことは事実ですね」

証人=「撮ったと思うんですけれども」

橋本弁護人=「そのビニールが死体の脇にあったんじゃないですか」

証人=「それは茶の葉等とそういうものが断片的なものが出たからそれを気付いて一応文書に留めたんですが、一つ二つじゃないんです。茶の葉と一緒に土に混じって出たからこれを記録に留めたということなんです。順序としては」

橋本弁護人=「土に混じって出たんでしょうけれどもビニールの布はこれ一枚じゃなくて他にも出たと」

証人=「細かいものがあったですね。一枚じゃないです」

橋本弁護人=「ビニールといいますが、これは元々どんな色彩のものですか」

証人=「まあ透明なものが長年風雨にさらされたから曇ってしまったというような感じのものですね」

橋本弁護人=「大きさはどの程度ありましたか、沢山出たといいますから、大きさといっても答えにくいかも知れませんが、あなたがこの実況見分調書に書いているのは」

証人=「手のひらくらいの面積の千切れた紙片が何枚か出てますね、その土を掘る土の中に混じってあったということなんです。私の掘り出した経過として記録に留めたんですから」

橋本弁護人=「何枚くらいですか」

証人=「それはわからんですね、それほど気にしませんから土と一緒に出たものですから、ただそういう情景があったということを記録に留めたわけです」

橋本弁護人=「しかしあなたの記録を見ますと何枚か出たようには書いてないんです。あたかも一枚出たような感じですし、写真も私の見るところ一枚しか写ってないようですが、それであったとすればそれでいいですか」

証人=「私の感じとしては小さいものが何枚か出てます」

橋本弁護人=「あなたの実況見分調書をもう一度読んで見ますと『穴を更に掘り下げるに古い茶の木の葉やビニールの汚れた紙片等が土に混じって掘り出されたが』とこう書いてあるんです」

証人=「だから、"等"がと複数じゃないですか」

橋本弁護人=「そうするとビニールの汚れた紙片に、この"等"は係っているんですか」

証人=「ええ。等というのは複数に私は表現したつもりでした。一枚とあなたは仰るけれども、等というのは複数を私は意味します」

橋本弁護人=「私は、上の古い茶の木の葉やビニールの汚れた紙片に、両方に係って、等(など)は係っているんだと思いました。文章の体裁から言うと」

証人=「まあ国文学者じゃありませんけれども、等というのは数枚出たという感じを私としては表しているんです」

橋本弁護人=「ではどうして明瞭に数枚のビニール紙片が発見されたと記載しなかったんです」

証人=「・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「まあ、あなたと論争しても仕方ありませんが、死体の発見現場ですからね、どんな細かい事項でも精密に記載しておらなければ後で真実の発見がむつかしくなるでしょう」

証人=「・・・・・・・・・」

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(続く)