アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 656

(写真右下の矢印が犯人出没場所であり、残された足跡から逃走方向は写真上部方向と見られる。なお、証人の追跡行動は、写真右下部付近(佐野屋横地点)より始まり、矢印前を通過、写真左方向へと取られた模様である。)

【公判調書丁2048〜】

                 「第四十一回公判調書(供述)」

証人=山下了一(五十二歳・無職。事件当時、埼玉県警本部捜査一課)③

                                          *

宮沢弁護人=「そうすると、一応逃げたから皆さんが集まって協議してまた張込んだというんですが、協議した時どちらの方向に行ったという話は出たんですか」

証人=「とにかく広くあちこち見ようというので、何かこの茶畑の間とか、なんか、そういうところを懐中電燈で見たように覚えてますが。逃げた方向というのは皆目分からなかったけど、私個人としてはその時は分かりませんでした」

宮沢弁護人=「そうすると皆さん集まって協議した時も、その時にはどちらの方向に行ったというような目撃した人は出なかったんですか」

証人=「それはちょっと、私はもうその場にいてすぐここに突立っていても駄目だから張込みに付けというので農協の方に行ったので、その詳しいことはその時には分かりませんでした。後でもって聞いたらとにかく地下足袋の跡があったからそっちじゃないかというようなことを聞きましたが、それはどうも・・・・・・」

宮沢弁護人=「それは後で聞いたんですね」

証人=「はい、その晩は私は見ませんでした」

宮沢弁護人=「地下足袋は後で見たらあったというだけで、前からあったのか、その晩付けられたかは分からなかったんでしょう」

証人=「それは私、個人はちょっと分かりません」

宮沢弁護人=「中田登美恵さんと犯人と思われる人と話している声は聞こえたんですね」

証人=「ええ」

宮沢弁護人=「どういう人かということは話の具合からお分かりになりましたか」

証人=「まあ、人というと男か女かということですか」

宮沢弁護人=「そういうことも含めて」

証人=「金を持って来たか、と言ったのは男ですね」

宮沢弁護人=「どれくらいの年配の人かということは分かりましたか」

証人=「年配はちょっと五十とか四十とかいうことは分かりませんが、そんなに年配者とは思いませんでした」

宮沢弁護人=「どれくらい」

証人=「若い人のように思いました」

宮沢弁護人=「どういうところで」

証人=「声の張りですね」

宮沢弁護人=「年取った人でも声の張りのある人がありますね」

証人=「まあ声の張りからしてそんなに五十、六十というような人じゃないと、若い人だということは気付きました」

宮沢弁護人=「あなたは張込んでいる時どの辺に犯人がいたか分からないと、こう言っているんですが、声はそんなによく聞こえたんですか」

証人=「そうですね、真夜中で人通りは無いし、しーんとしてますから、声は本当によく聞こえましたが」

宮沢弁護人=「そんなに大きい声で話したわけじゃないでしょう」

証人=「静かなせいか相当大きく聞こえました」

宮沢弁護人=「それは話ぶりから見て中田登美恵さんと面識のあるらしい人、知り合いの間であるらしいという感じは」

証人=「そういうことは分かりません」

宮沢弁護人=「翌日足跡を調べたということを言ってますが、その時何か気が付いたものはなかったですか」

証人=「私はそういう実況見分という関係のほうをやったわけじゃないし、立会ったわけでもないし、そういうことは分かりません」

宮沢弁護人=「翌日あなたもその現場に行かれたわけでしょう」

証人=「行きましたが、そういう関係は何かそこにあったか、細かい点までは見えませんでしたから、これは恐らく鑑識課でやったんじゃないかと思います」

宮沢弁護人=「それはあなたの推測ですね」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「人は、一人でなく二人くらい居たという感じは受けませんでしたか」

証人=「私はそういう感じは受けませんでした。話しているのは女の人と、男の方は一人のように、一人の声だけですからあれですが、一人のように見えました」

宮沢弁護人=「白い影が二つ動いたという、そういう記憶は」

証人=「そういう記憶はありません」

宮沢弁護人=「中田登美恵さんの証言では白っぽいコートのようなものを着た人だということを言われておるんですが、そういう点はあなたは印象なかったですか」

証人=「記憶ありません」

宮沢弁護人=「何か翌日調べた時、茶株の切株みたいなものを発見したという記憶はありませんか」

証人=「記憶ありません」

宮沢弁護人=「そういうことを聞いたこともありませんか」

証人=「ありません」

宮沢弁護人=「逃げる時、犯人と思われる者は石を投げたというようなことはどうでしょう」

証人=「記憶ないですがね」

宮沢弁護人=「取逃した後、警察のほうとしてはどんな風な捜査方針を取られたかお分かりですか」

証人=「まあ現場の付近の、あそこの佐野屋付近を中心として手広く聞込みをやったように覚えてますが」

(続く)