アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 708

(被害者の両足はこの木綿細引紐で縛られており、その一端は荒縄につながっていた)

(写真三点は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

 

【公判調書2228丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」

証人=大野喜平(六十歳・会社員)

                                         *

橋本弁護人=「死体の両足に同じような紐で、やはりひこつくし様に結ばれておったんですね」

証人=「はい、そうです」

橋本弁護人=「(東京高等裁判所昭和四十一年押第一八七号の七、麻細引紐を示す)これ見て下さい。これが死体にあったものですか」

証人=「そうですね」

橋本弁護人=「先ほど仰った蛇口はどこにあるんでしょうか」

証人=「それは全体がですね、さっきやったように」

橋本弁護人=「これはあなたが二回目、自ら実証したようなあれですね」

証人=「はい。蛇口を作っていないようなですね(このとき証人は別の紐を用い、結んで見せて)。この方法ではないか、と思うんですが」

橋本弁護人=「そうのようですね。こういう結び方をひこつくし様と言うんですか」

証人=「引っ張れば詰まるし、緩めれば緩むから、ひこつくし様と私はそういう風に記述しました」

橋本弁護人=「この部分について、あなたが記述しておるビニールの風呂敷、この風呂敷に紐んだ(注:1)部分、ここに麻縄の結び玉が出来ておりますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「これは何か特異な結び方ですか」

証人=「それほど特異というほどでもないように思いますが、一端を動かないように結び目を作っておりますから、これ以上こないから、こんなのも、そう特異というほどでもないと思うんですが」

橋本弁護人=「次はですね、荒縄がありましたね、死体に」

証人=「はい」

橋本弁護人=「死体に付着しておりました荒縄は全部押収しましたか」

証人=「全部押収しました」

橋本弁護人=「その長さを計りましたか」

証人=「長さは計りました」

橋本弁護人=「全部の長さですか」

証人=「計りました」

橋本弁護人=「何メートルありましたか」

証人=「数字は記憶ありません」

橋本弁護人=「実はあなたの調書に縄の長さの計測が書いてあるんですけれども、これを読んでもよく分からないんですがね。ちょっと読んでみますとね、『足を縛った木綿細引紐に接続する前記荒縄は俵の外し縄様のもので、二本を二重に折って四本合せとしたもので、太さ直径一.五センチくらいのもの八本、一.三センチくらいのもの一本、一本の長さは四メートル内外のものをつなぎ合わせたもので、その四本は六.九メートルのもの一本、六.七五メートルのもの一本、五.五八メートルのもの一本、四.八〇メートルのもの各一本である。荒縄はそのほか、長さ一.七五メートル、太さ直径一ないし二センチくらいのもの三本でつないであるもの一本であった。なお、荒縄は甚だしく濡れていて泥で汚れていた』こういう風に記載されておるんです。そして、この記載とあなたの作成した押収品目録との記載がどうも正確に一致しないようですね」

証人=「どういう点が一致しないんでしょうか」

橋本弁護人=「押収品目録の方には『荒縄(四本合せ)長さ六.九〇メートルないし四.八〇メートル太さ一.五センチ(直径)一本、荒縄長さ一.七五メートル、太さ直径一.二センチ一本』と書いてあるんです。従いましてね、こちらで計測した縄の長さと、それから、実況見分調書の方で、どういう風に計測するかよく分かりませんが、縄の長さと合わせましても、どうも合わないんですね。数字が」

証人=「何本も合わしてありましたからね、何本も合わしたものを束ねたものなんですね、強くするために束ねたような」

橋本弁護人=「合わせてあるわけですね」

証人=「何本もあるものをつないだ、太さの違うものをつないだものを、更にまた四本くらいに、こう長いものにしてあったんですね。ですから計り方によると、それは表現において多少どうか知りませんが、そのときはそういう風に非常に太さや長さが違うものが・・・・・・」

橋本弁護人=「あの、結構です。要するにあなたは死体に付着しておった荒縄を全部押収して、それを検察庁に送致してあると、こういうことですね」

証人=「それは間違いないです」

橋本弁護人=「それが分かれば、こちらに現物がありますから、それも計れば分かりますから結構です。次に芋穴のことについて聞きますが、芋穴の中に風呂敷が落ちてましたね。ビニール製風呂敷」

証人=「ありました」

橋本弁護人=「そういう記載になってますが、間違いありませんね」

証人=「間違いありません」

橋本弁護人=「あなたの実況見分調書第六項、証拠資料と題してこう書いてあります。『前記祝用風呂敷一枚、及び棍棒を被害者の兄に提示したところ、被害者のものでないことが判明、本件犯行に使用した疑いがあるので、これを領置調書乙の通り領置した』と、こう記載してあります。そういう記載をした記憶はありますか」

証人=「したと思います」

橋本弁護人=「この死体発掘現場には、被害者の兄の中田健治が立会人で立会っておりますね」

証人=「はい。居たです」

橋本弁護人=「その兄に対して、今、私が言った風呂敷を見せたわけですね」

証人=「そうですね」

橋本弁護人=「そして、被害者のものかどうかを確認したわけですね」

証人=「そういうことですね」

橋本弁護人=「それでその兄がこれは被害者のものではないと言うんですね。そうですか」

証人=「そう記録されていれば、それに間違いないと思います」

橋本弁護人=「あなたの調書には『兄に提示したところ被害者のものでないことが判明』と、こう書いてありますから、おそらく被害者の兄はこれは妹のものではないと、こう言ったんでしょうね」

証人=「それでいいと思います」

橋本弁護人=「その次に『本件犯行に使用した疑いがあるので、これを領置調書乙の通り領置した』と書いてあります。領置調書のほうを見ますと、領置してないんですが、これはどういうわけでしょう」

証人=「領置していないですか、その風呂敷が。そういうことはないように記憶するんですがね」

橋本弁護人=「三十八年五月四日付領置調書乙というのがあります」

証人=「領置してあると思います。ビニールの風呂敷のことでしょう、それはあると思います」

橋本弁護人=「私のほうは写ですから、間違いがあるかもしれませんが」

                                         *

(続く)

(注:1)="紐んだ"という語句は原文通り引用した。