アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 707

(被害者の遺体に巻きつけられていた荒縄。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2226丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」 

証人=大野喜平(六十歳・会社員)

                                         *

橋本弁護人=「次に移りますが、さらに実況見分調書を見ますと『頭部に木綿の細引紐でひこつくし様に後で締められていた』と、喉の部分に木綿の細引ひもで縛られていたことは事実なんですね」

証人=「それは俗にいう言葉なんです。農家その他の人がひこつくしという言葉を一般に使っているんです」

橋本弁護人=「それはどういう実況のことを言うんですか、ひこつくし様というのは」

証人=「ひこつくし様というのは、まあ一本のものを両端を例えば押さえて縛るとか、あるいは蛇の口のようなものを、一点を押さえておいて末端を通して引っ張れば強まる、緩めれば緩まるというような、そういう、縛ったものじゃなくて引っ張れば詰まり緩めれば緩むというか、そういう特異な結び方なんです。ひこつくしと普通言って通る言葉なんですね」

橋本弁護人=「狭山地方でですか」

証人=「全国的ですね。かなり私、県の北部の出ですが、そういう言葉を使いますね、そこでも」

橋本弁護人=「名は私も正確には知りませんが、投げ縄で物体をとらえますね、引くと投げ縄の輪が縮まって物体を締め上げますね、あれと同じような縛り方を言うんですか」

証人=「そうです。そういうのですね」

橋本弁護人=「(東京高等裁判所昭和四十一年押第20号の6号を示す)この紐に間違いないですか。死体に付いていたというのは」

証人=「私が押収したものに間違いありません」

橋本弁護人=「そしてあなたが今仰った特殊な名称、それはどの部分を指しているんでしょうか」

証人=「ゆわえてありますが、ゆわかない状態だと引っ張れば詰まってる来るし、緩めればこれが蛇口と言って、これがひこつくしなんです」

橋本弁護人=「細い紐でゆわえてある部分ですか」

証人=「そうじゃないです。蛇口に末端が通ってますね。それを言うんです」

橋本弁護人=「細い紐でゆわえた上に結び目がありますね」

証人=「それはどういう形式であってもそれは蛇口と言うんです」

橋本弁護人=「それもひこつくし様に含まれるんですね」

証人=「それがないと蛇口が出来ませんから」

橋本弁護人=「そうするとひこつくし様という結び方をするためには細い紐でゆわえた上の結び目も結ばなければ出来ない、それでもって蛇口を作り上げていると」

証人=「一つここでゆわえて蛇の口のようなものを作って通すとひこつくしになるんです。末端をその蛇の口に通せばひこつくしになると私は考えます。縛ってあるのはそれは保存上でしょう。それがあるのはひこつくしなら無いんですから」

 橋本弁護人=「ひこつくし様というのはこういう結び目を作ってなければいかんのかと言うんです」

証人=「二色あるように思うんですね。というのは私は縄を縛る専門家ではありませんからよく・・・・・・。(このとき証人は、麻紐を輪にして実験した)一本のものに蛇口を作ったもの、一本のものの両端を結んでそれに入れてもなると思いますが」

                                          *

裁判長=「それはしかし、中に腕でも何でも挟むものを入れればそれでも出来るけれども、そのままでは出来ないでしょう、中に入れるものがなければ証拠品のような風にしてあればそのまま出来るでしょう」

証人=「蛇口に末端を通せばひこつくしになるということで書いたつもりなんです」

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橋本弁護人=「細い紐でゆわえた上に大きな結び目がありますね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「これは何か特異な結び方なんですか。特殊性がありますか」

証人=「私には分かりません」

橋本弁護人=「つまりあなた方警察の専門家が調べたんじゃないんですか」

証人=「私は実況見分にはそこまでをただひこつくしという程度に留めました。それが特異な結び方かどうかということについては研究しませんでした」

橋本弁護人=「その実況見分の後この結び方について警察の専門家のどなたかが調べたことはないんですか」

証人=「非常に大きい捜査で、そこまで私はよく捜査の指揮をしていたわけじゃないし、一パートを受持っただけですから、そこまではちょっと分かりません。今になっては記憶ないですね」

(続く)