アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1312 【判決】⑪

  

                   【狭山事件第二審・判決⑪】

(いわゆる別件逮捕・勾留・再逮捕・勾留を含む捜査手続の違法・違憲を主張し、よって捜査段階における被告人の供述調書の証拠能力を否定し、自白の任意性を争い、原判決の審理不尽その他訴訟手続の法令違反を主張する点について)

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   また、弁護人らは、最終弁論において、被告人の六・二十二員青木調書に添付の被告人作成の図面二枚は、あらかじめ付けられた筆圧痕を被告人がなぞって書いたものであると主張し、その根拠として、上野鑑定中「本資料では表面には骨筆(あるいは使い古しのボールペン)による溝があるのに裏面にはこれが写し出されていない部分が多数ヶ所でみられる。これは強いて考えれば三度目の複写で片面カーボンを用いたためという考え方も成り立つが、同じ結果は、まず被告人以外の者が骨筆の類で筆圧痕を作り、この後に被告人をして鉛筆でそのあとをたどらせるというやり方もまた考え得られる。本資料の図は相当精巧であるのに最初から下にカーボン紙を敷き、書き損じもなく仕上げていることは後段の疑を濃厚にさせるものである」とある部分を採用する。

   ところで、右上野鑑定は「本資料の裏面を見るに図及び字のほとんどすべて(緑色線を除く)が黒色カーボンで写し出されている。これらのうち、図の線のほとんど全部説明字句の半数は二重に書かれてある。これにより本資料の下に両面カーボンを置いて調書の上を骨筆の類でなぞって別の紙に写しとったものと考えられるが、二重にカーボン取りされてあるうちの一本は完全に鉛筆跡の線と一致しており、一部としてこれの軌道から外れることはない。・・・すなわち被告人に書かせる段階ですでに下に両面カーボン紙が敷かれてあり、そのあと再びカーボン紙の下に新しい紙を入れかえて今度は骨筆の類でその上をなぞったものとみなければならぬ」とした上で前記の推論をしているのである。
   しかしながら、前記二枚の図面を仔細に観察すれば、裏面の二重(二〇五〇丁の図面については三重の箇所もある)のカーボン線のうちの一本が表明の鉛筆の線や字と一致するかに見えながら、随所において外れていることが明らかであり、上野鑑定が言っている如く被告人が書いた段階で既に図面の下にカーボン紙が敷かれていたとは到底認めることができない。しかも弁護人も指摘しているように、二〇四九丁の図面の裏面に見られる二重のカーボン紙は、同時に付けられたと認められるのである。そうすると、鑑定書の前記推論はその根拠を失うものと言わざるを得ず、むしろ鑑定書が立てているもう一つの推論、すなわち被告人作成の図面を複写するに際して片面カーボン紙を用いたため、裏面にカーボン紙で写し出されていない筆圧痕が付いたという見方が正しいと考えられるのである。
   弁護人らは、また、前記二枚の図面には鉛筆跡より先に付けられていた筆圧痕が存在する旨その箇所を指示して主張するのであるが、右各箇所はいずれも宮内鑑定によって鉛筆痕の後から筆圧痕が加えられたものと判定されたところであって、これに疑いを差し挟む余地はない。そのほかの図面について弁護人の指摘する諸点も、宮内、上野両鑑定の結論を左右するものとは認め難い。したがって、筆圧痕を根拠として被告人に対し自白の強制ないし誘導がなされたとする弁護人らの主張は、その論拠を欠き失当であると言わざるを得ない。
   以上の次第で、被告人の捜査段階における供述の任意性に疑いがあるとする論旨はすべて理由がない。
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   ◯ここで語られているのは、石川被告が二審で「自白」図面について、「遠藤さん(警部補)が二枚重ねた上の紙に書いて、下にうつったものをなぞって図面を書いた」と証言し、「筆圧痕」という重大な問題が浮上したことを隠蔽するための方便となっている。

石川被告による供述調書添付図面には、そのほとんどに筆圧痕が確認されている。いわば誘導図面と呼べる捏造証拠であろう。