アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 979

【公判調書3061丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

                                            *

橋本弁護人=「名前を拾い出したというのはどういう方法を取りましたか」

証人=「これは住民登録などを調べた記憶があります」

橋本弁護人=「それから」

証人=「それから巡回連絡簿というのが内部の書類ではございます」

橋本弁護人=「それから」

証人=「その他はちょっと記憶ありません」

橋本弁護人=「それで『しょうじ』というのは姓と名に分けますと、『しょうじ』という姓の人は住んでおったんですか」

証人=「ちょっとはっきり覚えておりません」

橋本弁護人=「名のほうはどうですか」

証人=「名のほうまで調べたわけです。それで私の名前も正司(しょうじ)ですから、まあ私の名前まで出てきたということですから、相当徹底した捜査をしたと思います」

橋本弁護人=「ですから、あなた以外に『しょうじ』という名前の人で狭山警察署の管轄内に住んでおった人は発見出来たわけですね」

証人=「ええ、一軒出てきましたです。場所的にはちょっと記憶が薄らいでますが・・・・・・」

橋本弁護人=「江田昭司という人ですか、今あなたが言ってるのは」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「その江田昭司以外にも『しょうじ』と発音できる人はいたわけですか」

証人=「ええ、いたことはあります」

橋本弁護人=「姓のほうで『しょうじ』という人はいたかどうかは覚えてないと、こう言うんですね」

証人=「そういうことですね」

橋本弁護人=「中田善枝が行方不明になったという届出を受けまして直ちに捜査に入ったわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「もちろんその時、捜査の責任を取るのは狭山警察ですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「五月一日段階では先ほど張り込みに入ったということを聞きましたけれども、それ以外の捜査はしておりますか。五月一日の段階で」

証人=「しております」

橋本弁護人=「被害者の足取りで捜査をしておりますか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「どんなところを捜査しましたか」

証人=「俗に言う通学路」

橋本弁護人=「そうすると、まず学校関係者の供述を聞いたわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「どの範囲の人から聞いたか覚えてますか」

証人=「記憶が薄らいでおりますが、学校の担任と、それから教務主任くらいのように覚えております」

橋本弁護人=「生徒には聞いてないんですか」

証人=「生徒にも二、三人聞いております」

橋本弁護人=「これは一日の夜になってから聞込みをしたわけですね」

証人=「ちょっと・・・・・・」

橋本弁護人=「一日の午後七時半頃、行方不明だということのようですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「で、届出があったわけでしょう」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それで捜査に入ったわけでしょう」

証人=「入りました」

橋本弁護人=「そして真っ先にしたのは被害者の足取りの聞込みでしょうね」

証人=「張り込みをやりましてその後は若干、友人の家辺りの捜査はしました、二、三軒。多分友人の所にいるんじゃないかという風なことで捜査をした記憶があります」

橋本弁護人=「その翌日の五月二日、更に捜査を進めましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「被害者が学校を最後に出たのを目撃した人は誰なんでしょう」

証人=「忘れました」

橋本弁護人=「そういう目撃者がいたことは覚えてますか」

証人=「はい。誰ですか、校門の近く、入間川駅の近くで友達か先生かから聞いた記憶があります」

橋本弁護人=「記録によると、学校を出てから郵便局に寄りまして、郵便局を出てから後の足取りがはっきりしないんですがね」

証人=「そうですね」

橋本弁護人=「そうすると、今あなたが仰ったのは郵便局を出てから後の足取りですか」

証人=「そういうことですね」

橋本弁護人=「郵便局から駅の近くまで被害者が出てきたことははっきりしたわけですね」

証人=「いや、郵便局の所ですね」

橋本弁護人=「今あなたが言ったのは郵便局の所で見たということですか」

証人=「はい、これは郵便局と駅と学校とちょうど同じ距離になっております」

橋本弁護人=「そうすると学校から郵便局の所に出て、郵便局に立ち寄ったことは間違いないですね、記録からしますと」

証人=「記録があればそうと思います」

橋本弁護人=「多分あれば間違いないと思いますが、それから後が分からないんです」

証人=「はい」

橋本弁護人=「郵便局を出てから後に被害者を見たという人はいなかったですか」

証人=「ちょっと忘れました」

橋本弁護人=「あなたが今言いましたその郵便局の近くで被害者を見たというのは先生か、それとも生徒かどちらかですね」

証人=「記憶が薄らいでおりますが、どちらかです」

橋本弁護人=「入間川から川越の方に西武線が走っていますね、その付近にガードが二つありますね」

証人=「二つはあるでしょう、きっと」

橋本弁護人=「その付近で被害者を見たという目撃者はいませんでしたか」

証人=「被害者を見たという目撃者らしいというのは出たことがありました」

橋本弁護人=「被害者とは断定出来ないんですね」

証人=「出来ません」

橋本弁護人=「らしいというのは」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その目撃者というのは誰でしょう」

証人=「忘れました」

橋本弁護人=「目撃者は何人いましたか」

証人=「・・・・・・小学生ですか、一人いたように記憶しております」

橋本弁護人=「一人だけですか」

証人=「私は一人と記憶しておりますが」

橋本弁護人=「奥富孝志という中学生ですかが、善枝さんを見たという話をしたらしいということは新聞報道でわかっておりますが、そのことでしょうか」

証人=「恐らくそのことだと思います」

橋本弁護人=「あなたの覚えてる範囲で、その目撃をしたという時間は何時頃でしょうか」

証人=「忘れました」

橋本弁護人=「目撃した場所はどの辺でしょうか」

証人=「あの地方では加佐志街道と言っておると思うんですが、あの辺にたばこ屋みたいなのがあるんですが」

橋本弁護人=「加佐志街道に関口自転車屋というのがありますね」

証人=「そうです、思い出しました」

橋本弁護人=「その関口自転車屋を中心にして考えますと、その生徒が目撃をしたという場所はどの辺だということですか」

証人=「忘れました」

橋本弁護人=「関口自転車屋を通り過ぎてからのことでしょうか。それとも関口自転車屋より手前ということでしょうか。通り過ぎるというのは入間川の方から堀兼の方へ向かう場合のことですが」

証人=「ちょっと通り過ぎたような感じだったです。まあそのようじゃないかと思う程度です」

橋本弁護人=「その目撃者は目撃した相手は善枝であるということを断言したんですか」

証人=「断言はしてませんですね」

橋本弁護人=「善枝らしいということですか」

証人=「・・・その点はあれですね、途中からもうその捜査はやっておりませんので」

橋本弁護人=「まあ、伝聞になるわけですね、あなたとしても」

証人=「はい」

橋本弁護人=「どんな伝聞を得たか」

証人=「新聞報道のほうが強く報道されたようにだけは記憶しておりますが」

橋本弁護人=「警察の認識よりも」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その目撃者は善枝という人を前から知っておった人ですか」

証人=「知らないと思います」

橋本弁護人=「新聞報道ですから正確性は保証し難いんですが、善枝と同級生かあるいは一級下の子供という報道じゃなかったですか」

証人=「記憶ありません」

橋本弁護人=「奥富孝志という報道じゃなかったですか」

証人=「そうかも知れません」

(続く)