アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1049

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である

(事件当時の狭山警察署。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

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【公判調書3284丁〜】(昭和四十七年六月十五日)

                     「第六十一回公判調書(供述)」

証人=中田直人(四十一歳・弁護士)

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橋本弁護人=「引き続いて、接見の日時と回数について伺います、第三回目はいつでしょうか」

証人=「六月七日です」

橋本弁護人=「接見した場所は同じですね」

証人=「同じです」

橋本弁護人=「誰と一緒に接見しましたか」

証人=「その時も橋本さんと一緒だと思います」

橋本弁護人=「次の接見はいつでしょうか」

証人=「六月十三日です」

橋本弁護人=「場所は前と同じですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「一緒に接見した人も橋本ですか」

証人=「だと思います」

橋本弁護人=「石川くんが再逮捕された日を覚えていますか」

証人=「六月十七日です」

橋本弁護人=「その再逮捕の直前に石川くんに会ったことがありませんか」

証人=「六月十五日に会いました」

橋本弁護人=「そうしますと、六月十七日の再逮捕の間までに、証人は都合五回接見しておることになりますね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「六月十五日は、誰と一緒に接見しましたか」

証人=「その時は、私一人だったと思います、というよりは、最近メモを調べた結果そうだということがわかりました」

橋本弁護人=「六月十七日に再逮捕があって被告人の身柄が狭山警察から川越警察に移りましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それでは、その狭山警察に留置されていた時期の接見の模様ですが、第一回目については今お伺いしましたが、都合五回の全体に亘(わた)って、およその状況をお聞きしたいと思います。その全体を通じて、被疑事実に対して、被告人の態度に何か変わったところがありましたか」

証人=「いわゆる善枝さん殺しにつきましては、終始変わるところがありませんでした」

橋本弁護人=「否認ということですか」

証人=「そうです。他の勾留の理由となっている事実については、早い時期に認めていたようです、ばかりではなくて、六月三日に接見した時には、五月三十一日に悪いことは話をしたと、いうことを言っておりまして、勾留の理由とされた事実以外の窃盗の事実についても何件か自白したという趣旨のことを言っておりました」

橋本弁護人=「そうしますと、恐喝未遂については否認と」

証人=「あ、そうですね」

橋本弁護人=「その余の被疑事実については、全部認めたと」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それから善枝さん殺しについては否認と」

証人=「はい」

橋本弁護人=「善枝さんを殺したということについては、その後も被告人は取調べを受けているということを証人に述べておったわけですか」

証人=「おりました」

橋本弁護人=「第一回接見以降も」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その善枝さん殺し、あるいは恐喝未遂についての被告人の陳述に対して、と言いますか、その際の状況ですね、それはどんな状況でしょう」

証人=「さっきもちょっと言いましたが、ぽつりぽつりという話し方を石川くんはしておりましたが、善枝さんを殺したろうとか、字を書いたろうということで激しく問いただされているけれども、それについては、自分には全く覚えがない、それからよく、器械にかけられたという話をしておりました、ポリグラフのことだろうと思いますが器械にかけられて、器械は、お前が殺したんだと言っているというようなことを言ってくるけれども、どんなことがあろうとも、自分はやっていない、そう言っているという風に私どもに言っておりましたし、またその態度はきっぱりしたものです」

橋本弁護人=「真摯な態度であったと聞いていいわけですね」

証人=「はい」

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橋本弁護人=「第一次逮捕は五月二十三日に行なわれて、引き続き勾留が続いたわけです、延長された勾留満期が六月十三日だったと思いますが、その通りですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そして、六月十三日に第一次逮捕の内の窃盗横領などについて川越支部に起訴されましたが、これは記録上明らかなんですが、弁護人としてこの起訴されるまでの捜査段階において、どういう状況把握、それから弁護方針を考えておりましたか」

証人=「大変世間でも騒がれていた事件でありますし、私どもの行動自体が新聞記者に付きまとわれるということもありましたが、私どもは何をおいてもまず捜査が適正に行なわれるように弁護人として可能なあらゆる活動を行なうということと、それから勾留理由とされている事実が窃盗、暴行、恐喝未遂などの三つのいわゆる別件に限られていたにせよ、石川くんが言っていたことからも、また、私どもが知り得たことからも、警察の調べがいわゆる善枝さん殺しに集中していたことは、私どもにとっては明らかなことでありましたので、私どもとしては私どもに可能な事実関係の調査を行なうことを決め、事実、それを行ないました。五月一日、二日の石川くんの行動であるとか、それから善枝さんの通学路などの問題についてです」

(続く)