アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 743

「昭和四十六年四月二十日、証人=岸田政司の尋問供述調書に表示のとき、当法廷近くの廊下と認められる箇所から騒音が聞こえ数十名の者が示威運動をしていることが認められ、当法廷における審理の妨げとなったので、裁判長は右示威運動をしている者を当庁舎外に退去させる命令を発した」

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第四十六回公判に出頭した証人は次の三名。

岸田政司

鈴木   章

石原安儀

まずは、鑑識課・警察技師=岸田政司の証言を見てゆこう。

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【公判調書2333丁〜】

                    「第四十六回公判調書(供述)」

証人=岸田政司(五十四歳・埼玉県警察本部刑事部鑑識課・警察技師)

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裁判長=「証人の経歴を述べて下さい」

証人=「昭和二十七年五月に埼玉県事務吏員として蕨警察署に入り、鑑識係員として一通りの鑑識業務をやりました。

昭和二十九年一月に県警察本部刑事部鑑識課に転勤になりました。そのときも事務吏員の身分でしたが、昭和三十五年頃に技術吏員という身分になり警察技師となりました。身分は変わりましたが、仕事そのものは最初から変わりありません。仕事は、最初から足跡、車轢痕の鑑定が主です。昭和四十三年十月頃、鑑識課足跡係長になり、現在に至っております」

裁判長=「昭和三十八年五月頃は何をしていましたか」

証人=「足跡の主任でした」

裁判長=「当時、足跡の係にはどういう人がいましたか」

証人=「関根政一さんが係長で、足跡を専門にやっていたのは関根係長と私で、あと、下に足跡専門でない係員が一人いました」

裁判長=「関根係長はほかの仕事もしていましたか」

証人=「総轄というような立場にあり、指紋、筆跡等もやっていました」

裁判長=「証人は当時、足跡をもっぱらやっていたのですか」

証人=「はい。足跡以外のことはやっていません」

裁判長=「証人はほかの鑑定もやれますか」

証人=「足跡、車轢痕の仕事が多いので、ほかのことは事実上やれません。指紋はやれますが、そのほかはあまりやれません」

裁判長=「筆跡はどうですか」

証人=「できません」

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橋本弁護人=「いわゆる善枝さん殺し事件について、あなたは足跡の鑑定書を作成しましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それ以外にこの事件で鑑定書とか実況見分調書とかを作っていますか」

証人=「足跡の鑑定書以外には作っていないと記憶します」

橋本弁護人=「善枝さん事件の証拠物について捜査に加わったことはありませんか」

証人=「ないですね」

橋本弁護人=「善枝さん殺し事件では足跡の鑑定をしただけですか」

証人=「そうです。それに関する対照資料を採取するということはしました。それ以外のことはしません」

橋本弁護人=「善枝さん殺し事件についての鑑定書の作成日付は昭和三十八年六月十八日になっていますが、この鑑定書を作成するまでにあなたはどのくらいの足跡鑑定書を作りましたか」

証人=「私は昭和二十九年に鑑識課に行ったわけですが、関根技師が主として鑑定書を書いており私はその補助としてやっていたのですけれども、連名で鑑定書を作ったのならかなりあります」

橋本弁護人=「どのくらいあるのですか」

証人=「年間に七十件から百件ぐらいやっているのが普通ですから、それに年数を掛ければいいと思います」

橋本弁護人=「埼玉県下で起こる事件の足跡鑑定は関根さんとあなたの二人で一手に引き受けるわけですか」

証人=「昭和二十九年から昭和三十八年頃まではそうでした」

橋本弁護人=「あなたが単独で鑑定書を作ったことはあるのですか」

証人=「現在は単独でやっています」

橋本弁護人=「昭和三十八年当時はどうでしたか」

証人=「記憶がはっきりしません」

橋本弁護人=「足跡の鑑定についてはどういう教育を受けましたか」

証人=「埼玉県警察本部の上級官庁である関東管区警察局あるいは警察庁などに行って講習を受けたり研究会などに出たりして覚えました」

橋本弁護人=「特別の学校のようなところに行って授業を受け卒業するというシステムはないのですか」

証人=「日本の国には足跡、車轢痕などの学校はないので、そういう教育は受けていません。私などのように足跡を専門にやっている人が各警察本部におり、そういう人が警察庁主催のもとに集まって研究したことを発表したりして、お互いに研究をしております」

橋本弁護人=「それと、先輩に付いて実地にやるということですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「あなたにとっては関根さんが先輩になるわけですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「あなたの作成した鑑定書の中味について尋ねますが、まずその前提として地下足袋のことについて尋ねます。昭和三十八年六月十八日当時、何種類ぐらいの地下足袋が発売されていましたか」

証人=「全国にゴム靴屋さんが沢山あり、神戸あたりに千軒ぐらい、東京都内にも千軒ぐらいありますが、その中に地下足袋を作っているメーカーがあるわけです」

橋本弁護人=「地下足袋のメーカーはどのくらいありましたか」

証人=「百軒から百五十軒ぐらいでしょうね」

橋本弁護人=「メーカーによって違う種類の地下足袋を作っているのですか」

証人=「地下足袋は大別して二種類あり、縫付地下足袋と切抜地下足袋とに別れます。切抜地下足袋は多くゴム靴屋で作られています。たとえばアサヒゴムとか藤倉ゴムとか、そういうところで作られています。縫付地下足袋は埼玉県には特に多く、行田で昔、座敷で履く座敷足袋を多く使っていたので、それに付随してということか、そこでは縫付地下足袋を作っています」

橋本弁護人=「縫付地下足袋の中に幾種類かあるのですか」

証人=「各メーカーによって底型模様が違っています」

橋本弁護人=「縫付地下足袋というのは一種類だけれども底型模様が違っているわけですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「切抜地下足袋には種類はあるのですか」

証人=「メーカーによって模様が違います」

橋本弁護人=「メーカーによる差ですか」

証人=「そうです」

(続く)