アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 657

【公判調書2050丁〜】

                  「第四十一回公判調書(供述)」

証人=山下了一(五十二歳・無職。事件当時、埼玉県警本部捜査一課)④

                                         *

宮沢弁護人=「当時取り逃した後、捜査本部が出来たということはご存じでしょう」

証人=「ええ」

宮沢弁護人=「それはどういうことで出来たかお分かりですか」

証人=「まあ事件の関係が向こうの方ですから、それで向こうが便利じゃないかということであそこに出来たと思います」

宮沢弁護人=「それはあなた方、派遣された人と狭山署の人と一緒で出来たんですか」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「あなたはどういう分担になったんですか」

証人=「まあ捜査員の配置ですね。三十人か四十人くらいの部下をもらいまして、それで地取り捜査、聞込み捜査というので、まあ二人くらいずっと組合わせをしてそれを勤務割のようなことをやってました」

宮沢弁護人=「その当時はとにかく取り逃したということで警察としては相当大きなショックと言いますか、衝撃を受けていたんですね」

証人=「まあ何とかして逮捕しなければならないという気構えはしておりました」

宮沢弁護人=「それは捜査本部長なり狭山署長からそういうような訓示とかいう様なものもあったわけですか」

証人=「まあ訓示というか、私個人の考えですが、捜査員一人一人がそういう風な考えを持っていたんじゃないかと私は思ってます」

宮沢弁護人=「そうすると相当犯人を逮捕するということについては皆さん真剣に考えられていた、そういう時期ですね」

証人=「勿論真剣には考えましたですね」

宮沢弁護人=「あなたはそうすると、その三、四十人の部下をもらって主としてどういう任務を与えられたんですか」

証人=「今、申上げました通り、誰と誰とが捜査を組んでやれと、それから方面はどっちをやれというようなことを指示して出しておりました」

宮沢弁護人=「そうすると現場における具体的な捜査にあたる一番の責任者みたいな地位にあなたが立たれたんですか」

証人=「そうじゃありません。これはまあ、私と同じような、何と言いますか、地位にいた人が他にもいましたから、全部の責任者ではありません。もう、その三十名なら三十名については指示するわけですが、他の全部の捜査員を指揮するとか、指示するというところの権限は与えられてなかったんです」

宮沢弁護人=「あなたの捜査の重点は何だったんですか」

証人=「まあ聞込み捜査という風なことです」

宮沢弁護人=「その時にはあなたの方の部下の三、四十名というのは狭山署の警察官も入っているんですか」

証人=「はい、本部員だけではなくて狭山署の人も入っていたように思いますが」

宮沢弁護人=「そうすると二人ずつ組合わせたという場合の組合わせ方を何か配慮しましたか」

証人=「別にありません」

宮沢弁護人=「狭山署の人と捜査本部の人と組合わせるというようなことは、出来るだけしたようなことはないんですか」

証人=「別に特に組合わせについては配慮しないけれども、まあ言えば若い人と年寄りという風にしてやったようには思います」

宮沢弁護人=「あなたは具体的に聞込み捜査というのはどの程度されたんでしょう」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

宮沢弁護人=「指示して、それを集約してくるわけでしょう。報告は上がって来たんでしょうか」

証人=「個々の内容については忘れましたですね」

宮沢弁護人=「あなたの捜査に関係した点で、その五月二十三日頃、二十四日に石川君を取調べた調書があるんですが、それは記憶ありますか」

証人=「あります」

宮沢弁護人=「それはどこで取調べられたんですか。場所は」

証人=「狭山署だと思います」

宮沢弁護人=「これはどういうわけで取調べたんですか」

証人=「窃盗と何かほかにあって、それからあと恐喝未遂も調べたように覚えておりますが」

宮沢弁護人=「それは何かこれに類するような事案があったんですか」

証人=「容疑としては恐喝未遂の関係と何かもう一つあったように思いますが、その容疑を調べるために調べたよう記憶しております」

宮沢弁護人=「最初にあなた調べたのは、ただ石川君の身分関係、家族関係、そういったものを調べてるようですけれども、そういう記憶はありますか」

証人=「犯罪事実でなくてですか」

宮沢弁護人=「ええ」

証人=「調書ですから、そういう関係も調べたと思います」

宮沢弁護人=「石川君を一番最初に調べられたのはどなたでしょう」

証人=「まあ調書取ったんだから、私、外一名だと思いますが」

宮沢弁護人=「そうするとあなた外一名の方が、この石川君を最初に調べられた警察官ですか」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「あなたに石川君を調べろとかいう指示があったんですか」

証人=「それは本部の方の上司からですね、まあ、調べるようにという話があってそれで調べたわけです」

宮沢弁護人=「あなたが石川君担当の取調主任官という地位にあったんじゃないんですか」

証人=「主任官というんじゃなくて、先ほど申上げた通り、同じ位の同等の人がいましたし、私が主任官という程のあれではなかったんですが」

宮沢弁護人=「それはいるでしょうけれども、具体的に犯罪の取調べに当たる場合はあなたが石川君に一番最初にやっているわけでしょう。あなたが特にこういう取調べに当たるについては他にもいるんですから何か理由があったんじゃないんですか(注:1)」

証人=「別に理由はなかったと思いますが、まあ捜査一課から行った者だし、まあ特に理由はなかったけどまあ、調べるようにという風な話があったんじゃないかと思いますが」(続く)

                                          *

(注:1)に関し、私は「〜ないんですか」と記しているが、実は原文通りではない。公判調書の該当箇所を見ると・・・・・・、

そこには「〜ないんごすか」と印字されている。これを原文通り引用すると、後日この頁を読み返した場合に、果たしてこれは誤字なのか、原文通りであったかという混乱を招くことが明らかである。従って私は「誤字までも正確に書き写す」という引用の定義に背き、(注:1)の「〜ないんですか」という変更を行なった。しかし、やはりこの「〜ないんごすか」は宮沢弁護人の発言通りの表記である可能性も充分あり、例えばこの弁護人が、自身の出身地で語られる方言を、つい法廷の場で使用したという可能性も考えられる。こうなると神田の古書街へ出向き「日本の方言大全」など購入し、「〜ごすか」なる言葉の使用範囲を絞り、一方で宮沢弁護人の出身地とその方言の使用地域は一致するのか解明しなければならぬという大問題に発展し、もはや一個人の手には負えぬ事態へと繋がろう・・・。 

結論として「〜ごすか」なる言葉は潔く忘れることとする。