アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 674

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2117丁〜】

                   「第四十三回公判調書(手続)」

被告人   一夫こと石川一雄

公判をした年月日 昭和四十六年三月二日

公判をした裁判所 東京高等裁判所第四刑事部

裁判長   判事   井波七郎

              判事   足立勝義

              判事   丸山喜左エ門

裁判所書記官   飯塚樹

検事                 佐藤哲雄、山梨一郎

弁護人(主任)    中田直人

                         青木英五郎

                         橋本紀徳

                         和島岩吉

                         福地明人

                         宮沢洋夫

                         三上孝孜

                         山上益朗

                         石田    享

出頭した証人    中       勲

                          斉藤留五郎

                                          *

【公判調書2119丁〜】

                   「第四十三回公判調書(供述)」①

証人氏名  中   勲(五十七歳)

(裁判長は証人に対し、昭和四十五年十二月三日の公判においてした宣誓の効力を維持する旨を告げた)

主任弁護人=「警察には捜査本部設置に関する内部規程のようなものがありますか」

証人=「犯罪捜査規程というのがあり、概ねそれによって処理していました」

主任弁護人=「それは警察庁が定めたものですか」

証人=「県警察本部で定めたものです」

主任弁護人=「どういう事件の場合に捜査本部を設けるとか、その組織などについても定めているのですか」

証人=「はい。署長指揮事件、本部長指揮事件と分け、本部長指揮事件の内で特異重大事件については特別捜査本部を設ける、というようになっていたと記憶しています」

主任弁護人=「本件の場合は、当時刑事部長であったあなたが捜査本部長になったわけでしょう」

証人=「そうです」

主任弁護人=「すると、本件は今述べた指定事件にはならないわけですね」

証人=「なります。特異重大事件の扱いになっております」

主任弁護人=「今、本部長指揮事件と署長指揮事件とに分けましたが」

主任弁護人=「本部長指揮事件といっても本部長が直接指揮するわけではなく、刑事部長とか捜査一課長とか、あるいは所轄署長が捜査本部長になるという場合があるわけです」

主任弁護人=「県警察本部長が自ら捜査本部長になることもあるわけでしょう」

証人=「あり得ますが、普通の司法事件ですと大体刑事部長止まりが多いようです」

主任弁護人=「捜査本部を設けるについて場所の定めがありますか」

証人=「別にありません」

主任弁護人=「従来の例からいうと、刑事部長が捜査本部長になるような事件については通常捜査本部をどこに置きますか」

証人=「通常は事件発生場所の所轄警察署に置きますが、事件発生の場所により出先に置くこともあります」

主任弁護人=「先般の証言によると、この事件が発生した当時、捜査本部を設けていた事件が三件ほどあったということでしたね」

証人=「はい」

主任弁護人=「あなた自身それら三件の事件について捜査本部長になっていましたか」

証人=「なっていません。所轄の署長がなっていたように思います」

主任弁護人=「そうすると、当時あなたが捜査本部長を務めていた事件はこの事件だけだったのですか」

証人=「そうです」

主任弁護人=「五月二日の夜から五月三日の未明にかけて佐野屋付近に現れた犯人を取り逃したのち、五月三日の朝、捜査本部を設けたということでしたね」

証人=「そうです」

主任弁護人=「捜査本部を狭山市役所堀兼支所に置いたのはどういう理由からですか」

証人=「地理的にあそこが被害者の家に近いし、狭山警察署が非常に狭隘(きょうあい)だったため、あの辺が適当ではなかろうかという当時の警察本部長の判断でそこを借りたらどうかという指示があったので、交渉して借りたように覚えています」

主任弁護人=「あなたが、犯人を取り逃したという報告を受けたのは狭山署にいる間ですね」

証人=「はい」

主任弁護人=「そして、直ぐ取り逃した現場に出かけたわけでしょう」

証人=「出かけました」

主任弁護人=「あなたは、その時行方不明になっていた中田善枝さんは殺されていると直感した、と言いましたね」

証人=「それは夜が明けてからです。あの辺を見て、ほとんど山林、麦畑で、隠匿しておくような所はちょっと見当たりませんので、まず殺されているのではないかという感じを持ちました」

主任弁護人=「あの辺というのは逃した現場ですか」

証人=「はい。佐野屋付近です。勘でそういう風に思いました」

主任弁護人=「あなたのその直感の中には、その夜現れた犯人はその付近にいるという風な直感もあったのですか」

証人=「はい。あまり遠くないという感じがしました。

主任弁護人=「その直感には根拠があるのですか」

証人=「別にありません。あの付近の状況を見てそう判断しました」

重大弁護人=「あなたは現場に行った時に、犯人を取り逃した状況はどういう風であったかということを部下から聞いたでしょう」

証人=「はい」

主任弁護人=「誰から聞きましたか」

証人=「ちょっと記憶ありません」

主任弁護人=「そういう報告の中で、その日に起こった状況なり犯人が逃走した状況などから、犯人はこの近くにいるのではないかと直感したわけでもないのですか」

証人=「それと合わせて、一連の脅迫状の関係とか、そういうものから推して、そう遠くはないという判断をしました」

主任弁護人=「証人がそう直感したについて外に理由はありませんか」

証人=「ありません。まだ詳しい状況はわからない時点ですから」

(続く)