アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 682

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2143丁〜】

                    「第四十三回公判調書(供述)」⑨

証人=中  勲(五十七歳)

                                          *

主任弁護人=「被害者が行方不明になる当時持っていたという物がどういう物であったかを確定できるようになったのはいつ頃ですか。たとえば、自転車は五月一日の晩返って来たわけだけれども、それ以外に財布を持っているとか、お金はいくら持っているとか、教科書はどういうものを持っているとか、万年筆は持っているかとか、被害者の家族によって大体所持品はこういうものであるとほぼ確定できたのはいつ頃か覚えていますか」

証人=「はっきり言えません」

主任弁護人=「ゴム紐が発見されたことを覚えていますか」

証人=「はい。これは覚えています。すぐでしたね。三日か四日です」

主任弁護人=「ゴム紐が被害者のものであるということは捜査本部では確認したのでしょうね」

証人=「はい。これは自転車の荷掛けの紐だということでした」

主任弁護人=「誰によって確認したのですか」

証人=「分かりません」

主任弁護人=「その後教科書が出て来ましたね」

証人=「はい」

主任弁護人=「いつ頃だったか覚えていますか」

証人=「割合早い時期でしたね」

主任弁護人=「五月二十一日ですか」

証人=「もっと早いのではないでしょうか。農家の人が畑仕事に行って回りの側溝を掘っていて発見したという風に覚えております」

主任弁護人=「教科書、ノート類が発見されたのは五月二十五日なのですがね。つまり石川君が逮捕された後なのですが」

証人=「前ではなかったですか。鞄が二十四日だと思いますが、本はその前に出ていたはずですから」

主任弁護人=「何月の二十四日なのですか」

証人=「六月の二十四日ですか、本は五月ですか、それならいいです」

主任弁護人=「教科書は記録によると五月二十五日に発見されており石川君を逮捕したのちということになるのだけれども、その前後関係はどうです」

証人=「逮捕前ということではなく、鞄より前ということです。ただ、私は直接捜査をしているわけではありませんし、責任者として報告を受けている程度ですから、細かい点は間違いがあるかも知れません」

主任弁護人=「あなたは関源三という人を知っていると言いましたね」

証人=「はい。知っています」

主任弁護人=「石川君は最初自白した時には三人でやったと言った、ということも言いましたね」

証人=「はい」

主任弁護人=「最初の自白が関さんに対してなされたということも知っていますか」

証人=「確か関君が最初調べて自供を得たということだったと思います」

主任弁護人=「当時報告を受けていたのでしょうね」

証人=「はい」

主任弁護人=「再逮捕するかしないか、その時期などについていろいろな意見があったが、とにかく再逮捕に踏み切って、そして自白が出たというのだから、かなり重大な時期ですね」

証人=「はい」

主任弁護人=「自白したという報告を誰から聞いたか覚えていますか」

証人=「まず、将田警視だろうと思います。私が直接指示するのが将田警視でしたから、もし報告を受けるとすれば将田警視を通じてです」

主任弁護人=「自白がなされたのは関源三巡査部長に対してであるということもそのとき聞いているのでしょうね」

証人=「そうだと思います」

主任弁護人=「その当時あなたは、関源三という人が石川君と前から知り合いであったということを知っていましたか」

証人=「その当時の話で、前からあの付近に居住していて野球を教えたりした間柄だというようなことも聞いていました」

主任弁護人=「それを聞いたのは再逮捕の前ですか後ですか」

証人=「逮捕して被疑者が石川君と特定された時点でそういう話が出たのではないかと思いますが、はっきりしません」

主任弁護人=「弁解録取をする時期ですか」

証人=「そういう意味ではなく、第一回の逮捕と再逮捕との間ごろにおいてそういう話が出ていたのではないかと思います」

主任弁護人=「そうすると、六月十七日以前ということですね」

証人=「そう思います」

主任弁護人=「再逮捕ののち、関源三巡査部長を石川君の取調べにあてるかどうかについて誰かに相談したことはありませんか」

証人=「ありません。取調べその他は全部将田警視の指揮でやらせていたので、具体的なことについてどうしろこうしろという指示は出しておりません」

主任弁護人=「将田さんから相談をされたり、報告を受けたこともありませんか」

証人=「おそらくあると思います」

主任弁護人=「竹内さんはあなたに相談したようなことを言ったが、どうですか」

証人=「ちょっと記憶ありませんが、大体事件関係については将田警視と相談して将田警視が指示命令をしていたわけです」

主任弁護人=「再逮捕後のことに限って尋ねますが、関さんはいつから石川君の取調べに当ったか覚えていますか」

証人=「分かりません。はっきりしません」

主任弁護人=「当時は知っていたのでしょうね」

証人=「私は特捜本部に出たり入ったりしていましたから、彼がそういう仕事をしていたことは知っていました。私は当時、堀兼に行き、川越に行き、あるいは狭山警察に行くという風に顔を出していましたから知っていたわけですが、それがいつかということははっきりしません」

(続く)