アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 590

【公判調書1787丁〜】

                  「証人横田権太郎尋問調書」

○被         告         人・一夫こと、石川一雄

○被     告     事     件・強盗強姦、強盗殺人、死体遺棄、恐喝未遂、窃盗、森林窃盗、傷害、暴行、横領

○取調をした年月日・昭和四十五年五月八日

○取調をした場   所・埼玉県狭山市入間川字下窪所在の横山権太郎の畑(当審第一回検証調書添付図面⑫点南方約百六十メートル)

○取調をした裁判所・東京高等裁判所第四刑事部

○裁判長判事・井波七郎

              判事・足立勝義

              判事・丸山喜左ェ門

裁判所書記官・小森正男

○立ち会った訴訟関係人

検    事・平岡俊将、山梨一郎

被告人・なし

弁護人・(主任)中田直人、植木敬夫、石田  享、橋本紀徳、宇津泰親、宮沢洋夫 

○人定尋問

氏名・横田権太郎

年令・六十八才

職業・農業

住所・埼玉県狭山市沢四丁目

(第七回検証調書添付見取図。下は拡大したもの)

                            【尋問及び供述】

裁判長=「今、証人が指示した範囲(第七回検証調書に添付の見取図に記載の横田権太郎指示の同人の畑の範囲)が証人の畑ですね」

証    人=「そうです。面積は二反歩強です」

裁判長=「昭和三十八年五月一日に証人はこの畑で農作業をしたのですか」

証    人=「しました」

裁判長=「当日は、この畑のどの辺で農作業をしたのですか」

証    人=「現在ジャガ芋畑になっている部分です。そこは、その当時ビニールをかけて南瓜を栽培していたのですが、当日はそのビニールを取除く作業をしました。それで当日私が作業をした範囲に現在のジャガ芋畑全部です」

裁判長=「この場所で作業していた時間はどの位ですか」

証    人=「三時間位でした」

裁判長=「南瓜はどの位の間隔に作付けられていましたか」

証    人=「一メートル間隔位でした」

裁判長=「その作業をしている間に雨が降ったことがあるのですか」

証    人=「作業に取りかかると間もなく雨がぽつぽつ降って来たのですが、私はそのまま作業を続けました。そして、その仕事が終わってからは、五百メートルほど東の畑へ移って仕事をしたのです」

裁判長=「証人は、この付近に横山ハルさんの畑があることを知っていますか」

証    人=「知っています。横山さんの畑は、あの電柱(前記第七回検証調書添付の見取図に示す"ハ"点北側の電柱を指示)の北の方です」

裁判長=「あの道(右図面表示の①点から検察官主張の殺害現場方面に至る道路)には今、人が通っていますが、誰であるかはわかりませんね」

証    人=「はい。姿は見えますが、誰であるかはわかりません」

裁判長=「昭和三十八年五月一日当時に証人の南瓜畑からあの道(右の道路)を通る人の姿が見えましたか」

証    人=「はい。その当時は、あの若い桑(右道路東側の若い桑の畑を指示)は無くて、その場所に麦が作ってあったと思います。そこで、あの道を通る人は足元まで見えました」

裁判長=「あの太い桑(同"古い桑"の畑を指示)は当時もあったのですか」

証    人=「ありましたが、あの桑は秋になってから蚕に食べさせる桑なので、五月頃は枝が伸びておりませんでした」

裁判長=「この場所(右図面中同証人の麦畑および菜畑)には当時何がありましたか」

証    人=「全部麦を作っていたと思います」

裁判長=「その当時も加佐志街道を通る人の姿は、ここから見えませんでしたか」

証    人=「はい。その点は現在と同じです」

                                         *

橋本弁護人=「証人は、当日ここへ車で来たのですか」

証    人=「はい。車で来て、その車(注:1)はこの辺(同図面中"ニ"点指示)へ西向きに止めて置きました」

                                         *

裁判長は立ち会った訴訟関係人に右証人を尋問する機会を与えた。この調書については刑事訴訟規則第三十八条第三項から第六項までの規定による手続をしないことに立ち会った訴訟関係人および供述者が同意した。

昭和四十五年八月三十一日

東京高等裁判所第四刑事部    裁判所書記官   小森正男

                                          *

(証人=横田権太郎氏。写真は"狭山差別裁判・部落解放同盟中央本部編、部落解放同盟中央出版局"より引用)

 

(注:1)些事にこだわるようで恥ずかしいが、これは中々見られない印字ミスである。この、日本の語句には存在しない文字を分析した結果、どうやら「その車」の “の” という文字と、“車” という二文字が重なり誕生していることが判明した。裁判記録の作成に携わった方の、これほどの欠陥表記に修正すら施さないその胆力は見上げたものであり感服頻りである。おかげで、愚かにも当初、キーボードでは打てないこの合体された文字をスマホの画面にいかなる方法で表現すべきか悩み、米焼酎「しろ」を七百ミリリットル原液摂取するハメに至る。ところで、私は六十年前に起きた事件に取り憑かれ、離れられずにいるが、六十年前の狭山市郊外がどのような情景だったのか、ここに写真を載せよう。

写真下方、やや左に佐野屋がある。事件を肌で感じるには今宵夜十二時に佐野屋前に立つべきかどうか、思案中である。