アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 704

(五月四日、当時の入間川駅近くの畑の中の農道から被害者の遺体が発見された。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2216丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」

                                         *

裁判長=「『引き続いて発掘し始めた穴を更に掘り下げるに古い茶の木の葉やビニールの汚れた紙片等が土に混じって掘り出された』、古い茶の木の葉や、というのは茶の木の葉が一枚とは書いてない、茶の木の葉もおそらく何枚もあったでしょう。しかしそういう風なところはやっぱり相当微妙な点があるけれども、そう正確を期し得られないかとも思いますが、証人が大したものじゃないと思ってやったんだから、大したものじゃないと思ったのが証人の手落ちであったという非難はあるかも知らないけれども、書いたことの解釈を今、それぞれ議論してみても直接の効果は得られないんじゃないでしょうかね」

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橋本弁護人=「書いたことについて議論するつもりは毛頭ありません。問題は現実にビニールの紙片が複数に出たのか一枚ぽっきり出たのか確認したいんです」

証人=「複数に出ました。それは記憶あります。何枚かとはっきり言われてもお答え出来ませんが、確かに何枚か出ました」

橋本弁護人=「(実況見分調書添付写真五八六丁十一号写真を示す)そこに写っているのはビニールのあなたの仰ってる紙片のようですが」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「よくその写真を見て下さい。そのほかにもあなたの仰る別の紙片が写っておりますか」

証人=「写ってないと思います」

橋本弁護人=「そこには一枚だけですね」

証人=「そういうことです」

橋本弁護人=「それから今写っているビニールの布は死体のあった位置から見るとどの辺になるんでしょうか。頭とか足とかそういう風に言って下さい」

証人=「写真を撮った方向によって違いますからね、はっきり言えないですね」

橋本弁護人=「死体の頭部の部分ではないですか」

証人=「頭部のほうのニュアンスです」

橋本弁護人=「ニュアンスですか」

証人=「ええ、ほかの比較対象物がないから方向はわかりません」

橋本弁護人=「(同じく五八四丁九号写真を示す)この写真を見て思い出して下さい。今のビニールの切れ端がどの辺にあったかを確かめたいんです。あなた頭部のほうのニュアンスだと言うから、頭の脇にあったんじゃないんですか」

証人=「弁護人の仰るのと同じように思います」

橋本弁護人=「ビニールの大きさは今写真に写っていたビニールの大きさはどれくらいありましたか」

証人=「それは記憶ははっきりしないですね」

橋本弁護人=「大きさは測ってみませんでしたか」

証人=「いや別に掘り出したあとに残ったものでありまして、それは私は記憶ありません。もっと小さいものは途中の経過において一緒に出たと思っております」

橋本弁護人=「それで今の十一号写真に写っていたビニールと、あなたの仰る小さなビニールというのは同じようなものですか、別な系統のものですか」

証人=「異質のものじゃないです。同じような風化されたものです」

橋本弁護人=「同じように見えたということですね」

証人=「ええ、曇ってしまっているんです」

橋本弁護人=「十一号写真に写っているビニールは押収しましたか」

証人=「してないつもりです」

橋本弁護人=「どうしてですか」

証人=「事件にそう関係がないんじゃないかという私の気持から押収してないと思います。領置してないと思います」

橋本弁護人=「そうするとまた埋めちゃったということですか」

証人=「そうですね、それははっきりしていると思いますね」

橋本弁護人=「この実況見分の責任者はあなたですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「あなたの判断で事件に関係がないと思えば領置はしないと、こういうことなんですね」

証人=「そうですね」

橋本弁護人=「関係があると思えば領置をすると、逆に言うとそういうことになりますね」

証人=「と、思えば、関係あればしますね」

橋本弁護人=「あるかないかその時は分からんでしょう」

証人=「あるかなという疑いがあればするということですね」

橋本弁護人=「この死体発掘の現場から出た物で押収しなかったものはほかにありますか、今ビニールはしなかったということですが、そのほかに何かありますか」

証人=「ないように思いますね」

橋本弁護人=「と、ビニール以外は全部事件に関係があると思ったから押収したと、こういうことになりますか」

証人=「そういうことでしょうね」

橋本弁護人=「それでは次に行きますが」

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裁判長=「茶の葉がさっき出たと言ったね、ビニールと一緒に。これは押収されてあるんですか、ないんですか」

証人=「してません」

裁判長=「そうすると、今言ったのはビニールの紙片以外は全部押収したようにも聞こえるような答えをしたんですが、それは正確じゃないね」

証人=「それは、土と同じに、私は、土に混じった茶の葉というのでいわゆるそれは私は土の一部分として考えて別の物体とは考えませんでした」

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橋本弁護人=「念を押しがおきます(原文ママ)けれどもビニールの大きさですね、写真に写ってるものについてあなた測らなかったと言いましたね。自分の手に取っては見たんですか」

証人=「手に取っても見ませんでした」

橋本弁護人=「取っても見なかった」

証人=「掘り出したあとにあったものは取っては見ませんでしたね」

橋本弁護人=「写真を見ますとかなり大きい感じですね。かなり大きいといっても不完全な表現ですけれども表現のしようがないからそう言うんですが、相当大きな目立つもののように思いますがね、あの写真から見ますと、それをあなたは手にも取って見なかったと、こう仰るわけですね」

証人=「・・・・・・・・・」

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(続く)