アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 677

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2127丁〜】

              「第四十三回公判調書(供述)」④

証人=中   勲(五十七歳)

                                          *

主任弁護人=「月島食品のタオルは石川君がかつて勤めていた東鳩製菓の関係の捜査によるものでしょう」

証人=「はい」

主任弁護人=「裁判の記録によると、それらは石川君を最初に逮捕する五月二十三日以前に警察は知っていたと窺えるのですがね」

証人=「はい。知っておりましたが、窃盗と恐喝未遂ですからこれは使えないと思います。使っていないと思います」

主任弁護人=「あなたの言うのは、恐喝未遂の直接の疎明資料としたのは筆跡鑑定の中間報告だけである、ということですか」

証人=「そのように記憶しています」

主任弁護人=「しかし捜査本部としては、特にあなたとしては、五月二十三日の最初の逮捕のときにも石川君を犯人であろうとの想定を持っていたのでしょう」

証人=「ええ。一応筆跡が一致するということになれば、少なくとも脅迫状を書いたことは間違いない、という考えを持っていました」

主任弁護人=「実際に逮捕状をどういう罪名で請求したかは別として、あなたは五月二十三日当時、強盗強姦殺人、死体遺棄を含めて石川君が犯人であろうと考えていたのではありませんか」

証人=「考えておりません。恐喝未遂、少なくとも二十万円持って来いという事件については書いたことはまず間違いない、その犯罪は成立するであろうということは考えましたけれども、二十日、二十一日の時点ではまだ全面的に被告人が本件の犯人だという風には考えておりませんでした」

主任弁護人=「しかし、あなたは事件が起こった直後から単独犯だという考えをずっと変えなかったのでしょう」

証人=「ええ」

主任弁護人=「単独犯というのは、手紙を自分で書き、被害者を殺し」

証人=「感じと手続上の問題とは違いますから」

主任弁護人=「どういう罪名で逮捕状を求めるかという手続上の問題については筆跡鑑定の中間報告だけを疎明資料としたということは分かりますが、しかし、その他のいくつかの捜査の結果から、手続を取る取らないは別として、石川君を犯人と考えていたのではないかと聞いているのです」

証人=「疑わしいとは考えていました」

主任弁護人=「そうすると、手紙を書いたということに対する疑いの程度と、殺人その他に関する疑いの程度との間に違いがあったのですか」

証人=「ありました。まだ強盗強姦殺人、死体遺棄という点について確信を持てるまでの段階ではありませんでした。持っていれば当然、逮捕状請求の疎明資料を集めて逮捕状の請求ということになるわけです」

主任弁護人=「そうすると、六月十六日に再逮捕状を請求したときは確信になっていたのですか」

証人=「はい。先ほど言った疎明資料が集まっていたし、まず間違いなかろうという確信を持ちました」

主任弁護人=「重ねて尋ねますが、あなたが先ほど挙げた確信の根拠となった証拠について言うならば、足跡の点を除いてはいずれも五月二十三日以前に捜査本部で入手していた証拠ばかりではありませんか」

証人=「ちょっとはっきりしません」

主任弁護人=「五十子米屋の手拭いがどの範囲に配られていたかということも分かっていたでしょう」

証人=「これは五月二十一日の段階ではそう絞っていなかったのではないでしょうか」

主任弁護人=「しかし、少なくとも石川君の家に配られているということは知っていたのでしょう」

証人=「ええ。もう、配付範囲内だとはわかりました」

主任弁護人=「そして、それらすべての捜査を通じても、証拠となっているタオルが石川君の家以外のものではあり得ないなどという結論は出なかったでしょう」

証人=「ちょっと意味がわかりませんでした」

主任弁護人=「タオルの行方を追ってみたところ、行方不明になっていたのは石川君の家だけだというような結果は、捜査のすべてを通じても出なかったのでしょう」

証人=「はい。ただ入間川付近に月島食品のタオルがそうは入っておらないということははっきりしました」

主任弁護人=「五月二十三日段階では月島食品の問題もわかったわけでしょう」

証人=「ややです」

主任弁護人=「足跡の点を除き、五月二十一日頃から六月十六日までの間に、あなたの確信を非常に強めるような新たな証拠が出て来ましたか」

証人=「記録を見ないとはっきりしません」

主任弁護人=「極めて有力な証拠が出て来たという記憶はないわけでしょう」

証人=「はい」    

 (続く)