アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 589

例えば公判調書中の、ある一つの章をまとめ完結させる形での引用を優先した場合、それと関連しない文書は調書上に残されてしまう。今回と次回とで、その残された文書を取り上げ、触れてゆく。

【公判調書1783〜】

                      「証人横山ハル尋問調書」

○取調をした年月日・昭和四十五年五月八日

○取調をした場    所・埼玉県狭山市入間川一.七五〇番地付近(当審第一回検証調書に記載の①点南方、横山ハル方の畑) 

○取調をした裁判所・東京高等裁判所第四刑事部

○裁判長判事・井波七郎

           判事・足立勝義

           判事・丸山喜左ェ門

裁判所書記官・飯塚  樹

○立ち会った訴訟関係人

   検   事・平岡俊将、山梨一郎

   被告人・なし

   弁護人・(主任)中田直人・植木敬夫・石田  享・橋本紀徳・宇津泰親・宮沢洋夫

○人定尋問

氏名  横山ハル

年令  五十五才

職業  農業

住所  埼玉県狭山市狭山八丁目

(第七回検証調書添付見取図。下は拡大したもの)

                              【尋問及び供述】

裁判長=「今あなたが指示した範囲(第七回検証調書に添付の見取図に記載の横山ハル指示の同人方の畑の範囲)があなたの家の畑ですね」

証人=「そうです」

裁判長=「あなたが、前の公判で昭和三十八年五月一日の午後作業をした旨証言した畑はこれですね」

証人=「そうです」

裁判長=「昭和三十八年五月一日当時のこの畑の状態はどうでしたか」

証人=「当時は全部桑畑でした」

裁判長=「現在はこのうち南側の方が麦畑になっていますね」

証人=「はい。去年桑をこいで今は小麦を作っていますが、間にお茶を育てています」

裁判長=「当時この畑に生えていた桑は何年生ぐらいのものでしたか」

証人=「何年ぐらいだったでしょうか・・・・・・」

裁判長=「数年は経っていたのですか」

証人=「ええ」

裁判長=「桑の最盛期は何年ぐらいのときですか」

証人=「五年から十年ぐらいのときが一番ほきるとかいいますけどね」

裁判長=「昭和三十八年ごろの桑は現在ある桑と同じような程度のものでしたか」

証人=「そうですね」

裁判長=「桑の葉が一番茂るのは何月ごろですか」

証人=「六月の上旬に一番茂っているところを全部取って蚕にくれるのです。蚕は今ごろが掃立ての時期なのですが、そのころは五月八日ごろ掃立てではなかったかと思います。今年は少し遅れて十二日に掃立てです」

裁判長=「五月上旬の桑の生育、葉の茂りは最盛期ではないわけですか」

証人=「はい。まだ蚕が育っていない時期ですから・・・」

裁判長=「普通の年の五月一日ごろ、桑の葉が相当出ている時期にこの桑畑の中で仕事をしている人から、この畑のすぐ東側の道を通る人が見えますか」

証人=「通るのは見えますが、だれだということはあまりわからないですね」

裁判長=「気をつけていればわかるかも知れませんか」

証人=「ええ。気をつけていて、近所の方ででもあれば格好でもわかりますけどね」

裁判長=「五月初めというと、桑の丈はどの程度ですか」

証人=「あの程度(第七回検証調書に添付の写真4に見られる桑を指示)です」

裁判長=「あなたの家の畑のすぐ東側の道の状況は、昭和三十八年五月当時と現在とで変わっていますか」

証人=「変わっていませんけれども、南の方に建物ができたので普通の四輪車もこのごろは通ることがあります」

裁判長=「先程あなたが指示したこの位置(当審第七回検証調書に添付の見取図及び写真5、6、7のハ点)に置いた車というのはダイハツの三輪車ですね」

証人=「そうです」

裁判長=「どういうふうに置いたのですか」

証人=「東向きに置きました」

裁判長=「運転席を東向きにして置いたのですね」

証人=「はい。大抵前向きに入って置いて、出るときはバックして出ます」

裁判長=「そうすると荷台の方を道に向けて置いたわけですね」

証人=「そうです」

裁判長=「車の一番後ろをどのへんにして置いたか覚えていますか、後ろが道にはみ出していたかどうか」

証人=「はみ出してはいませんでした」

裁判長=「ずっと奥へ入れたわけでもないでしょう」

証人=「ええ。あとの方でも入れるなんていう場合には奥へ入れますけど」

裁判長=「すると、道からすぐのところに自動車の一番後ろの部分があったという状態だったのですか」

証人=「そう思います」

裁判長=「現在あるあなたの畑の桑は昭和三十八年当時あった桑ですか」

証人=「そうです」

裁判長=「同じ桑ですね」

証人=「そうです」

                                           *

宇津弁護人=「桑の木は、立っている枝を毎年切るのですか」

証人=「そうです」

宇津弁護人=「五月ごろは、昭和三十八年ごろも今ごろも桑の枝の伸び具合は大体似たようなものなのですか」

証人=「同じだと思います。ただ、葉の出具合が年によって遅い早いがあります」

宇津弁護人=「枝の伸び具合は同じですね」

証人=「同じだと思います」

                                          * 

裁判長は、立ち会った訴訟関係人に右証人を尋問する機会を与えた。

この調書については刑事訴訟規則第三十八条第三項から第六項までの規定による手続をしないことに立ち会った訴訟関係人および供述者が同意した。

昭和四十五年八月三十一日 

東京高等裁判所第四刑事部

裁判所書記官   飯塚   樹

(同見取図・拡大写真)

(横山ハルさん・写真右端。写真は"狭山差別裁判  部落解放同盟中央本部編=部落解放同盟中央出版局"より引用)