アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1051

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

事件当時の川越警察署。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

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【公判調書3288丁〜】(昭和四十七年六月十五日)

                     「第六十一回公判調書(供述)」

証人=中田直人(四十一歳・弁護士)

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橋本弁護人=「被疑事実のうち恐喝未遂を除けば起訴されるだろうという見通しを持ったと、言われましたが、それについてどういう対策、方針を考えておりましたか、それから被疑者に対して、どういう説明をしてきましたか」

証人=「十一日に先ほど仰った要望書を警察関係、検察庁関係に提出したのですが、 これは、十三日が勾留満期でありまして、自白をしてる窃盗暴行については起訴があるだろうと考えていました。で、恐喝未遂については、むしろ出来ないのではないかという予測を持っておりましたが、しかし当時の各種の状況から考えますと、警察は、石川くんの身柄拘束に執拗にこだわるだろうという風にも考えましたので、起訴があった場合でも、勾留を続けるべきではないし、新たに他の理由による逮捕などがなされてはならないと考えましたので、それまでの逮捕勾留の違法を明らかにするとともに、勾留満期の段階における警察、検察が正しい態度をとるように要望するという趣旨でその要望書を出したわけです。なお、その場合、単に警察官なり検察官にそれを伝えるだけではなくて、社会的な批判もまた必要であろうと考えまして、要望書を提出したことについて特に私どもの見解を新聞記者に発表したと思います」

橋本弁護人=「六月十三日に起訴されまして、その翌日付で川越支部に対して勾留の取消、保釈、勾留理由開示の請求を一括してやっておりますが間違いございませんか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「三つの請求を一括してやったというのには、何かわけがあるのですか」

証人=「わけと申しますよりは、勾留が違法であるという考えが基礎にありましたし、法律上許される全ての手続きをとって、起訴によって引き続いている勾留をやめさせて、石川くんを釈放させたいと考えたからです」

橋本弁護人=「被疑者に対して、そのような請求をするということを告げていることは間違いないですね、それ以前に」

証人=「事前には告げなかったのではないかと思います。十四日にする時にはですよ」

橋本弁護人=「十四日に、先ほど私が言った、三つの請求をしていますが、その時点では、まだ被疑者に対して説明してなかったと」

証人=「と思います。と言いますのは恐喝未遂による起訴が出来るかどうかは、かなりの関心事でありましたし、それ如何によって取扱いなり方針に違いがあり得ると、私は考えておりました。ですから三つの請求を行なうことは、十三日の起訴の結果を知った上で私の自宅で橋本さんと石田さんに来ていただいて、そこで決めて、その晩三人で作業をしたのだったと記憶しています」

橋本弁護人=「石田弁護士が弁護人に選任されたのは記録によりますと、六月十四日ですが、間違いございませんか」

証人=「そうです。ただ石田さんは選任届こそ出してはいませんでしたが、石川くんのお父さんのほうから私どものほうへ弁護人になって欲しいという依頼が伝えられた段階で、これは自由法曹団にあったんですが、当時の事務局長の青柳孝夫さんと石田さんが、最初その訴えに応じて、事実の調査に入っておりました。ですから、選任届自体は遅かったのですが、石田さんは私が選任された時点で、この事件に実際上は関与されておりました」

橋本弁護人=「なお、石田弁護人は、私の記憶によりますと、先ほどの三つの請求をした直後だと思いますが、石川くんに単独で接見したと思いますが、そういう事実の報告を受けておりますか」

証人=「記憶として現在、定かではありませんが、私が十五日に石川くんに面会したその前、十四日の日に石田さんが一人で会ったんだと思います」

橋本弁護人=「先ほどの、三つの請求をした翌日の十五日に接見してるわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その接見では、先ほどの三つの請求についての説明をしておりますか」

証人=「いたしました」

橋本弁護人=「先ほど聞き落としたんですが、第一次逮捕勾留の、五月段階から六月の十六日までの間ですね、この間にも接見禁止の処分がされていたことはご存じですね」

証人=「知っております」

橋本弁護人=「それから、われわれの接見時間ですが、およそ毎回どのくらい与えられておったか記憶ございますか」

証人=「再逮捕まで私五回会ったのですが、時間的には比較的長く与えられていたと思います。三十分から四十分前後会っていたと思います」

橋本弁護人=「六月十五日に証人が単独で接見した時にはどのくらい接見時間がございました」

証人=「その時も結構長かったんじゃないかと思います。十五日ですね、四十分は話をしたと思います」

(続く)