『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』
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【公判調書3390丁〜】
「第六十二回公判調書(供述)」
証人=野本武一(六十歳:団体役員=部落解放同盟中央執行委員、同和対策審議会専門委員、埼玉県社会福祉審議会委員)
石川被告は五月一日の三時半か四時頃、狭山市駅近くの荷小屋で雨宿りをするが、その間に帰宅する中学生のグループを目撃している。帰宅する中学生等は東中学の生徒であった。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。
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山梨検事=「あなたの先ほどの話によると、被告人の見込み捜査をやるために調べに行ったというんだが、被告人が五月一日に荷小屋にいたというんだが、同じような状態が五月一日以外の日にも行なわれていたということになると、必ずしもそれが決め手とはならんのじゃないんですか」
山上弁護人=「検察官のお気持ちは分かるけれども、検察官の求める問いを証人の口から出させるのは無理だと思うんですが」
山梨検事=「まあそれだけですね、捜査というものは慎重にしなければならんということがお分かりになれば結構だと思うんですがね」
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裁判長=「先ほど控訴審になってから池袋、これは巣鴨の拘置所だと思うが、拘置所であなたが被告人にご面会になったというんだが、いつ頃のことでしょうか」
証人=「そうですね、東京高裁へ移ってすぐだと思いますが」
裁判長=「そうすると被告人が公判廷で自白を撤回した後」
証人=「撤回した後です」
裁判長=「それも長く日時が経ってからじゃない、その年くらいですか」
証人=「ええ、その年です」
裁判長=「あれが昭和三十九年の九月初め頃らしいんですがね、そうするとその秋くらいの」
証人=「そうですね、秋くらいだと思います」
裁判長=「その時は、格別きょう証言なさっておいたほうがいいというような会話はなさらなかったわけですか」
証人=「事件の問題よりも、その後の家族の問題、さらに健康の問題、そういう問題を通じてしっかりしなければいけないという激励の意味で参りましたから」
裁判長=「事件のことは全然お話にならなかったんですね」
証人=「そうです」
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裁判所速記官 重信義子
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【公判調書3392丁】
東京拘置所所長 福原弘夫 殿
押送に関する被告人の希望について(通知)
貴所に勾留中の、当庁昭和三十九年(う)第八六一号被告人石川一雄に対する強盗強姦・強盗殺人・死体遺棄・恐喝未遂・窃盗・森林窃盗・暴行・傷害・横領被告事件について被告人の当公判廷における口頭による申立て、及び公判廷外における書面による申立てによれば、同被告人は、出廷のための護送車の中、又は、東京地方裁判所刑事庁舎内のいわゆる仮監と法廷の間の押送の途中における処遇について、大要次のような希望を持っているものの如くであります。
即ち、同被告人は、いわゆる支援団体等の者が日比谷公園その他に集合していることは知っているが、それらの中には過激な者もいると聞いているので、その種団体等の者に対して、挨拶するとか、合図を送ることは従来から意識的に避けている。であるから、偶々それら支援団体等の者が被告人の目に触れるような場合があっても、その程度のことについては拘置所側におかれても、特に之を阻止するような処置をとることなく、自然の成り行きに任せて欲しいというのである。
被告人の前記各申立ての趣旨として当裁判所の理解するところは右の通りであるので、その旨お知らせします。 以上
裁判長判事 井波七郎
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○一寸の虫にも五分の魂とはよく言ったもので、石川被告は自身の意見を強く主張、おかげで裁判所が東京拘置所へ被告の主張を伝えた事実がここで明らかになっている。