アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1236

狭山事件公判調書第二審3815丁〜】

証人=高村巌

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中田弁護人=「それじゃ第4図なり第6図はどうですか」

証人=「と申しますと」

中田弁護人=「第4図には三字ありますね、この三字にはかなり共通した特徴があると言えませんか」

証人=「まあ必ずしもそうでないと思いますがね。第一行目の『を』と、第五行目の『を』では、ちょっと違うように思いますが」

中田弁護人=「ついでに、あなたが検査していかれる過程みたいなものを知りたいから伺うんですがね、第四図の一行目と五行目はどこをどう違うと鑑定人としては見るんですか」

証人=「これは一行目のほうは『を』という字の終筆が右のほうへ真っ直ぐいっておりますが、五行目のほうは終筆が上にあがっております」

中田弁護人=「四行目も五行目も上にあがっておりますね」

証人=「四行目のほうも少しはあがっておりますね」

中田弁護人=「第6図のほうにも今言われたような意味で第二筆の終筆が右上にあがるという特徴はありませんか」

証人=「ええ、ありますよ。この『を』という字はさほどではありませんが、終筆があがるというのが、一般的に『な』という字にしましても、『は』という字にしましても、終筆があがる傾向が出ております。ことに『な』という字の終筆があがるのは非常に顕著なものがあります」

中田弁護人=「『を』について言うならば、第4図と第6図については、つまりこれは石川君が書いたと特定されている文書なんですがね、それについては今のように終筆があがるという特徴が認められる、そして私自身の見たところではそれはある意味では脅迫状についても似通っているところがあるんですがね、それなのにあなたがなぜ落とされたかというのが分からんけれども」

証人=「これは終筆があがるというのは、これは第4図の一番最初に『を』という字がありますね、これもここに終筆があがっておりませんので、ほかのところで終筆があがっておりますけれども、これをとってはあとでその説明が非常に困難であるということでとらなかったんじゃないかと思いますね」

中田弁護人=「説明が困難である、つまりここが似てるぞ、違うぞと言っても、説得できんと、こういうわけですね」

証人=「これは鑑定人が主観的にそう自信を持ってやっても、説明に非常に困難であるということがございますんでね、それであげなかったんじゃないかと思います」

中田弁護人=「かなりあなた、多数の字をあげておられるんですよね、十八字。具体的に写真で拡大しておられるんですがね、その十八字というのは大体説明が困難じゃなかったものだと、こういうことになるわけですね」

証人=「いや、説明が困難だというのは比較的の問題ですからね」

中田弁護人=「添付の写真第7図、第8図、第9図が『か』の字ですね」

証人=「はい」

中田弁護人=「この『か』の字の第二筆について、あなたは特徴点としてあげておられないのですが、第7図のほうは、つまり脅迫状のほうは勢いよく終筆の部分がはねられている、第8図、第9図は止まっていることは明らかではありませんか」

証人=「いや、7図のほうは、はねられていると今仰いましたけれども、これははねられておらないです。これは止まっているんです。現物について拡大してみますとこれは止まっているんです」

中田弁護人=「第10図、第11図、第12図を見て下さい。この第10図の『た』の字の第二筆の下もやっぱり止まっているんですか」

証人=「これは細くなっておりましてですね、あまりはねられてはおらないですね」

中田弁護人=「しかし細くなって力が抜けているんじゃないんですか」

証人=「多少力が抜けておりますね」

中田弁護人=「第11図、第12図では同じ『た』の字の第二筆は力が抜けないでそのようになっているんじゃないですか」

証人=「そうじゃないです。やっぱり力が抜けています。上と比べて少し細くなって抜いております」

中田弁護人=「それでは第19図、第20図、第21図『は』の字を見て下さい。その第三筆の終筆はどうでしょう。第19図では右上がかなり高く、これもすーっと細くなっていますね。第20図、第21図ではそんなに細くならずに止まっているように見えるんですが」

証人=「それはなるほど多少こちらのほうは細くなって上へ進んでおりますが、こちらのほうもやっぱり上のほうへ細く止まっては止まってはおりませんです。これは」

中田弁護人=「21図もそうですか」

証人=「ええ、21図も止めてございます」

中田弁護人=「28図から30図を見て下さい。『ま』の字です。それは第三筆の終筆」

証人=「これは明らかに、裁判長宛の手紙のほうは下のほうに抜いているんです」

中田弁護人=「いずれにしましても、今までご覧いただいた『か』『は』『ま』などは、そのあなたが拡大されたこの写真で見る限り、止めているか、力を抜いたかは別としまして、かなり明瞭な違いがあるでしょう。脅迫状との間には、すーっと細くなっているのと、そう細くならないで、むしろ見方によっては止まっているように見える、そういう区別があると言えませんか」

証人=「まあこれは何ですね、私としては違うようには思いませんが」

(続く)

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○高村巌氏の鑑定書を見ずにこの文章(尋問)を読んでもこれは不完全で、とても法廷の記録とは言えぬものとなるが、その問答から得られた情報を見ると、第7図は脅迫状を指し、第4図・第6図は石川被告が書いたものと特定されている文書だということである。したがってそれに見合うと思われる写真をここに添付しておこう。

第7図=脅迫状(と思われる)。

石川被告が書いた上申書。

そして、三枚目の写真が脅迫文を手本に石川被告が練習させられて書いたもの。上申書と、練習を強制されたのち書かされた脅迫文を第4図、第6図と仮定して調書を読むと、尋問のおおよその全体像に多少は近づけそうだが、どうか。