アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 624

「凶悪重罪事犯の捜査処理において最も重要なのは、まず真犯人を被疑者として検挙し、真犯人を被告人として公判請求することによって、絶対に無辜の人、つまり無実の人を裁判の対象にしないことである」(村上久=昭和52年当時、最高検察庁検事)

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【公判調書1948丁〜】

                    「第四十回公判調書(供述)」⑦

証人=河本仁之(三十七歳・弁護士。事件当時、浦和地検検察官)

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橋本弁護人=「それからその調書の中に、事件の詳しいことは裁判所に行ったら述べますという意味のことが書いてありますが、これはどういう意味ですか」

証人=「捜査官に対しては、私の取った調書にある程度で勘弁してくれ、詳しいことは裁判になったら言います、ということを言ったように思います。裁判になったら詳しいことを言います、ということはその調書の時だけでなくて何回も言っておりました」

橋本弁護人=「裁判になったらというのは起訴されて公判に付されたら、という意味ですか」

証人=「そういう趣旨に言っていました」

橋本弁護人=「あなたの方からどういう意味か尋ねなかったのですか」

証人=「尋ねたかも知れませんが記憶ははっきりしません」

橋本弁護人=「ともかく裁判所に行ったら全部しゃべるということはあなたにも言ったわけですね」

証人=「何回か聞いたことがあります」

橋本弁護人=「第一次逮捕の五月二十三日から六月十七日までの間に善枝さん殺し、強盗強姦殺人についてかなり取調べをしているようですが、あなたも善枝さん殺しについて調べをしていますか」

証人=「善枝さん殺しについても事情を聞いていると思います」

橋本弁護人=「被告人の話では、ほとんど善枝さん殺しについて聞かれたということですが」

証人=「恐喝未遂との関連で善枝さん殺しについてもかなり突っ込んで聞いていると思います」

橋本弁護人=「あなたは鶏の窃盗とか森林窃盗などについても調書を作りましたか」

証人=「作ったかも知れません」

橋本弁護人=「そちらについての被告人の態度はどうでしたか」

証人=「窃盗などの事件については私はあまりポイントを置いて聞いていませんでしたが、それについては素直に認めていたと思います」

橋本弁護人=「被告人は逮捕された直後から、いわゆる別件については全部自供していたようです。したがってそちらの方の供述調書はかなり早期の段階に全部出来上がっていたように思いますが、その点の記憶はどうですか」

証人=「私が被告人の調べをやったのが第一次逮捕の勾留期間の終わり頃のようですから、その点からすれば窃盗その他についてはすでに調書は出来ていたかも知れません」

橋本弁護人=「あなたとしては善枝さん殺しと恐喝未遂にポイントを置いて取調べをしたということになるわけですね」

証人=「恐喝未遂及びそれに関連する善枝さん殺しですね」

橋本弁護人=「被告人が六月十七日に保釈になり、続いて再逮捕されたその間の事情はわかっていますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「再逮捕するということは検察側としてはいつ頃知ったのですか」

証人=「その点の記憶ははっきりしません」

橋本弁護人=「六月十七日に再逮捕が執行されていますから逮捕状を請求したのはそれより前ですが、再逮捕を決定するについて主導権というようなものは警察側にあったのですか、それとも検察側にあったのですか」

証人=「やはり警察が逮捕したいという意向を固めて検察庁の指揮を仰いで来たのではないかと思います」

橋本弁護人=「指揮を仰いで来た時点はいつかわかりませんか」

証人=「私はいわば一番末席でしたからその辺には関与していないと記憶します」

橋本弁護人=「再逮捕についてあなた自身、意見具申を求められるとか、あるいは意見を具申したとかいうことはありませんか」

証人=「再逮捕に関して意見を求められたり意見を述べた記憶はありません」

橋本弁護人=「再逮捕はあなたにとって寝耳に水のことだったのですか」

証人=「そうでもありません」

橋本弁護人=「予想はしていたのですか」

証人=「ある程度予想はしていました」

橋本弁護人=「ある程度というと、どの程度ですか」

証人=「おそらくは再逮捕されるのではないかという風に予測していたと思います」

橋本弁護人=「しかし六月十一日の無署名の自供がある以外は本人は否認していましたね。ですから、本人が否認していても再逮捕できるというには相当な根拠が必要だと思われますが、どういう根拠で再逮捕を予測したのですか」

証人=「いろいろな傍証、物証がことごとく被告人を指向しているという状況にあったのではないかと思います。そういうことから相当程度に再逮捕を予想していたということになりましょうか」

橋本弁護人=「そういう傍証がどのようなものであったか知っていますか」

証人=「手ぬぐい、タオル、荒縄、スコップ、脅迫状の筆跡、そのようなものを現在記憶しております」

橋本弁護人=「タオル、手ぬぐいについては第一次逮捕以前から捜査当局は捜査をしていたわけですね」

証人=「はい」

(続く)