アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 702

(被害者の手を縛っていた手拭い。五十子米穀店が年賀用に配ったもの。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2211丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」

証人=大野喜平(六十歳・会社員)

                                         * 

橋本弁護人=「私が承知している範囲では奥富たかしという子供が目撃したという新聞報道があるんですよ、記憶にのぼって来ますか」

証人=「ええ、記憶があることはありますね」

橋本弁護人=「奥富たかしという子供に会った記憶はあるんですね」

証人=「小学生ですかなあ、それは・・・」

橋本弁護人=「小学生か中学生のようですね。そういう者に会って事情を聞いたことはあるんですね」

証人=「あるように思うんですね。はっきりしませんが」

橋本弁護人=「それ以外に思い出すことはありませんか」

証人=「非常に長期間にわたってますから、期間も経過しておりますから具体的にこれこれこれと言われてもちょっとお答え出来ないですね」

橋本弁護人=「何か、物の出所、手拭いとかタオルとか棒切れとかいろいろありますね、こういう物の出所などについて聞込みをやったことはありませんか」

証人=「手拭いの出所について少しタッチしたことはありますね、捜査に」

橋本弁護人=「タッチしたことあるというのは聞込みをやったということですか」

証人=「そういうことですね」

橋本弁護人=「そうすると、あなたの思い出せるのはその二点くらいですか。子供に会って事情を聞いたのが一つと、手拭いの点について聞込みをやったということと、あとは何かありますか」

証人=「そうですねえ」

橋本弁護人=「それに先ほど私が冒頭に述べた実況見分調書の作成に従事したと」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その子供に会ったというのはどういう事項についてですか。誰を目撃したということでしょうか」

証人=「かすかな記憶ですが、被害者を見たとか見ないとかいうようなことらしいんですね」

橋本弁護人=「子供の名前は」

証人=「今、弁護人に言われてそういう風な名前だったと思い出したんです」

橋本弁護人=「その被害者を目撃したという地点、その地点はどこでしょうか」

証人=「それは何かあとになって信憑性がないような風になったように思うんですが」

橋本弁護人=「信憑性の有無は別として、あなたの聞いた時その子供はどこで被害者に会ったと言ったんですか」

証人=「まあ正規の広い通りじゃなくて裏側の方のように思うんですね」

橋本弁護人=「地名で言うと」

証人=「地名はよく・・・・・・私、忘れました」

橋本弁護人=「子供の住いはどの辺でした」

証人=「・・・・・・・・・、住いは言わなかったですね」

橋本弁護人=「住いを聞いたでしょう。子供からどの辺に住んでおるかということを」

証人=「聞いたかも知れませんが、住いに行ったわけじゃないし、住いは知らないですね。生徒であると、中学の低学年か小学生くらいの子供ではないかというような、弁護人に言われて名前も思い出したんですが」

橋本弁護人=「その子供にはあなたは会って、子供から直接事情を聞いたでしょう」

証人=「会ったように思うんです」

橋本弁護人=「その子供の供述調書を作成したでしょう」

証人=「ように思うんです」

橋本弁護人=「その件について捜査報告書は作成したんですか」

証人=「・・・・・・・・・まあ、或いは、私個人でないグループでやっていることがありますから、従事したから必ず私の名で出ているかどうかということも確信はございませんです」

橋本弁護人=「捜査報告書を作ったかどうか」

証人=「私の名で出てるかどうかということが疑問だということです」

橋本弁護人=「もし作ったとすれば大体、何月頃、何月何日頃でしょうか」

証人=「正解な記憶はありませんね」

橋本弁護人=「五月、六月と分けますとどっちでしょうか」

証人=「五月に入るでしょうね、と思いますね」

橋本弁護人=「それから先ほどの手拭いの件ですが、それについても捜査に従事したことがあると、これについては捜査報告書供述調書、そういったものを作成した事実はありますか」

証人=「専門的にそれに従事しませんでしたから、出所である精米所に行ったことはありますね、これは記憶あります」

橋本弁護人=「行って事情を聞いたということでしょう」

証人=「そういうことですね」

橋本弁護人=「それを調書に作成したか、或いは捜査報告書に作成したかどうかは」

証人=「それは書類を作成して出してはいないように思いますね」

橋本弁護人=「複数で行ったんですね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「どんな事情を聞いたんでしょうか」

証人=「まあ・・・・・・」

橋本弁護人=「精米所に行ってどんなことを聞いたんでしょうか」

証人=「まあどのようにその品物が出てるかというようなことを聞いたようにも思うんですね」

橋本弁護人=「手拭いの作成された状況ですか」

証人=「作成というか、一般に出したようなそういう風なことを主人に聞いたように思うんですね」

                                          *

(続く)

・・・結論から言えば、奥富たかし君の証言は警察側により揉み消されてしまっている。彼は、被害者となった一学年上の中田善枝を学校の行事などで見知っており、五月一日、彼女が事件の被害に遭ったという事実を知り、事件当日、関自転車屋付近で見かけたことを自ら述べたのであった。しかし警察側にとって、奥富君がそこでその時刻目撃したという証言は、石川一雄被告が事件には無関係だという証明になりかねず、したがって奥富たかし君の目撃証言はあてにならないとし、揉み消したと、こう私は考察するのだ。もし奥富氏が御存命ならば、是非とも見たままを語って欲しいと願うのだが。