アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 616

「佐野屋脇犯行現場」見取図。自白の犯行経路だと三ヶ所で張込み中の警察官に出会うことになる。また、足跡の位置も自白の犯行経路とは異なっている。○○印は全て警察官。(写真と解説は"自白崩壊  狭山裁判二十年"=狭山事件再審弁護団日本評論社より引用)

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【公判調書1923丁〜】

                「第三十九回公判調書(供述)」㉖

証人=中  勲(五十七歳・埼玉県消防防災課長。事件当時、埼玉県警刑事部長)

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山上弁護人=「それから、これは、一度犯人をとり逃しておりますね」

証人=「はい」

山上弁護人=「本部の刑事部長として責任を追及もしくは、警視庁本部内で何か問題が出ましたか」

証人=「内部では問題出ませんけれども、私は責任を感じて進退伺いを出しました」

山上弁護人=「柏村警察庁長官が時の篠田公安委員長に辞表を出したのもご存じですか」

証人=「知りません」

山上弁護人=「この問題について、そういうことがあったのをご存じないですか」

証人=「長官が辞められたのは知っておりますけれども、それとの関連については私ども内部におきましても全然知りません」

山上弁護人=「辞表をあなた方が出す時には、どこに出すんですか」

証人=「警務部長を通じまして国家公安委員会に出しました」

山上弁護人=「結局、結果的にはどうでしたか」

証人=「私は警察本部長に一応進退伺いを出しました。まあ、逃げられたということについては、やむを得ないということで、一応引続いて職務を励めということでございます」

山上弁護人=「励めという言葉を貰ったんですか」

証人=「引続いて職務を、まあやれということでございます」

山上弁護人=「じゃ、あなたは当の上司に対して、どういう具合に決意を表明しましたか」

証人=「逃げられまして、世間をお騒がせしたし、私ども、ひいては私の手落ちで一応この際お暇を頂いて、責任の所在を明らかにしたいと」

山上弁護人=「私がお尋ねしてるのは、辞表を提出なさって・・・・・・」

証人=「いや、辞表は出しません。それに対して、いかようなお計らいをしたらよろしいでしょうかと、いわゆる進退伺いです」

山上弁護人=「そして、はっぱをかけられたわけですね。そういうことじゃない、がんばれと、一言で言えばそういうことですね。あなたの進退伺いに対して」

証人=「これはもう事件が落着をしてです」

山上弁護人=「落着したあとですか」

証人=「それまでは、やはり責任上捜査を継続するということは仕事でございますから、やりまして、一応解決した段階でお暇を頂きたいと」

山上弁護人=「五月二日、三日の時点では、あなたの責任は問題にならなかったんですか」

証人=「逃げられた段階では、一応私が指揮をしておりませんので、所轄警察署長が責任者であろうという本部長の見解で」

山上弁護人=「あなたご自身について、上司から、どういう状況の下でとり逃したのかという調査とか監察は行われましたか」

証人=「これは、警察本部長がすぐ現地へとんで行きましたから、左様な必要もなかったです」

山上弁護人=「それから、この年の七月九日に追起訴されているように記憶しておりますが、そのころ時の池田総理大臣ですね、首相がわざわざこの埼玉に来られたということは記憶しておりますか」

証人=「知りません」

                                          

裁判長=「弁護人、首相が埼玉に来られたというのは、この事件に関してですか」

                                          

山上弁護人=「ちょっと関係して聞きます。首相夫人ですが、この事件で来られたということは知っておりますか」

証人=「これは、新聞で見ました」

山上弁護人=「あなたも一緒に行ったんじゃないですか」

証人=「行きません。何か、ほかの問題で来られた時に来られたということで、中田さんの所へお線香を上げられたと思いますが」

山上弁護人=「時の内閣総理大臣の夫人が訪れて、中田栄作さんの所へ来て線香を上げたという記憶ですか」

証人=「来たとすればですね。はっきりした記憶は残っていません」

山上弁護人=「するとこの事件は、時の国会の中央でも相当問題にされたことはご存じですか」

証人=「はい」

(続く)