アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 644

(写真は"狭山差別裁判 第三版 部落解放同盟中央本部編・中央出版局"より引用)

【公判調書2012丁〜】

                   「第四十一回公判調書(供述)」③

証人=竹内武雄(五十六歳・埼玉県交通教育協会評議員。事件当時、狭山警察署長)

                                         *

宇津弁護人=「ところで関さんが川越分室における石川君の取調べに関与するにあたって、それまでの捜査の内容、それから取調べの経過ですね、石川君に対する、そういったものを関さんが出来るだけ正確に知って行くということが必要だと思いますが、そういうことはどんな風にしてなさいましたか」

証人=「私は直接別に何も言ってません」

宇津弁護人=「それまでは要するに食糧運びに過ぎなかったとすればね、今度、取調べに関与したわけですからね。今までの捜査、及び取調べの全体について関さんは準備していかなければならなかったと思いますが、その辺は」

証人=「私は個々に具体的にはそう指示はしてません」

宇津弁護人=「特に指示しなくても関さんは捜査の全貌、及び取調べの経過については知っていたというんですか」

証人=「知っていたというよりか、向こうへ行って補助という立場ですからね。向こうの、既にもうずっと取調べにあたった捜査官の指示によって動きなさいという意味ですね」

宇津弁護人=「補助というものは、その県警の方々の指示によって動く、その意味はわかるんですが、あなたも仰る通り、当時の時期としては非常に重要な、気持ちをほぐして自白を得るという重要な目的があったわけですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「ですから、関さんとしては捜査本部の方々といろいろ打合せをしなければその任務を全う出来なかったんではないかと思いますが、その辺のところはどうなさいましたか」

証人=「そう私、今記憶ありませんね。集まって関部長を囲んでこれこれという指示はそうはしてません。もちろん私も行く前に何も言わないわけには参りませんし、しかし大体の概略というのは捜査員が動いておれば、まあ、捜査員同士で聞いておるか、大きな一つの大体流れは知っております。しかし、具体的にはそう私が詳しくは言ってませんが、まあ、とにかく、川越へ行ったら関係しておる取調官ですね、それのよく指示を受けてやりなさいということですね」

宇津弁護人=「直接川越分室で石川君の取調べにあたった警察官も、その日その日の取調べの経過については捜査本部の会議の席上報告されておったわけですか」

証人=「ええ、報告は来ます」

宇津弁護人=「その捜査本部の会議には関源三巡査部長は出席する立場でしたか」

証人=「出席はしません。捜査本部と言いましても、川越分室に行ってからは捜査本部は狭山の現地へ残り電話の連絡ということで、川越分室と電話の連絡によって、あるいは特使によって報告があるということで、非常に遠いですからね。捜査本部はこっちへ残しておきましたから」

宇津弁護人=「そうすると、特別なことをしなければ関さんが特に取調べの経過を正確に知って川越分室における取調べの補助をすることは出来ないように思われますが、特に何もしなかったというのは間違いないですか」

証人=「別にしませんでしたね。特別に関部長に対してですね、私より本部長がよく指揮をしたかということですか」

宇津弁護人=「あなた、ないし、中刑事部長、あるいは捜査本部の捜査会議の席上、いろんな情報を得るということも無かったのかということですね」

証人=「取調べに派遣する際はですね、まあ、繰り返すようですが、特別に私の記憶としては関部長を囲んで、これこれこういう点についてやりなさいよという記憶はない、しかし、まあ、向こうへ行った結果、場所が離れておりますから、電話でまあ、報告があり、まあ、特使で報告はあったと、それによってこちらの特捜本部でまた指示をしたということですね」

宇津弁護人=「そうすると、関さんを川越分室に送るにあたってですね、正確な取調べのそれまでの経過を逐一言われるよりも、どういう点に注意をして気持ちをほぐして自白を得るようにするかと、そういう点に重点を置くように配慮されたということなんでしょうか」

証人=「まあ、その意味がちょっとどういう意味になりますか、私としますと、繰り返すようですが、ほかの捜査官がやってきて、川越分室に移しても進展はしない、そこでまあ、関部長ならせめて私の希望通りということもないですが、私のある程度感じと、関部長なら、ほかの捜査員よりか、もっと真実が発見出来るだろうということで、もちろん当時の本部長に相談して関部長どうかと、私も関部長を一応、川越へ派遣して取調べに参加した方がいいんじゃないかという意味で、しかし具体的ないろいろ調べというか、それについては前から携わっておる長谷部警視ほか担当官の指示によって報告しなさいと、そういうことです」

宇津弁護人=「そうすると、関部長を川越に送るにあたっては、副本部長であるあなたが中本部長に推薦した形になるわけですか、関さんを送ったらどうかと」

証人=「そうですね」

宇津弁護人=「関さんが川越分室で捜査に補助であってもですね、従事するについては、直接は取調べを担当している方を補助することでしょうけれどもね」

証人=「ええ」

宇津弁護人=「捜査本部、あるいは狭山署長であるあなたの方から必要に応じ指示を関さんに出すということもありましたか」

証人=「その当時はしてませんね」

宇津弁護人=「全く何もしたことありませんか、それとも何か記憶はありますか」

証人=「私はありませんね」

宇津弁護人=「捜査本部としてはどうですか」

証人=「私は直接、捜査のほうではなくて、大体まあ、あとの全般の仕事というかね、そのほうを主として、あとは報道ですね。報道が一日に三回ないし四回担当して、そのほうに追いかけられて、あまり捜査の内容の細かい点のほうは、私はそうタッチしていない、聞いてはいますがね」

宇津弁護人=「本来の捜査本部の刻々の捜査の状況、取調べの状況を一番よく掴んで統括しておられた方はどなたですか、実際にですよ、地位その他でなくてですね」

宇津弁護人=「今、辞めました将田、捜査課の次席、それと中刑事部長が詳しいですね。私よりは内容についてはですね」

宇津弁護人=「そうすると、関さんはあなたよりも、むしろ中刑事部長さんと川越へ行ってから後の経過については連絡を取り合っていたということはありましたか」

証人=「その記憶はありませんね。そう連絡をどうかこうかという期間は無かったですね。二、三日だったですね、自供を始めてですね、ああで、こうで連絡する間もなくて二、三日で、連絡というより報告が多かったですね」

宇津弁護人=「あなた、誰の報告を聞いたんですか」

証人=「捜査本部へ向こうから報告が来てですね、電話で、あるいは担当官が来てですね、そのほうが多かったです。こちらからあれ調べろという指示でなくて調べの結果が来たという状況でございます」

宇津弁護人=「川越分室における取調べの最高責任者と言いますかね、それはどなたでしたか」

証人=「まあ、当時としては長谷部警視でしょうね」

宇津弁護人=「たとえば、石川君が急に具合が悪くなったという場合に医者を入れたりなんかすると思いますが、そういうときの判断は長谷部さんがやるという立場ですか」

証人=「いずれにしても、まあ、あそこの責任者というかね、階級と言えば長谷部警視、あと警部はおりましたかね」

宇津弁護人=「階級はそうでしたが実際はどうでしたか」

証人=「それは知りません。細かい点は」

宇津弁護人=「取調べ全体の総括的な役割は長谷部さんがしたと聞いていいですか」

証人=「そう思います」

(続く)