アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 814

スコップが発見された時の状態。

死体発見現場近くの麦畑からスコップが見つかった(✖︎印)。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2517丁〜】

                    「第四十九回公判調書(供述)」

証人=福島英次(五十三歳・警察官=埼玉県警察本部刑事部捜査第一課勤務、巡査部長))

                                            *

橋本弁護人=「あなたがスコップを見たとき、スコップはどういう状況にありましたか」

証人=「畑の麦の根本に差し込むようにしてありました」

橋本弁護人=「麦というのは」

証人=「小麦か大麦かは分かりませんが、当時青い麦で穂が出るか出ないかというような状態でした」

橋本弁護人=「麦の根本というとどういうところですか」

証人=「畝(うね)があって、畝の間です」

橋本弁護人=「畝と麦の株がありますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「麦の株は一列につながっていますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その一列につながっている麦と畝との間にあったのですか」

証人=「はい。麦と畝との間で、麦の根本寄りのほうにありました」

橋本弁護人=「どういう状態であったのですか」

証人=「土に差し込むようにして横たえてありました」

橋本弁護人=「と言うと」

証人=「土に刃先を差し込むような状態で横たえてありました」

橋本弁護人=「麦の株に沿ってあったのですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「その状況は、第一発見者が発見したときと同じ状況である、と聞きましたか」

証人=「はい。同じ状況であると聞きました」

橋本弁護人=「第一発見者は手を触れていないわけですか」

証人=「触れていないと思います」

橋本弁護人=「そのスコップはどういう風に置いたものとあなたは思いましたか」

証人=「投げるように置いたのではないかと思います。畦より二、三メートル奥に入ったところにありました。畦から畑の中に入ってそこに置いたのではないかというような状況でした」

橋本弁護人=「畦から放ったという意味ですか」

証人=「そんな様子でした」

橋本弁護人=「一列に伸びている麦の株が畑に何列かあり、投げ入れたとれば麦の一列の株と他の一列の株との間に投げ入れたということになるわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「スコップのあった付近の麦に損傷がありましたか」

証人=「損傷はなかったように思います」

橋本弁護人=「投げ入れたとしても麦にはぶつからずに麦と麦の株の間にスッポリ入ったということになりますか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「スコップの発見された付近に足跡が発見されましたか」

証人=「足跡の点は特に記憶がありません」

橋本弁護人=「足跡を発見するように努めなかったのですか」

証人=「私たちが行った時には既に大勢の人が付近に集まっており、発見者もその近くに立っていて、どれがどの足跡であるという見分けが付かないような状態でした」

橋本弁護人=「スコップのあった付近にまで先着の人が来ていたのですか」

証人=「一応は地元の署員がそれらを整理していたようですが、既に立ち入ったような様子があったと思います」

橋本弁護人=「スコップの置かれてあった場所の周辺どのくらいまでに先着の人が入っていましたか」

証人=「一間(注:1)ぐらい離れたところまでだったと思います。というのは、スコップの置いてあった場所が畑の端から四畝ぐらいのところで、その畑の外に立っている人が多かったのです」

橋本弁護人=「畑の中には」

証人=「発見者が既に立っていました」

橋本弁護人=「スコップの発見された場所付近の足跡は観察しなかったのですか」

証人=「特に観察しませんでした」

橋本弁護人=「そもそも最初から足跡にも注意しようという気持ちがなかったわけですか」

証人=「足跡については注意しなかったと思います。既に狭山署員が到着していましたから」

橋本弁護人=「到着していた狭山署員があなたに足跡について何か言いませんでしたか」

証人=「特に言いませんでした」

橋本弁護人=「(昭和三十八年五月十一日付司法警察員巡査部長 福島英次作成の実況見分調書・記録第三冊第八六〇丁以下を示す)その調書の作成者の署名はあなたのですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「その調書に図面が添付されていますが、それは現場を正確に測って書いたものですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「図面の作成者もあなたですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「あなたが今言った畦道はその図面のどこですか」

証人=「赤で21.1と距離が表示してある道です」

橋本弁護人=「21.1とあるのは二十一.一メートルということですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「そうすると、畦道から〇.八メートル入ったところにスコップがあったわけですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あなたは先ほどもう少し奥の方にあったように言いましたが」

証人=「記憶ではそうだったのですが」

橋本弁護人=「南側から測れば二.五メートルで東側から測れば〇.八メートルだったのですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「麦の畝はどういう方向でしたか」

証人=「東西です」

橋本弁護人=「正確には東西ではないですか」

証人=「はい。大体東西です」

橋本弁護人=「スコップの柄の方はどちらにありましたか」

証人=「東の方にありました」

橋本弁護人=「スコップのあった位置は南側からは二.五メートル、東側からは〇.八メートルと書いてありますが、それはスコップのどこを基点にしたのですか」

証人=「柄の先の握る所です」

橋本弁護人=「南側には畦道があったのですか」

証人=「南側は隣の畑で、畦道があったかどうか記憶ありません」

橋本弁護人=「東側にはあったのですね」

証人=「はい。通行できる畦道がありました」

橋本弁護人=「東側の畦道から〇.八メートル入ったところにスコップの柄の先の握る所があったということですが、それは畦道のどこから測ったのですか」

証人=「畦道の西側端から測りました」

橋本弁護人=「スコップの発見された畑付近から地下足袋の足跡が発見されたという話を聞いていますか」

証人=「聞いていません」

橋本弁護人=「スコップ発見現場と死体が埋めてあった現場との距離は割合近い距離でしたか」

証人=「はい。そう遠くないところでした」

橋本弁護人=「死体発見現場付近から地下足袋の足跡が発見されたということを聞いていますか」

証人=「聞いております。どこで発見されたか今はっきりした記憶はありませんが、また、地下足袋かゴム長か記憶ありませんが、何か足跡が取れているということは聞きました」

橋本弁護人=「その足跡の捜査にはあなたは携わっていないのですか」

証人=「はい。携わっておりません」

橋本弁護人=「あなたはスコップの実況見分をし、スコップを押収したわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そのスコップはその後どうしましたか」

証人=「鑑識課の方に持って行きました」

橋本弁護人=「あなたが持って行ってのですか」

証人=「私ではありません。狭山署員の方で持って帰りました」

橋本弁護人=「押収したスコップに他のスコップと区別できるような目印がありましたか」

証人=「特に記憶ありません」

(続く)

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(注:1) 一間(いっけん) =尺貫法という単位系における長さの単位の一つ。一間=181.2センチメートル。