アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 714

【公判調書2251丁〜】

                 「第四十四回公判調書(供述)」

証人=大野喜平(六十歳・会社員)

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石田弁護人=「狭山警察署がある場所と、小谷田という付近の字(注:1)と言いますか、部落の名前と言いますか、その場所とは相当遠いところですか、比較的近いところですか」

証人=「入間市から近いんですがね、狭山警察からですと五、六キロあると思います」

石田弁護人=「狭山警察署の所在地と五、六キロぐらいの地点にあると」

証人=「あると思います。入間市管内ですが」

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橋本弁護人=「先ほど、実況見分調書付属の領置調書について聞きましたが、私、聞き落としまして、あなた領置調書二通作っておりませんか。二通というのは別の種類のもの二通、先ほどの実況見分調書には甲乙と二つ付いておりますがね、更に、もう一種の領置調書を作成しておるんじゃないですか」

証人=「甲、乙というのはあれですよ、そういう意味じゃないですよ。私現職はずれてちょっと長くなりますが、甲というのは任意提出の形式によって甲と乙の表示に分かれるように記憶してますが、ちょっと、はっきり言い切れませんが」

橋本弁護人=「そのようですよ。任意提出されたものは甲で、そうでないものは乙で領置しておるんでしょう」

証人=「そういう形をとっているんです」

橋本弁護人=「それはいいんですが、更にもう一通作成しておるんじゃないですか」

証人=「甲乙以外にもう一通作成しておるんですか」

橋本弁護人=「(記録第二冊、六三〇丁の昭和三十八年五月四日付司法警察員大野喜平作成の領置調書乙、及び、六三一丁の同日付同人作成の領置調書甲を示す)」

証人=「これ以外に作ったということですか」

橋本弁護人=「そうです」

証人=「これ以外には作らんです。作ればここに、記録に綴じるという私の考え方です、作れば」

橋本弁護人=「(記録第四冊の二、一〇九三丁の昭和三十八年五月四日付司法警察員大野喜平作成の領置調書乙を示す)そこに大野喜平と署名して捺印してますね、あなたの筆跡ですか」

証人=「私の筆跡です」

橋本弁護人=「じゃ、あなたが作ったものでしょう」

証人=「それがこっちの書類とつながってませんか」

橋本弁護人=「つながっていないんです。それだけぽつんとあるんですがね」

証人=「実況見分調書にこの言葉をうたってないですか」

橋本弁護人=「うたっているかどうかは、調書を読んだだけでは分かりません」

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裁判長=「さっき、弁護人に問われたでしょう、調書には書いてあるのに、領置には書いてないと言われたときに、答があなたうまく出来なかったんだよね」

証人=「つながっているということがそこにございませんでしょうか」

裁判長=「そのとき、あなたは答がうまく出来なかった。これを弁護人が今、捜し出して見ると、これもやっぱり五月四日付で作られたような体裁なっておるが、これにはビニールの風呂敷が一、棍棒長さ九十四センチ、中央の太さ一・一センチのものというのが二として領置になっておる、乙としてね」

証人=「はい」

裁判長=「だから、これを弁護人が言われるんでしょう」

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橋本弁護人=「私が聞きたかったのは、あとでご覧になった調書があなたが作成したものであるということが確認できれば私の質問は終わります」

証人=「私の手筆であることは間違いありません。ただ編纂が変な風になってますね」

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裁判長=「さっき、あなたは作らないとは言わなかったんですね」

証人=「それがですね、追及されると、もし、無いとすれば変だと思っているんですが、つながりがないんです」

裁判長=「さっきの調書はどうなっていましたか。ほかの人が押収したかも知れないというようなことを言ったんですがね」

証人=「私の方は無ければという意味なんで」

裁判長=「それは結局あって、実況見分調書の通りになったんだからいいでしょう」

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山梨検事=「原審でですね、あなたは証人で尋問を受けている、そのくだりのところには、何か高橋部長の検分時の発見報告を書面に提出、記録に添付されてあるということが書いてあるんですがね、芋穴の関係について」

証人=「と思うんですがね」

検事=「その高橋部長というのと、今の領置の関係が何かあるんじゃないですか」

証人=「ちょっと、伝聞的な面があったからちょっと私がお答えに迷ったんです。最初からそれを見つけていれば、それを自信を持ってお答え出来たかもしれません。そこに高橋部長という人の名前、忘れましたが、伝聞であったが故に、質問に対して多少ぐらついた面があるということをご了解いただきたいんですが」

検事=「今、あなたの考えとしては、記録の綴り方が少しおかしいんじゃないかという弁護士さんの質問なんですがね、それについてどういう風に考えるわけですか」

証人=「記録の編纂に私の落度が多少あったということは仕方がないですね。編纂の上において、領置したと現に書類がありますから。ただ、何か綴じ方が変なところに綴じたんですね」

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裁判長=「一〇九三丁にあるんで、さっきのは、だいぶ前にあることはあるんだが、一〇九三丁の前には足跡の鑑定書が付いておる、で、筆跡の鑑定書が九六〇丁にあって、で、結局この経緯は分かったことになるわけです」

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山梨検事=「そういうことです」

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裁判長=「証人は明らかに実況見分調書にはちゃんと領置したと書いてある。ただ、そのくっついたものになかった。だから、これは原審検察官があるいは、どういう考えで一緒にくっつけて出さなかったか、そういう問題があるわけじゃないですかね」

山梨検事=「それから芋穴の実況見分というのは、また別に、独立して誰かが作ったんですか、あなたが作っただけですか」

証人=「私はその、今、名前忘れたんですが、高橋部長の何らかの書類が記録に残っておると思うんです。思うということぐらいしか言えないですが、何か、その発見したことに対する処置の状況は報告書か、あるいは見分形式か何かで記録が残っておるように思います。それを更に死体の解剖が終わってから私は計ったように思います」

昭和四十六年三月十五日      東京高等裁判所第四刑事部

裁判所速記官 沢田怜子

裁判所速記官 佐藤房未

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(注: 1)「字」=あざ。もともと農山村だった地域を記す住所。

「大字(おおあざ)」・「字(あざ)」に分けられ、「大字」は江戸時代の村を継承した範囲・地名で、「字」は「大字」より小さい集落のまとまりに付けられる地名。

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○次回より法廷は第四十五回公判に入るが、その間に、関係者から以下の書類が法廷へ提出されている。

(上二点ともに公判調書2255丁)

(公判調書2256丁)